第三十ニ話「音符の再開」
――「休止符」の終わり
崩れた大地に、重い沈黙が落ちる。
倒れていたはずの三人――
九条、零、早乙女が、ゆっくりと立ち上がった。
「……まだ、終わってない」
九条の声には、もはや迷いはなかった。
「俺は、正しくなくていい」
「仲間を守れるなら、それでいいんだ」
荒れ狂う力が、彼の周囲に集まる。
だがそれは暴走ではない。
“意志”に縛られた、ただ一撃のための力。
続いて、零が前に出る。
「……見えた」
「全部、ここに収束する」
彼の視界には、無数の未来が走っていた。
だが、そのすべてが一点へと収束していく。
――今、この瞬間。
そして早乙女。
「……結局さ」
「後悔しない選択って、これしかなかったんだよな」
三人の意識が、同時に一点へ向かう。
それを、パウゼは見逃さなかった。
「……厄介」
その声に、わずかな興味と、わずかな苛立ちが混じる。
「でも――」
「無意味」
パウゼの魔力が膨れ上がる。
三人へ向けて、すべての意識が集中する。
三人が同時に止まった。
――その瞬間だった。
「……今だ」
天音が、静かに呟く。
誰も見ていない。
誰も意識していない。
だが、確かに“そこ”にいた。
自分の意識が引き伸ばされているのがわかる。
仲間が作ってくれたこの一瞬を大事にするように。
天音は、ゆっくりと右手を掲げる。
「――天之」
空気が、悲鳴を上げた。
「――エントロピア・フレゴン」
掌に生まれたのは、
手のひらサイズの“恒星”。
小さく、しかし無限に近い熱量を孕んだ、絶対の破壊。
三人が作った一瞬の隙――
それは偶然ではない。
「……仲間が作ってくれた道だ」
天音の瞳が、まっすぐにパウゼを捉える。
「だから、俺は――迷わない」
次の瞬間。
世界が、白く焼き切れた。
⸻
光が収まったとき。
そこに立っていたのは、膝をつくパウゼだった。
胸の中心には、ぽっかりと穿たれた穴。
そこから、魔力が静かに霧散していく。
「……なるほど」
苦笑混じりに、パウゼは息を吐いた。
「……やっぱこれだったのか」
視線が、天音へ向く。
「……油断した」
静かな声だった。
憎しみでも、怒りでもない。
どこか、納得したような――諦観。
その身体が、崩れ落ちていく。
消えゆく直前、パウゼは微かに笑った。
そして、光の粒子となって消滅した。
⸻
静寂。
崩れた空間に、風だけが吹き抜ける。
天音は、その場に膝をついた。
「……終わった、のか」
背後から、声がかかる。
「……ああ」
九条だった。
「でも、これで終わりじゃない」
零が静かに頷く。
「セクステットは、まだいる」
「それに……」
早乙女が、遠くを見つめる。
「アイツらの“上”もな」
天音は立ち上がり、拳を握った。
「なら、行こう」
「最後まで」
仲間の視線が、重なる。
こうして――
“第二の戦い”は、確かに終わった。
カノン
「入るタイミング逃しました……」




