11. 祝勝会と封書
「絶対に行きたくない」
そう心に誓ったのだが、空腹感が行けと主張してくる。
「絶対に……行きたく……」
盛大に腹の音がなり、主の行動に抗議するすきっ腹。
部屋に戻れば軽食があるので一時的に空腹感を満たすことは出来るが、意地を張らなければ本格的な満腹感を得られるということもあり、カウンターに突っ伏して迷うアケィラ。
「くそぅ!行けば良いんだろ行けば!」
ガタンと大きな音を立ててやけくそになったかのような勢いでアケィラは店を出た。
解錠と睡眠とエロの次に美味しい食事が大好きであり、それが確実に得られるというのに質素な食事で我慢することなど出来なかったのである。
「あら、こんにちは」
「婆ちゃん、ちわっす」
外に出たら、裏に住む老婆が歩いていた。
「もしかしてうちの店に用事?」
「いいえぇ、偶然よ。せっかくのハレの日だから外を歩いてみたくって」
「そりゃあ良い。家に籠るよりおてんと様の下を歩いた方が健康的ってもんだ」
ひきこもりぐうたらし、陽が沈むころに飯やら色街やらに出かけようとする男が何を言っている。
「でも気をつけなよ。今日は人が多いから、盗みを働くような悪い奴らも紛れてるぜ」
「心配してくれてありがとう。大丈夫よ、貴重品なんて持ってないから」
「はは、盗まれるものがなけりゃ平気ってか。そりゃそうだな」
アケィラはそのまま少し老婆と世間話をし、別れて目的の場所へと向かった。
「マジで人が多いな」
街の中は見たことが無い程に活気に満ち溢れていて、住人達は皆笑顔でお祭りのように騒いでいた。
『うええええい!』
『勇者様ばんざーーい!』
『ざまぁみろ魔王軍め!』
『飲め飲め!』
『ぎゃはははは!』
知能が極端に低下した人々が、飲み、歌い、叫び、踊り、街中がルール無用の舞踏会にでもなったかのようだ。
だが全ての人がそうというわけではない。
そういうお祭りの時に限って悪事を働こうとする不届き者が存在するため、喜ぶ気持ちを抑えて街の人を守るべく巡回している人々もいるのだ。
たとえば衛兵とか。
「救世主様!」
「げ」
見知った顔に出会ってしまい、露骨に嫌な顔をしてしまうアケィラ。
だがそんな彼の様子など全く気にせず、その男性は嬉々として彼に近寄って来た。
「救世主様、街の様子をご覧くださいッス。貴方様が守り通したものでございますッス!」
「おい馬鹿。やめろ。街中でそういう話をするな。聞かれるだろ!」
「はっ!そ、そうでしたッス。大変申し訳ございませんでしたッス。救世主様」
「だからその呼び方も止めろって!」
彼はアケィラが爆弾を解除した時に近くにいた衛兵の一人。
爆弾の種類を特定した無駄に知識がある人物だった。
その時の件について口止めをしているのだが、この様子を見ると本当に止まっているのか不安に思う。
「失礼しましたッス。例の話を口外すると街の人が不安に思ってしまいますから徹底して秘匿せねばならないのでしたッスね。せっかくの祭りに水を差すところでしたッス」
街が吹き飛ぶほどの爆弾が仕掛けられていたことが表沙汰になると住人が不安に思うから絶対に口外してはならない。そう説得してアケィラは衛兵の口を封じたのだ。
「偉い人にも伝えて無いだろうな」
「は!伝えていませんッス!」
「よし。あいつらの中には住民の気持ちなど考えず、己のメンツのみを考えて褒美を与えようとしてくる輩がいるからな。絶対に言うなよ」
活躍した平民を褒めるのは貴族の責務だからとか、褒美を与えなかった事実が漏れると他の貴族に後ろ指を指されてしまうからとか、そんな理由で褒美を与えて来るだろうことがアケィラには簡単に予想できた。
「は!ですが領主様はそのようなお人では無いため伝えても良いかと思うッスが……」
「絶対にダメだ!本当にその人物が優れた人あっても、何かの拍子にポロっとやってしまうかもしれないだろう。だから秘密を抱えている人物は最低限にすべきなんだ」
「そういうものッスか」
「そういうものだ」
不安でしか無いが、こればかりは言い聞かせるしかない。
もしもアケィラが街を救った人物だなんてバレたら、世界各国の偉い人に自分の名前が伝わってもおかしくないのだ。絶対に面倒なことになるに違いなく、少なくとも平穏な毎日は手が届かないところに行ってしまうだろう。
