第十七話「風の止まる街で」
ノクターン終わったのでちょっとした日常回ですー
――束の間の休息
ノクターンとの戦いから数日後。
一行は、街道沿いの小さな交易都市に滞在していた。
石畳の道、屋台の匂い、行き交う人々の声。
久しぶりに“戦いのない空気”だった。
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ーー まずは休息
宿屋の一室。
ベッドに大の字で倒れ込む九条。
「……あぁぁ……」
「生きてるって、こういうことだな……」
天音が笑う。
九条は顔を横に向ける。
「制御できない力を抑えながら戦うの、結構疲れるんだぞ……」
零は椅子に座りながら、淡々とメモを取っていた。
「でも結果的に、今回はかなり連携取れてたね」
「特に最後の一撃は――」
九条が急に起き上がる。
「おい、褒めるならもっと感情込めてくれ」
零「面倒くさいなぁ……」
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ーーカノンの料理
その時、部屋の扉が開く。
「できましたよー」
カノンが、湯気の立つ皿を運んできた。
「今日の晩ごはんです」
香ばしい匂いが広がる。
天音が目を輝かせる。
「うわ、うまそう……!」
早乙女は一瞬で立ち上がった。
「おっ、カノンちゃん特製?」
「いやぁ、料理できる女の子って――」
カノンはにこっと微笑む。
「はい、みんなの分です」
「……俺の分だけ特別とかは?」
「ありません」
即答。
早乙女、静かに心を折られる。
「……ですよね」
九条が笑う。
「ははっ、今日も安定してんな」
⸻
ーー 早乙女、懲りない
食後。
街を少し散策することになった一行。
すると――
早乙女が急に立ち止まる。
「……あ」
「ちょっと、俺先行くわ」
「またか」
「絶対ろくなことにならないのにね」
視線の先には、花屋の前で立ち止まる女性。
早乙女は自然な動きで歩み寄る。
「こんばんは」
「その花、あなたにすごく似合ってますよ」
女性は一瞬驚き、そして微笑む。
「……あら、ありがとう」
早乙女、勝利を確信。
「もしよかったら――」
「でも」
女性は続けた。
「そのセリフ、さっき向こうの通りで別の人にも言ってましたよね?」
早乙女「」
完全沈黙。
天音たちは遠くから見ていた。
「……やっぱりな」
「逆に尊敬する、その心臓」
女性は軽く会釈して去っていった。
早乙女はその場に立ち尽くす。
「……なんでだ」
「俺、そんなに軽いか?」
カノンが小さく微笑む。
「……少し、ですね」
トドメ。
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ーー 夜の静けさ
宿へ戻る途中。
街灯の下で、天音が空を見上げた。
「……しばらくは、こんな時間もいいな」
零が頷く。
「でも、長くは続かない」
「セクステットは、まだ残ってる」
九条が腕を組む。
「次はもっと厳しいだろう」
早乙女は肩をすくめて笑う。
「まぁ、その時はその時だろ」
「俺たち、案外なんとかしてきたし」
カノンは小さく微笑った。
「……はい」
風が吹き、街の灯りが揺れる。
束の間の平穏。
だが、彼らはまだ知らない。
この先に待つ戦いが――
これまでとは比べものにならないことを。




