第十三話「夢の檻」
ーー鍵だらけの世界
目を開けると、そこは薄暗い空間だった。
無数の“扉”。
天井も壁も見えないほど、扉だらけの空間。
その中央で――
カノンが、膝を抱えて座っていた。
「……来ないで」
声は小さく、震えている。
天音はゆっくり近づいた。
「ここ、君の夢だよな」
「……」
返事はない。
周囲の扉が、きしりと音を立てる。
天音はしゃがみ込み、無理に近づかずに言った。
「ここ、鍵だらけだな」
「閉じ込められてる感じ?」
カノンの肩が、びくっと震えた。
「……だって」
「開けたら……」
「また、奪われる」
彼女は顔を伏せたまま、ぽつりぽつりと話し始めた。
「私の村……」
「魔王軍に襲われて」
「フィナーレに……」
声が詰まる。
「……お父さんも、お母さんも」
「私をかばって……」
その瞬間、周囲の扉の一つが、ぎしりと開く。
中には――血に染まった家。
震える幼いカノン。
逃げ惑う人々。
天音は、歯を食いしばった。
「それで……」
「もう誰も失いたくなくて」
「だから……強くなりたかった」
「でも……怖くて……」
カノンの声は、ほとんど消え入りそうだった。
「……また失うなら」
「最初から、誰とも関わらない方がいいって……」
天音は、静かに立ち上がった。
そして、彼女の前に立つ。
カノンが顔を上げる。
天音は、まっすぐに言った。
「確かに、失うのは怖い」
「でもさ」
「失うのが怖いからって、一人でい続けるのは」
「……生きてるって言わないだろ」
カノンの目が揺れる。
天音は続ける。
「今は、仲間がいる」
「それに……」
少しだけ照れたように笑う。
「俺たち、君の“家族”になってもいい」
「なってみせる」
カノンの瞳から、涙がこぼれた。
「……そんなの」
「簡単に言わないで……」
天音は、迷わず答えた。
「簡単じゃない」
「だから、俺たちがやるんだ」
「一緒に」
その瞬間――
空間に、ひびが入る。
鍵だらけの扉が、ひとつ、またひとつと崩れていく。
カノンは、震える手で胸を押さえた。
「……あ」
「胸が……あったかい……」
天音は手を差し出す。
「帰ろう」
「みんな待ってる」
カノンは、その手を掴んだ。
光が、爆発する。
⸻
ーー現実へ
カノンは、勢いよく目を開いた。
「……っ!」
目の前には、天音。
そして、必死に戦っている九条の背中。
「カノン!」
天音の声に、彼女は大きく息を吸った。
「……私、もう逃げません」
その瞬間、彼女の周囲の絵画が砕け散る。
次早乙女ですー