「本当に頼んだぞ」
「は!」
「本当に本当に頼んだぞ」
「は!」
「本当に本当に本当に頼んだぞ」
「は!」
何度も何度も念を押し、それでも不安は解消されず、アケィラは嫌な予感をヒシヒシと感じながら彼の元を離れた。
「だから俺に向かって敬礼するな馬鹿野郎!」
「申し訳ありませんッス!」
だが今回は珍しく幸運にも、街の人は喜ぶことに夢中になっていて彼らの様子に気付いていなかった。
そうしてアケィラが辿り着いたのは、一軒のレストラン。
飲食店はどこも超満員であり酒飲み達が騒いでいるのだが、その店からはそのような喧騒は聞こえて来ない。入り口には貸し切りの札がかけられており、それを見た客と思わしき人々が諦めて去って行く。
そんなレストランの入り口にアケィラは手をかけて、ふぅと小さく息を吐く。
「嫌な予感しかしねぇ」
アケィラは店でぐうたらしていた時のことを思い出す。
『戦勝祝いの特別料理を作るから食べにこい』
突然店にやって来たいきつけのレストランのシェフが、そんなことを言って来たのだ。もちろん嫌な予感がしたアケィラは即行で断ったのだが、シェフは絶対に来いと念押しして来た。
『安心しろ。貸し切りにしてお前の知り合いくらいしか来ねぇようにしてある』
『むしろそっちの方が嫌なんだが!?』
『お前が来なかったらあいつら悲しむだろうなぁ』
『勝手に悲しめ!俺は行かん!戦争に関わろうとしなかった奴が、関わった奴らと同じ土俵で祝えるか!』
『うるさい、絶対に来い。来なかったら口が滑って貴族様に例の話を言ってしまうかもなぁ』
『その脅しは卑怯だぞ!』
それでも行かないと言い張りシェフを押し返したのだが、結局こうして来てしまったというわけだ。
果たして中で誰が待っているのか。
戦争に関係している人が少なければ良いのだが、その期待は叶うだろうか。
こっそりと扉を開けて中を確認したアケィラは、すぐにその扉を閉じようとした。
しかし彼の行動は予測されていたのか、物凄い力で中から扉が強引に開かれて、閉じるために扉を掴んでいたアケィラは勢い良く中に引き込まれる形になってしまった。
「よく来たな!」
「帰る!やっぱり帰る!」
「ほう、何処から?」
「入り口を塞ぐんじゃねぇよギルマス!」
冒険者ギルドのギルマスに退路を封じられた。窓から逃げる方法もあるが、それはそれでギルマスが超高速移動を使って封じに来るだろう。
「くそぅ、やっぱり罠だったか」
「あはは、学校では全然捕まらなかったあのアケィラ君がこんなに簡単に捕まるだなんて」
「うるさい黙れ来るな。というか勇者君はこんなところに居たらダメだろ!街の人に顔見せて勝利の象徴やってろよ!」
アケィラが一番会いたくなかった人物、勇者が親し気に話しかけて来た。
戦争の一番の功労者と話している場面など見られたら、何を思われるだろうか。
それがなくとも近づくだけで嫌なフラグが立ったのではと不安に感じてしまう。
「何よ、相変わらずチキンなのね。堂々としてれば良いじゃない」
「ダ、ダメだよイナ。アケィラ君はミュゼを助けてくれたのに」
「そうだよ。来たくないのに呼び出したの本当は凄い申し訳ないのに……」
「わ、分かってるわよ!私だって感謝してるし、本当は申し訳ないと思ってるし、ああもう私が悪かったわ!来てくれてありがとう!」
今回は勇者だけでなく、魔法使いのイナニュワ、全身鎧のイゼ、呪われていた神官のミュゼスゥもセットでいるようだ。その姦しさにアケィラは嫌そうに顔を顰める。
「何よその顔!私達みたいな美女が話しかけて来たんだから光栄に思いなさいよね!」
「他の男の女に近づかれても迷惑なだけだ」
「勇者様の女って……そ、そんなことあるけど……うへへ……」
「うぜぇ」
水と油のような関係に見えて案外息があっている。
勇者がいなければ、彼女もツンデレヒロイン候補になっていたのではないだろうか。
そんな空気を察したのか、これまた会いたくない人物が近づいてきた。
「アケィラ、随分楽しそうに話をしてるな」
「これの何処が楽しそうに見える」
彼の事を最も良く知ると自負している深紅の髪の女性、カミーラである。
