第二十八話「崩壊の序章」
―― 全滅寸前
空間が、鳴っていた。
音ではない。
世界そのものが、悲鳴を上げているようだった。
無数の結晶刃が宙を舞い、ゆっくりと、しかし確実に包囲してくる。
「……くっ!」
九条が前に出る。
「来るなら来い……!」
拳を握り締め、踏み込む。
「うおおおおおおっ!!」
渾身の一撃。
だが――
「……遅い」
パウゼの声が、背後から聞こえた。
「っ!?」
次の瞬間。
九条の動きが、わずかに“ズレた”。
踏み込むはずの足が半歩遅れ、拳が空を切る。
「ぐっ……!」
その隙を逃さず、空間の刃が九条の腹部をかすめた。
衝撃と共に、身体が宙を舞う。
「が……っ!!」
地面を転がり、壁に叩きつけられる。
「九条!!」
天音が叫ぶが、動けない。
パウゼは、冷静だった。
「“止める”とは、動きを奪うことではない」
「“ズラす”こと」
「不協和音と性質は同じ」
次の瞬間――
「……っ!」
零が膝をついた。鼻血を垂らしながら。
演算が追いつかない。
視界の情報と、実際の動きが、完全に噛み合わない。
「……っ、こんなの……!」
必死に計算を回すが、答えが出ない。
“未来が読めない”。
それは、零にとって初めての感覚だった。
「……もう一度……」
立ち上がろうとした、その瞬間。
空間が、零の足元で弾けた。
「っ――!」
衝撃に耐えきれず、零はその場に崩れ落ちる。
「……っ、まだ……」
しかし、意識が遠のく。
「零!!」
天音が叫ぶ。
だが、声は届かない。
次に狙われたのは――
「……やっぱこうなるか」
早乙女だった。
「空間が相手じゃ、俺の魔法も……」
構えた瞬間、背後に気配。
振り向くこともできなかった。
「――終わり」
鈍い衝撃。
視界が揺れ、地面が迫る。
「……くそ……」
倒れ込みながら、早乙女は苦笑した。
「……カッコ、つかねぇな……」
そのまま、意識が落ちる。
⸻
ーー 残された者たち
その場に立っているのは――
天音と、カノンだけ。
周囲には、倒れ伏した仲間たち。
はると、そうすけ、ゆなは魔力切れだった。
「……」
パウゼは静かに歩み寄る。
「これで、三人」
「残るは、君たち」
天音は歯を食いしばる。
(……くそ)
(まだ……まだ終わってない……)
だが、身体は重い。
仲間が倒れていく光景が、胸を締めつける。
カノンが、震える声で言った。
「天音……どうするの……?」
答えは、まだ出ない。
パウゼは、静かに告げる。
「安心しろ」
「すぐに終わる」
結晶の刃が、再び宙に浮かぶ。
――絶望が、ゆっくりと迫っていた。
次から、倒れた仲間の意識回です
ノクターンの時もあり、くどいですがお付き合い下さい




