第十九話「第二都市カリス」
また日常回ですー
ーー小さな平穏
石畳の道が、遠くまで続いていた。
王都へと続く街道の中継点――
商業と流通の要として栄える、第二都市。
「……着いたな」
天音が伸びをしながら言う。
正面には高い城壁、門の前には商人や旅人が行き交い、呼び込みの声が響いている。
「うわ、久しぶりに“街”って感じだな」
零が周囲を見回す。
魔物の気配も、殺気もない。
あるのは、焼き菓子の匂いと、少し騒がしい人の声だけ。
「……平和だな」
カノンは少し安心したように息を吐いた。
その瞬間。
「よし」
早乙女が、やけにキリッとした顔で一歩前に出る。
「まずは情報収集だな」
「……いや、絶対ナンパだろ」
天音が即ツッコミを入れる。
「失敬な。これは“外交”だよ」
そう言って早乙女は、通りすがりの女性に向かって爽やかに微笑んだ。
「こんにちは。よければこの街のおすすめを――」
「急いでますので」
一瞬で振られた。
「……」
「……」
「ちょ、ちょっと待って、今のは相性が――」
「はいはい、終わりだよ」
零が腕を掴んで引き戻す。
その様子を見て、九条が腕を組みながら呟いた。
「……人間関係も、戦闘と同じだな」
「違うと思う」
天音が即答する。
一方その頃、カノンは屋台の前で目を輝かせていた。
「わ……このパン、焼きたて……」
「お、いい目してるじゃん」
天音が覗き込む。
「食う?」
「い、いいんですか?」
「旅の士気は飯で決まるって、偉い人が言ってた(たぶん言ってない)」
数分後――
「……うまっ」
「でしょ?」
カノンは嬉しそうに頷く。
「こういう街、久しぶりで……」
その声は、どこか懐かしそうだった。
「しばらくは休めそうだな」
零が周囲を見渡す。
だが、その目はどこか鋭いままだ。
「……でも、油断はしない方がいいよね」
「だよな」
天音も頷く。
ここまで来るまでに、セクステットの二人を倒した。
つまり――
「この先は、もっと厄介なのが来る」
「だろうな」
その会話を、九条が聞いていた。
「……ま、今は考えすぎるな」
そう言って、彼は珍しく軽く笑った。
「せっかくの街だ。腹ごしらえくらい、してからにしよう」
「それ賛成」
天音が手を上げる。
「よし、じゃあ今日は休憩だな!」
「……早乙女は?」
「もういない」
「は?」
視線を向けると、すでに早乙女は人混みの中へ消えていた。
「……」
「……」
「……」
三人同時に、ため息。
「またやりやがったな」
「どうせまた振られて戻ってくるのに…」
「三十分後くらいに帰ってくるだろう」
その予想は――
ほぼ的中することになる。




