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ぴゆうちやん奮闘

〈一波乱有りさうだ冬の終はり迄 涙次〉



【ⅰ】


* 天神一享博士の造つた、「もう一匹の天才猫」、袴田小六。魔界の天神博士誘拐に関係有りとして、警察の取り調べを受け、尋問の嚴しさのショックで、普通の猫と成り下がつた。私・永田の筆が粗筋めくのを、まづは陳謝しなければならないが、起筆にはいつも苦しんでゐる内部事情をお察し願ひたい。で、小六は今では浪々の身、即ち野良猫として生きてゐる。本來なら天神博士が飼つてやらねばならないところだが、小六の行く方を博士は知らなかつた。だが元より野良の生活は、彼の肌に合つてゐた。其処には、魔界に協力してゐた頃の息の詰まるやうな煩はしさはなく、それが彼には有難かつた。



* 前シリーズ第199・200話參照。



【ⅱ】


然し、每日の食ひ扶持を求める野良の生活には、小六ならずとも閉口させられるだらう。彼は魔界から持つて來た小さな頭陀袋を脊負つてゐたけれども、それには食べ物は入つてゐない。そんな彼に、因果は巡り巡つて、彼はカンテラ事務所の門前迄辿り着いた。が、怖さうな番犬(ロボット番犬タロウの事)がゐるので、容易に玄関先でにやあにやあ啼く事も叶はない。彼の存在に氣付いたのは、ぴゆうちやんだけだつた。一味の他メンバーは、多忙に過ぎた。



【ⅲ】


(ア、野良チヤンダ。オ腹ガ空イテルノカナ?)。ぴゆうちやんは小六とのコンタクトを圖つた。テレパシーで、(野良チヤンゴ飯ガ慾シイノ?)と呼び掛ける。小六(ご親切様。實はその通りなんだ)-ぴゆうちやんは、事務所で出されるフェレット用の餌を、試しに小六にあげてみた。(いたゞきます。忝ない)。小六はぴゆうちやんの出した食べ物を平らげた。(はあ、一息付いた。ご馳走様。ところで、きみは普通の動物ではないね)-(僕、ピユウチヤン。鎌鼬ノ子ナンダ)-(へえ、そいつは凄いや。僕は小六つて云ふんだ)。かうして、ぴゆうちやんと小六の、畸妙な交はりは始まつた。



【ⅳ】


ぴゆうちやんは、悦美の計らひで、形式上事務所の猫逹と並んでご飯を食べてゐたけれども、彼は風の具象化した妖魔。生きて行くのに必要なエネルギーは、風から摂取出來る。小六は每食、朝夕とぴゆうちやんに食べ物を貰つた。小六、次第に(ぴゆうちやんの話を通して、嘗て厄介を掛けた谷澤景六=テオが、この事務所に住んでゐる事を知つた)自分の置かれた複雜な環境に氣付いた。ぴゆうちやん(ナンダキミ、ておサンノ知リ合ヒナノ? ソレナラ事務所ニ上ガツテ行ケバイゝノニ)-(谷澤先生には多大な迷惑を掛けたんだ。今更合わせる顔がないよ)



※※※※


〈元カノよ勝手にビッグになるからと云つた我が身の閑暇恨めし 平手みき〉



【ⅴ】


で、魔界。「ニュー・タイプ【魔】」微視佐馬ノ介は蘇生したが(* 番頼母に首を落とされた儘の、首なし【魔】の姿で)、一度しくじつた事の惡名挽回と云ふ譯で、小六探しの役を自ら買つて出た。魔界は袴田小六の記憶がバレては困る、と云ふので、小六の現在の居處を探つてゐた。とは云へ、「迷ひ猫探してゐます」の貼り紙を電柱に貼り出す譯にも行かないし、正直途方に暮れていたのだが... ぴゆうちやんと小六の交友は、彼に利した。水晶玉で、小六が現在、カンテラ事務所付近を彷徨つてゐる事を知つたのである。



* 當該シリーズ第21話參照。



【ⅵ】


どろん、と微視、ぴゆうちやんと小六が語らつてゐる現場、カンテラ事務所の玄関先に現れた。ご存知の通り「ニュー・タイプ【魔】」はタロウの嗅覚をも欺く。わ、首なし人間! と、ぴゆうちやん・小六は驚愕した。然し、(此奴、【魔】ダナ)とぴゆうちやんは落ち着いて行動。風のパワーで、小さな龍卷きを引き起こし、微視は敢へ無くその餌食となつた。微視は堪らず魔界に逃れたのである。



【ⅶ】


(凄いやぴゆうちやん!)-(ソレ程デモナイヨ)と云ひつゝ、ぴゆうちやん面映ゆかつた。さて、微視は蘇つた。これから小六を狙つて、再び三度、現れるだらう。ぴゆうちやん一人では撃退しきれぬケースも起こり得る。然し、これからの事はこれから。(明日考ヘヤウツト)とぴゆうちやん、思つたとか。



【ⅷ】


(ところで、お禮をしなくちやね)、と小六。ぴゆうちやんに、拾つて來たぴかぴかのビー玉(頭陀袋に入れてあつた)を差し出した。(ワア、綺麗!)ぴゆうちやん輝きを放つ物が、大好き。と云ふ譯で、ぴゆうちやんの受け取つた初めての仕事の代価は、幾つかのビー玉だつた。お仕舞ひ。



※※※※


〈作に出た冬・冬・冬の大行進 涙次〉



PS: 賢明な讀者はお氣付きだらうが、小六は次第に天才猫時代の記憶を取り戻しつゝあつた。「ニュー・タイプ【魔】」逹には、其処ら邊、利用価値があつた譯である。頑張れぴゆうちやん、小六を守れ! 擱筆。


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