第二話「別たれた者」
第二話です
―― 王都への道
半ば強制的に王都へ連れて行かれる二人。
その途中、天音はずっと違和感を感じていた。
通り過ぎる兵士。
店の商人。
道を歩く子ども。
顔が、見覚えありすぎる。
「……なあ、零」
「うん。僕も思ってた」
「この世界の人……」
「俺らの学校のやつに似ている奴が多い」
でも、決定的に違う。
目の奥に、知っている“あいつら”の雰囲気がない。
名前を呼んでも、反応しないだろうと分かる。
まるで――
同じ顔をした、別人。
―― 騎士団長・九条 正義
城門前。
鎧を着た大男が、そこに立っていた。
「よく来た。
俺は王国騎士団長の九条 正義だ。」
天音と零の動きが止まる。
「……九条?」
「いや、顔……完全に九条……」
だが、雰囲気が違う。
クラスにいた九条は無気力で、
面倒くさそうにしていた。
だが目の前の男は――
力の塊みたいな存在感。
「どうした? 俺の顔に何かついてるか?」
「……いや、知り合いにそっくりで」
「ほう? 俺はどこにでもいるもんじゃないぞ。」
フッと笑う。
天音(……やっぱり別人だ)
―― 決定的な違和感
城の中へ案内される途中。
魔導士が近づいてくる。
「私は宮廷魔導士、早乙女 幻夜だ」
その瞬間、二人の背筋が凍る。
「……またかよ」
「名前も顔も、完全一致……」
だが早乙女は、二人を知らない。
軽く会釈するだけ。
「勇者殿、よろしく」
天音は思わず聞いた。
「……俺たちのこと、本当に知らない?」
「……? 失礼だが、初対面だよ」
その目には、嘘がなかった。
―― 天音の気づき
城の廊下を歩きながら、天音は小さく呟く。
「……なあ、零」
「ん?」
「この世界さ」
「“俺たちの世界を元にした別世界”なんじゃないか?」
「……」
「人の顔も、名前も同じ、でも中身は別」
「……パラレルワールド、ってやつ?」
「多分な」
その時――
ドゴォォォン!!!
城が揺れる。
兵士が慌てた様子で走り回っていた。
「た、大変です!!」
「門の外に、正体不明の暴走者が――!!」
外から聞こえる声。
「メ゛ガ゛進゛化゛ァ゛ァ゛!!!」
「「……」」
二人同時にため息。
「なあ、…零」
「言わないで」
「どう考えても、あれも“知ってる顔”だよな」
城門の向こう。
筋肉が異常発達した男が、叫びながら突進してくる。
暴走しながら。
ドゴォォォン!!!
地面が揺れる。
城壁の外から、叫び声。
「メ゛ガ゛進゛化゛ァ゛ァ゛!!!」
空気が一変する。
兵士は完全に力が抜けていた。気絶者が出るほど。
「なっ……!?」
騎士団長・九条が顔色を変えた。
「……来たか」
「え?」
「“来た”って、何が?」
次の瞬間。
城門が内側から吹き飛んだ。
瓦礫の中から現れたのは――
筋肉が異様に膨れ上がった男。
目は血走り、理性がない。
そしてその顔は-
天音が口を開く。
「……同じだな」
もう一人の九条だった。
―― 二人の九条
騎士団長が一歩前に出る。
「……止まれ」
暴走者は答えない。
ただ叫ぶ。
「チカラガ……アフレルゥゥゥ!!」
「おい……なんで同じ顔が二人いるんだよ……」
天音の混乱は限界だった。
騎士団長・九条は、歯を食いしばる。
「……あれは……」
「“失敗作”だ」
「失敗……?」
「この世界が歪んだ時に生まれた存在、本来、存在してはいけない“俺”だ」
暴走者が地面を殴る。
衝撃波で城壁が崩れる。
「いやいやいやいや!!説明重すぎるだろ!!」
―― 天音の違和感
天音は、はっきり感じていた。
(まるで……)
「……コピー世界、か」
天音と零は、黙ったまま立ち尽くす。
―― 王城前・崩壊寸前
瓦礫の煙の中。
暴走九条が、地面を踏み砕きながら立ち上がる。
「チカラ……チカラァァァ……!!」
その姿を、騎士団長・九条は静かに見据えていた。
剣を構え、低く息を吐く。
天音と零が言葉を挟む。
「おい、ちょっと待て!」
「同じ顔同士で戦うとか、絵面キツいって!」
「下がれ。あれは……もう人じゃない」
次の瞬間――
ドンッ!!!
暴走九条が消えた。
いや、速すぎて見えなかった。
剣が交差する音。
衝撃波。
城の石畳がめくれ上がる。
―― ガチ戦闘
九条(騎士団長)が剣を振るう。
正確、無駄がない。
一撃一撃が“殺すため”じゃなく、
止めるための剣。
だが――
暴走九条は笑っていた。
「ハハ……ハハハ!!」
「ソレジャ、トマラナイ!!」
拳を地面に叩きつける。
爆風。
「うわっ!」
「マジで街壊れるって!!」
九条(騎士団長)は踏みとどまり、叫ぶ。
「……目を覚ませ!!」
「お前は力じゃない!!」
暴走九条の動きが、一瞬止まる。
だが次の瞬間――
「ウルサイ!!」
ドンッ!!
騎士団長が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
―― 真実
九条(騎士団長)は、立ち上がりながら言った。
「……あれは」
「俺が“力だけを求めた結果”だ」
「「え……?」」
「この世界が歪んだ時、
俺の中の“強くなりたい”だけが切り取られた」
「理性も、迷いも、守る心もない」
「ただの……力の塊」
暴走九条は、息を荒くする。
「チガウ……!」
「オレハ……オレハ……!」
九条(騎士団長)
「お前は、俺だ」
沈黙。
風が止まる。
―― 融合
暴走九条の身体が、震え始める。
「……ウ……」
「……ワカラナイ……」
九条(騎士団長)は剣を下ろした。
そして、ゆっくり歩き出す。
「おい!近づくな!!」
「死ぬよ!!」
だが九条は止まらない。
「逃げるな」
「力は、向き合わないと制御できない」
そして――
暴走九条の胸に、手を当てた。
光が、爆発する。
眩しさに、誰も目を開けられない。
―― その後
光が収まると、そこには-
一人の男が立っていた。
体格は以前より大きいが、
目は理性を宿している。
「……あー……」
頭をかきながら、男は言った。
「なんか……スッキリした」
「「……」」
男は腕を振る。
風圧で城壁が一部崩れる。
「おっと、今は”俺”なのにあいつがまだ残ってる。」
そして、照れくさそうに笑った。
「……あー、なるほど」
「これが“全部乗せ”ってやつか」
―― 九条、誕生
騎士団長でもない。
暴走者でもない。
理性と力が共存する、第三の九条。
天音は小声で零に囁く。
「……あれ、絶対ヤバいやつだろ」
「うん、でも多分……味方だよね」
九条は二人を見る。
「お前ら、異世界から来たんだろ?」
「……ああ」
「じゃあさ」
「面白そうだから、しばらく一緒に行くわ」
こうして――
全部入りの
“九条” が誕生した。
次、もう一人来ます
誰かわかってると思いますけど…




