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学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第一章「始まりの物語」
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第二十二話「失った者達」

――目覚め、そして十年越しの復讐者たち


焚き火のはぜる音で、天音は目を覚ました。


夜の冷気が肌を撫で、空には星が広がっている。

身体を起こそうとして、鈍い痛みが全身を走った。


「……生きてる、か……」


その声に反応して、焚き火の向こう側で影が動いた。


「お、起きたな」


そこに座っていたのは、二人の青年と一人の少女だった。


年は同じくらい。

だが、その顔を見た瞬間、天音の心臓が跳ねる。


――見覚えがある。


いや、“似ている”。


天音は無意識に声を出していた。


「……はると、そうすけ ……それに、ゆな……」


思わず口に出した名前に、三人が同時に目を見開いた。


「……その名前、どこで知った?」


低い声で問われる。

天音は慌てて手を振った。


「ち、違う! 俺たちの世界に、そっくりな人がいるだけで……」


三人は顔を見合わせ、やがて静かに息を吐いた。


「……そうか。」


そう言ったのは、中央に座るはるとだった。



ーー十年前の話


「私たちの街は……十年前に、滅んだ」


淡々とした口調だった。


「ディソナンスとパウゼ。

あの二人が、実験みたいに街を壊したの」


焚き火が、ぱちりと音を立てる。


「抵抗した奴は殺された。

逃げた奴は、遊び半分で追い詰められた」


言葉を継いだのは、少し気だるげな青年、そうすけ。


「俺たちは、たまたま生き残っただけだ。

瓦礫の下から這い出て、気づいたら……何も残ってなかった」


天音は、息を呑む。


「その時」

はるとが静かに言った。


「復讐するって決めた。

それ以外、生きる理由がなかった」


三人はその日から、各地を渡り歩いた。

魔法を学び、古文書を漁り、……禁術にも手を出した。


「全部、あいつらを殺すためだ」


そう言い切る声には、迷いがなかった。



■ーー協力の申し出


「で、お前たちだ」


はるとは天音を見つめる。


「さっきの戦い、見せてもらった。

正直言って……あんたら、素人じゃない」


「……」


「ディソナンスとパウゼに追われてたんだろう?」


天音は、少しだけ視線を落としたあと、頷いた。


「……ああ」


「なら、話は早い」


はるとは立ち上がり、焚き火の前に立つ。


「俺たちと組め。

あいつらを倒すために」


一瞬、空気が張りつめる。


その時、背後から声がした。


「……勝手に決めるなよ」


振り向くと、九条が起き上がっていた。

少し遅れて、零、早乙女、カノンも目を覚ます。


天音は振り返り、静かに言った。


「この人たち、ディソナンスとパウゼに街を滅ぼされたらしい。

……十年前に」


全員が言葉を失った。


やがて零が口を開く。


「……復讐だけで、十年生きてきたの?」


「「そうだ」」 「そうよ」


三人は即答した。


九条は少し考え込み、やがて口を開く。


「……だったら、いい」


その一 言に、全員が顔を上げる。


「敵は同じだ。

だったら、一緒に潰す」


早乙女が肩をすくめる。


カノンは、少しだけ微笑んで頷いた。


「……助け合いましょう」


天音は、三人の目をまっすぐ見て言った。


「俺たちも、引き返す気はない。

一緒に行こう」


焚き火の火が、強く揺れた。


こうして――

復讐に生きる三人と、◼️◼️に巻き込まれた五人の共闘が始まった。



――招かれた場所


夜が明けきらないうちに、焚き火は消された。


空気は張り詰めていて、誰もが多くを語らなかった。

それでも、確実に“何か”が近づいている――そんな感覚だけが、全員の中にあった。


天音は、零の様子がおかしいことに気づいた。


「……零?」


声をかけると、零は自分の上着のポケットを見つめていた。

まるで、そこに“あるはずのないもの”が入っているかのように。


「……おかしい」


零はそう呟き、ゆっくりとポケットに手を入れた。


指先に触れたのは、紙の感触。


「……何だ、これ」


取り出されたのは、折りたたまれた一枚の紙切れだった。


全員の視線が集まる。


「昨日までは、こんなものなかったはず……」


天音が受け取り、慎重に開く。


そこに書かれていたのは、たった一行。


―――《この場所で待つ》


そして、その下には。


簡素な地図と、座標のような印。


「……場所、か」


九条が低く呟く。


「いつ入れられたんだ?」


早乙女が周囲を見回すが、気配はない。


「……最初からだよ」


零が静かに言った。


「昨日、意識を失っていた時。

あの時しか、考えられない」


カノンが小さく息を飲む。


「じゃあ……」


「間違いない」


天音は紙を握りしめた。


「ディソナンスとパウゼだ」


一瞬、風が吹いた。


焚き火の跡の灰が舞い、消えていく。


「……挑発か?」


「いや」


零は首を振る。


「これは“招待”だ。

逃げ場を塞いだ上で、来いって言ってるんだよ」


天音は地図を見つめながら、静かに言った。


「だったら……行くしかない」


誰も反対しなかった。


それが罠かもしれなくても。

向こうが待っていると分かっていても。


「……決戦だな」


九条が、低く笑う。


「十年追ってきた連中と、俺たちか」


早乙女は肩をすくめる。


「やっと、ケリをつける場所に辿り着いたってわけだ」


カノンは小さく拳を握りしめた。


「……みんなで、帰りましょう」


天音は地図を折り畳み、ポケットにしまった。


「行こう」


「向こうが用意した“舞台”へ」


次回からディソナンス・パウゼ編スタートです

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