第四話「旅立ちの日」
― ――四人で歩き出す朝
王都・東門。
朝の空気は少し冷たく、城壁の影が長く伸びている。
天音と零は、荷物を背負って門の前に立っていた。
「……で?」
零が横を見て言う。
「なんで、もういるの?」
視線の先。
門の柱にもたれかかり、腕を組んで立っている男。
騎士団の装備。
背は高く、姿勢は無駄に良い。
九条。
九条はゆっくり顔を上げた。
「先に来ていた」
「……どういう理屈だよ」
「出発するなら、ここだと思った」
「思った、で来るな」
九条は少し考えてから、真顔で言う。
「なら、思わなければよかったか?」
「そういう意味じゃねえよ!」
どこかズレている。
だが、立ち姿は隙がなく、空気が張っている。
そこへ――
「おはよー」
軽い声が割り込んだ。
振り向くと、黒髪の男が手を振っている。
早乙女だ。
「もう集まってると思ってさ」
「お前も来るのかよ……」
「うん。仲間でしょ?」
「いつ決まった」
「この前」
即答だった。
九条が都倉を一瞥する。
「……宮廷魔術師か」
「そうそう。君は騎士団の問題児?」
「問題は起こしていない」
「“起きたあと”がひどいタイプ?」
「……否定はしない」
「認めるな」
一瞬、沈黙。
だが、次の瞬間――
九条が早乙女をじっと見て言った。
「お前は、軽い」
「よく言われる」
「だが、弱くはない」
「お、分かる?」
「殺気がないだけだ」
「それ褒めてる?」
九条は少し考え、首を傾げる。
「……多分」
この男、理性はあるが、感覚が独特すぎる。
――出発前
城門が開き始める。
人の流れが、外へ向かって動き出す。
天音が、ふと早乙女を見る。
「なあ、本当に来るんだな」
早乙女は肩をすくめた。
「うん」
「俺、強いけどさ」
「守れなかったこと、結構あるんだ」
軽い声。
でも、目は笑っていない。
「だから今回は、最初から一緒にいる」
「後悔しない位置で」
九条が静かに言う。
「合理的だ」
「だろ?」
「だが……」
一瞬、言葉を探すように間を置く。
「感情が絡むと、人は判断を誤る」
「それが人間でしょ」
「……そうか」
少しだけ、納得したようだった。
天音が口を開く。
「なあ」
「このメンバー、大丈夫か?」
「まあ……」
「今さら一人増えたくらいで変わらないよ」
――旅立ち
四人が並ぶ。
異世界に迷い込んだ者。
理性と暴力を抱えた騎士。
軽さの裏に覚悟を隠す魔術師。
まとまりは、ない。
だが―
九条が一歩前に出た。
「行くぞ」
「命令形なんだ」
「癖だ」
天音と零も歩き出す。
王都の門を抜けると、風が強く吹いた。
それぞれが同じ方向へ、進み始めた。
―旅は、ここから始まる。
次、ちょっと日常回です




