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学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第一章「始まりの物語」
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第四十話「夢のお話」

ーー早乙女


転移の感覚が消えた瞬間、早乙女は足元の感触に違和感を覚えた。


硬いはずの床が、柔らかい。


踏み出すたび、わずかに沈む。


「……ここは」


視界に広がっていたのは、夜の街だった。

だが、どこか歪んでいる。


建物の輪郭が曖昧で、遠くの街灯は滲むように揺れている。

音が、ない。

風の音も、人の気配も。


――夢。


そう直感した瞬間、背後で“それ”が現れた。


静かに、音もなく。


《夜想曲》ノクターン。


人の形をしているが、輪郭はぼやけ、どこか現実感がない。

だが、その存在感だけは、はっきりと早乙女を縛りつけた。


ノクターンは何も言わない。


ただ、指を鳴らす。


次の瞬間、景色が歪んだ。


――視界が反転する。


上下がひっくり返り、早乙女は思わず膝をついた。


「……っ、くそ……!」


脳が追いつかない。

平衡感覚が狂い、足に力が入らない。


(……夢の中……)


以前の戦いを思い出す。

仲間が閉じ込められ、自分も抗えなかったあの感覚。


だが――


「……違うな」


早乙女は、ゆっくりと顔を上げた。


「今は、わかる」


ノクターンの攻撃は、“現実に干渉しているようで、していない”。


夢の中だからこそ成立する、歪んだ法則。


(なら……)


早乙女は深く息を吸う。


(これは“現実”じゃない。

 ――だったら、現実の理屈で動く必要はない)


その瞬間、足元の感触が変わった。


沈んでいた地面が、はっきりと“床”として認識される。


早乙女の魔力が、静かに変質していく。


これまでの魔法は、

「現実に作用させる」ことを前提にしていた。


だが今――


「夢なら、夢として壊せばいい」


魔力の流れが一段階、深くなる。


――ギアが、上がる。


ノクターンが再び指を鳴らす。


周囲の景色が崩れ、無数の絵画が早乙女を取り囲む。


だが。


早乙女は動じない。


「……見えてるよ」


一歩、前へ。


幻影の輪郭が、わずかに揺らぐ。


「ここは夢。

 そして、俺は今――“夢を自覚している”」


次の瞬間。


早乙女の魔法が、現実と夢の境界を“踏み越えた”。


光が走る。


幻影は、抵抗する間もなく崩壊した。


ノクターンの姿が揺らぐ。


無言のまま、後退するその姿を、早乙女は真っ直ぐに見据える。


「……もう、支配されない」


魔力が収束し、一気に解放される。


衝撃は音もなく、しかし確実に――

ノクターンの幻影を貫いた。


砕け散る光。


静寂。


気づけば、夜の街は消え、白い空間だけが残っていた。


早乙女は、ゆっくりと息を吐く。


「……やっと、わかった」


夢と現実の違い。

そして――自分がどこに立っているのか。


足元に、新たな魔法陣が淡く浮かび上がる。


次へ進め、と告げるように。


早乙女は、拳を握りしめて前を見た。


パウゼとの戦いでは、覚醒した姿を見せられなかったので

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