表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第一章「始まりの物語」
44/78

第四十二話「待つもの」

ーー封印の魔法


光が、ゆっくりと収束していく。


最初に感覚を取り戻したのは天音だった。

足元の感触。冷たい石床。湿った空気。


「……戻った、のか?」


視界がはっきりすると、そこは先ほどとは違う広間だった。

天井は高く、円形の部屋の中央には古代文字が刻まれた巨大な石板。

淡い青白い光が、床の文様に沿って脈打っている。


次の瞬間、空間が揺れた。


一人、また一人と、仲間たちが転移してきた。


「……全員、いるな」


その言葉に、誰も否定しなかった。


それぞれが、別々の試練を越えてきた。

言葉にしなくても、互いの表情でわかる。


――何かを、乗り越えてきたのだと。


部屋の中央へと視線が集まる。


そこには、巨大な石碑。


風化しながらもなお、はっきりと読める文字が刻まれていた。


《レテ・アンソロピノン》


古代語だ。


零が、低く呟く。


「……“人の忘却”。

 あるいは――“人が人であることを失う場所”」


その瞬間、場の空気が一段重くなった。


誰かが、ごくりと喉を鳴らす。


この遺跡が、ただの試練場ではないことは、もう明白だった。


早乙女が拳を握りしめる。


「……ここまで来て、引き返す理由はないよな」


九条はゆっくりと立ち上がり、頷いた。


「むしろ、ここまで来たからこそだ。

 アゴンに近づいてる」


カノンは目を閉じ、一度だけ深く息を吸う。


「……覚悟は、できています」


全員の視線が、自然と天音へ集まった。


天音は少しだけ間を置き、それから静かに言った。


「行こう。

 ここまで来たんだ……終わらせに」


誰も異論はなかった。


石板の奥、ゆっくりと開いていく扉。

その向こうには、赤黒い空と、禍々しい影が揺れている。


――魔王城。


ここから先は、もう引き返せない。


一行は互いに視線を交わし、そして同時に一歩を踏み出した。


それぞれの想いを胸に。


それぞれの覚悟を背負って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