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学徒、異世界転移す。  作者: Harun
第一章「始まりの物語」
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第十話「急転」

―― 血の手紙


夕暮れ。


赤く染まる街道を、五人は並んで歩いていた。


風は穏やかで、とても静かだった。


―その時。


「……ん?」


零が足を止める。


空間が、わずかに歪んだ。


次の瞬間。


バッ、と地面に魔法陣が浮かび上がる。


「魔法陣!? 構えろ!」


九条が即座に前に出る。


だが、攻撃は来ない。


光が収束し―


ぽとり、と何かが落ちた。


「……手紙?」


天音が恐る恐る拾い上げる。


封筒はボロボロで、端が焦げ、赤黒い染みがついていた。


カノンが息を呑む。


「……血……」


天音が封を切る。


中の紙は、ところどころが血で滲み、文字の半分が読めなくなっていた。


それでも、最初の一文だけははっきりと書かれていた。


―――


『王都は、もうない』


―――


空気が、凍りつく。


「……は?」


零が紙を覗き込む。


「……続きがあるみたい」


かろうじて読める文字を拾う。


『逃げろ』


『これは……』


その先は、血で塗り潰されていた。


まるで、最後の力で書き殴ったかのように。


九条が歯を食いしばる。


「……フィナーレ」


カノンの表情が強張る。


「セクステット……」


早乙女が静かに言った。


「魔王軍の幹部連中だろ」


「それが、王都を……?」


沈黙。


風が、紙を揺らした。


天音が拳を握る。


「……あの時」


「フィナーレを倒したとき……」


「妙に引き際が良すぎた」


「囮だった可能性があるね」


「……最初から、俺たちの動きは読まれてた」


カノンが小さく震える声で言う。


「この手紙……」


「たぶん、王都から逃げてきた人が……」


「命懸けで、ここまで……」


その場に、重い沈黙が落ちた。


天音は、ゆっくり顔を上げる。


「……行こう」


全員が、彼を見る。


「王都じゃない」


「魔王城だ」


「確認しに行くってレベルじゃないよ?」


「分かってる」


「でも、一応俺ら、勇者っぽいし」


「ここで引いたら、手紙の人は無駄死にだ」


九条が剣を握る。


「なら、決まりだな」


早乙女が苦笑する。


「はぁ……」


「せっかく旅が楽しくなってきたのに」


カノンは一歩、前へ出た。


「私も行きます」


「逃げません」


………


少しの沈黙があった。


やがて、零が地図を広げる。


「……魔王城」


「ここからだと、直線距離でも――」


指が止まる。


「半年」


「……は?」


「補給、休息、魔物の出現率、街の位置……」


「全部考えると、最短で半年はかかるね。」


「……遠いな」


カノンは唇を噛んだ。


「……王都が襲われたのが本当なら」


「半年も、持たないかもしれません」


空気が一気に重くなる。


天音は手紙を握りしめた。


「だからこそ――」


「途中で、止める」


零が顔を上げる。


「セクステットを放ってはおけないもんね」


「そうだ」


「魔王城までの道に、いる」


「必ず」


「放置したら被害が広がる」


九条が静かに言う。


「……つまり」


「この旅は、逃げじゃない」


「討伐行だ」


カノンは、小さく頷いた。


「一人ずつ、倒していくんですね……」


早乙女が肩をすくめる。


「普通なら無理ゲーだけど」


「まあ……」


彼はちらっと天音を見る。


「こいつらなら、やるんだろうな」


天音は苦笑した。


「やるしかないんだよ」


そうして、はじまりの火蓋は落とされた。


次回、もうセクステット戦入ります

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