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学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第一章「始まりの物語」
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第二十四話「不協和音と休止符」

―― ディソナンス


空間は、静かだった。


だがその静けさは、戦場のそれではない。

音が“遅れて”届く、不自然な静寂。


「……これが、お前の領域か」


「そうだ」


【不協和音】ディソナンス――

カズマティス・テネブロスは、楽しげに両手を広げた。


「勘違いするな。

地の利があるのは君たちでも――“有利”とは限らない」


「……言ってろ」


九条は一歩前へ出た。


「カノン、後ろ!」


「了解!」


カノンは即座に杖を構え、支援の構えに入る。

聖力が淡く灯り、仲間を包む。


「行くぞ……!」


九条は地を蹴った。


一直線。

迷いのない踏み込み。

その拳がディソナンスに向かって振り抜かれる――


はずだった。


「――遅い」


ディソナンスが指を鳴らす。


次の瞬間。


九条の拳は、当たった後にズレた。


「……っ!?」


命中した“感触”の直後、

拳が空を切る。


遅れて、衝撃だけが九条の腕を走った。


「ッ……!」


「同じだな」


ディソナンスが、つまらなそうに言う。


「君たち、前と同じだ」


その言葉に、はるとが歯を食いしばる。


「……何?」


「力で押す。

速さで上回る。

連携で封じる」


ディソナンスは静かに首を振った。


「だが、全部“ズレている”」


カノンが前に出る。


「……それでも、私たちは引かない」


「ほう?」


「守ると決めた人たちがいる。

それだけで、戦う理由は十分です」


ディソナンスは一瞬だけ目を細め――


「いい心がけだ。だが」


視線が、九条に戻る。


「やはり君たちは――」


その瞬間、空間が“軋んだ”。


はるとが歯を食いしばる。


「……っ、来るぞ!」


ディソナンスの声が、冷たく響く。


「前と同じだ。

それでは戦いと呼べるものにもならない」


指を鳴らした瞬間ーー。


―― パウゼ


音が、消えた。


風も、足音も、呼吸すら。


「……」


天音たちが立っていた空間は、

氷のように静まり返っていた。


「これが……」


早乙女が周囲を見回す。


「さっきまでと、空気が違う……」


「当然」


静かな声。


前方に立つ影が、ゆっくりと顔を上げる。それはーー


【休止符】パウゼ。ナカザヴァトス・クリスタロス


その瞬間、空間が“止まった”。


音が、凍る。


動こうとした足が、言うことをきかない。


「……っ」


「焦るな。

まだ完全に止めてない」


パウゼは淡々と続ける。


「でも、ここでは私が“間”を決める」


一歩、踏み出す。


それだけで、空気が凍りつく。


「動けると思うな。

すべて、私の許可が要る」


天音は拳を握りしめる。


(……ディソナンスと違う)


(こいつは――完全に、支配してる)


その時、そうすけが低く言った。


「……来るぞ」


パウゼの目が細まる。


「君たちの“停止”を始める」





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