第二十三話「作戦」
――砕けた城と、二つの戦場
指定された場所は、山間にひっそりと佇んでいた。
それは――
かつて城だったであろう、石造りの廃墟。
高くそびえていたであろう塔は半ば崩れ、
城壁には無数の亀裂。
時間と戦いに削られた跡が、ありありと残っていた。
「……ここか」
天音が呟く。
風が吹き抜け、崩れた石が小さく転がる。
不気味なほど、静かだった。
「嫌な感じだな……」
早乙女が小さく息を吐く。
「でも、間違いない」
零は地面に刻まれた微かな魔力の痕を見つめていた。
「ここだ。
――いる」
その言葉と同時だった。
城の奥、闇の中から“二つの気配”が、はっきりと立ち上がった。
重く、冷たく、歪んだ存在感。
ゆっくりと姿を現したのは、二人の人影。
「……来たか」
低い声が、空間を震わせる。
「ずいぶん、遅かったね」
もう一人が、たんと告げる。
その瞬間。
「――今だ!」
はるとの声が鋭く響いた。
次の瞬間、
そうすけ・ゆなの二人が同時に詠唱に入る。
「―― 《《ポリ・フラグマ》》!」
そして、はるとが口を開いた。
「――《ディア・ステマ》!」
瞬間、魔法陣が足元に展開される。
光が奔り、空間が歪み――
「……」
「ほう……なるほど」
ディソナンスとパウゼの足元が、別々に崩れ落ちた。
まるで世界が引き裂かれるように、二人の姿が分断される。
⸻
ーー分断
次の瞬間、景色が切り替わった。
◆ ディソナンス側
そこに立っていたのは――
零、九条、カノン、そしてはると。
◆ パウゼ側
天音、早乙女、そうすけ、ゆな。
完全に、二つの戦場に分けられていた。
「……成功だ」
はるとが短く息を吐く。
「これで、二人同時に相手されない」
⸻
◆ーー舞台は揃った
ディソナンスは、ゆっくりと拍手した。
「見事だ。
だが――それで勝ったつもりか?」
その声が変わる。
低く、重く、歪んだ響きへ。
「我が名は――」
空間が軋む。
「【不協和音】ディソナンス。
カズマティス・テネブロス」
その名が告げられた瞬間、
周囲の空気が狂い始めた。
一方、別の空間。
パウゼは静かに目を細める。
「……」
そして冷たい声で、はっきりと名乗った。
「【休止符】パウゼ。
ナカザヴァトス・クリスタロス」
次の瞬間、空気が凍りついた。




