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学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第一章「始まりの物語」
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第十二話「力」

――「力」だけが残った世界


九条は、ひとりで立っていた。


見渡す限り、荒れ果てた大地。


砕けた城壁、焼け落ちた街、倒れ伏す無数の影。


――全部、自分が壊したものだった。


「……また、か」


彼の手は、異様なほど重い。


剣を握る感触はあるのに、感覚が遠い。


「メガ進化」


その言葉が、頭の中で反響する。


次の瞬間――


身体が勝手に動いた。


力が溢れ、地面が割れ、空気が震える。


「やめろ……!」


止めようとしても、止まらない。


目の前に現れる敵を、ただ叩き潰す。


考える間もなく、判断もなく。


ただ――破壊。


気づけば、足元に倒れているのは、


守るはずだった“仲間”の姿だった。


「……っ!!」


九条は膝をつく。


「まただ……」


「強くなればなるほど……」


「俺は、何も守れない……」


そのとき、背後から声がした。


「――それ、本気で思ってる?」


聞き慣れた声。


振り向くと、そこにいたのは天音だった。


いつもの格好で、いつもの顔で。


「……天音?」


「ここは……夢、だろ?」


天音は周囲を見渡し、苦笑した。


「分かりやすいな」


「いかにも“自分を責める用”って感じ」


九条は顔を歪める。


「笑うな……!」


「俺は……」


「力があるくせに、制御できない」


「守るどころか、壊すだけだ」


「こんなの……仲間失格だろ」


天音は、静かに首を振った。


「違う」


天音は一歩、近づいた。


「お前は“強すぎる”だけだ」


「だから、怖くなる」


「壊したくないから、迷う」


「……」


天音は続ける。


「でもさ」


「仲間って、完璧じゃなきゃダメなのか?」


九条が顔を上げる。


「暴走するなら、止めればいい」


「間違えたら、修正すればいい」


「それを一人で抱え込む必要、あるか?」


九条は言葉を失う。


「俺はさ」


天音は少し照れたように笑った。


「お前が暴走したら、止める役だと思ってる」


「零は頭で止める」


「カノンは心で止める」


「早乙女は……まあ、雰囲気で止める」


「で、俺は」


「真正面から、ぶつかって止める」


九条の拳が、震える。


「……それでも」


「もし、俺が……」


天音は即答した。


「その時は、全員で背負う」


「一人で抱えるな」


「仲間だろ」


その言葉が――


ひび割れていた世界に、ゆっくり染み込んでいく。


空に走っていた亀裂が、止まる。


瓦礫が、消えていく。


九条は、深く息を吸った。


「……そうか」


「俺は、まだ一人で戦ってたんだな」


彼は、剣を地面に突き立てる。


そして、初めて――少し力を“抑える”感覚を掴んだ。


「……ありがとう、天音」


天音はニッと笑う。


「礼は、現実で聞くよ」


次の瞬間。


世界に、ひびが入った。


光が走り、景色が砕ける。


九条の意識が、現実へと引き戻されていく。


最後に聞こえたのは――


「次は、ちゃんと一緒に戦おうぜ」



ーー現実


九条は、はっと目を開いた。


絵の中から、転がるように現実へ戻る。


「……っ!」


天音が、すぐそばに立っていた。


「おかえり」


九条は、ゆっくり立ち上がる。


「……ああ」


「今度は、少し制御できる気がする」


天音は小さく笑った。


「それでいい」


そのとき――


街の奥から、拍手が聞こえた。


「素晴らしい」


「実に、美しい夢だったよ」


ノクターンの声。


九条が一歩前に出る。


「……天音」


「ここは俺が引き受ける」


ノクターンの気配が、濃くなる。


無数の絵が空に浮かび、ゆっくりと回転し始める。


「へぇ……」


「まだ抵抗する気?」


九条は剣を構えた。


「お前の相手は俺だ」


「……こっちは時間稼ぎで十分だ」


天音は一瞬だけ迷い、そして頷いた。


「……頼んだ」


九条は笑った。


「夢の中でも、ちゃんと守れよ」


次の瞬間、天音の足元に光の円が浮かぶ。


意識が、引きずり込まれる――

次はカノンです

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