「まぁ良い。そろそろ料理が出来るらしいから席につけ」
「ん?今日はあんまり絡んで来ないんだな」
「お前そういうの嫌いだろ」
確かにそうだ。
平穏を好むアケィラにとってトラブルメイカーのカミーラが寄ってくるのは大迷惑だ。
だが彼女は今までそのことを分かっていて近づいていたはずだ。
それなのに今になって態度を変えたのは、ここ最近の出来事で思うところがあったのか。
それとも、アケィラのご機嫌をとらなければならない程のやらかしをしてしまったのか。
「おいお嬢。こっちを見ろ」
「い、いきなり積極的になったな。まだ心の準備が……」
「うるさい、こっち見ろ」
「…………」
「やっぱりお前、何かやっただろ!」
猛烈に嫌な予感がする。
アケィラにとって致命的な何かを彼女がやらかしてしまった予感を。
「ち、違うんだ!私は何もやってない!無実だ!」
「私は?なら誰が何をやったって言うんだ?」
「それは……」
言い淀むカミーラ。
冷や汗が止まらないアケィラ。
二人の間を流れる異様な空気に誰も口を挟めない、かと思いきや割って入った勇気のある人物がいた。
「おいこら。早く座れ。飯が出来た」
「今はそれどころじゃ……」
「座れって言ってるだろ!せっかくの料理をダメにする気か!」
「あ、はい」
特別料理を作っていたシェフだった。
猛烈な怒気を浴びせながら座れと言われたら、アケィラは従わざるを得なかった。
「くそぅ、後で絶対に聞き出すからな」
そうカミーラに伝えて近くの席に座ると、大きなワンプレートとスープが運ばれてきた。
プレートはステーキに魚のフリットにサラダにと色鮮やかに飾り付けられていて見るからに美味しそうだ。スープも濃厚コーンスープで甘い香りが漂ってくる。
「それじゃあ料理が冷めないうちに乾杯しましょうか」
二つのグラスにそれぞれ質の良い赤と白のワインが注げられ、全員が乾杯のために赤いワインが入ったグラスを手に取った。
「(冒険者ギルドのギルマス、勇者一行、カミーラ、それとござる侍か。確かに俺の知り合いばかりだな)」
目の前に座っていたござる侍と視線が合ったので軽く会釈した。
「アケィラ殿のおかげで大活躍出来たでござる。助かったでござる」
「ふ~ん、良かったな」
「はいでござる」
これ以上世間話をしていると料理が冷めるからと怒られるからか、ござる侍は話をそれだけで打ち切った。後でいくらでも話す時間が取れるのだから、今はこれだけで良いとでも思ったのだろう。
「じゃあ乾杯の音頭だが、アケィラに……」
「おい」
「冗談だ。勇者にやってもらおう」
シェフがとんでもないことを言い出したのでツッコミを入れたが、全く冗談に思ってなさそうなところが更に嫌な予感を加速させる。
「僕もアケィラ君が良いと思うけど嫌がるだろうし、その問答で料理が冷めちゃうからやるね」
「そういうの良いから」
どうしてシェフも勇者もアケィラが中心となるべきだと言うのだろうか。
そしてどうして他の誰もそのことに注文をつけないのだろうか。
決戦の最前線で戦っていた勇者こそが中心となるのは自然なことのはずなのに。
「では簡単に。魔王軍との決戦に勝利出来たのは、ここにいる皆のおかげです。大混乱の魔法書を使った一手はあまりにも効果的で、霊緑胡椒を使った料理は仲間達の力を底上げして生存確率を格段に上昇させてくれました」
どちらもアケィラが関わった話であり、わざわざそのことをここでピックアップする必要はあるのだろうか。
「東方の剣士サクライさんも、物凄い活躍で大将級の魔物を数多く撃破してくれました」
サクライとはござる侍の名前である。
勇者に鍛えられたサクライは、八面六臂の活躍をして強敵を倒しまくったようだ。
「そして僕達が不在の間に、この街をカミーラさんとアケィラさんが守ってくれた」
「おいコラアアアア!」
どうしてそのことを知っている。
嫌な予感はこれだったのかとアケィラは吼えたが、勇者は気まずそうに眼を逸らしてスルーした。
「それでは決戦の勝利を祝ってかんぱーい!」
「「「「かんぱーい!」」」」
「無視するなああああ!」
アケィラはカミーラの元へと猛ダッシュで移動してその首根っこを両手でぎゅっと掴んだ。
「どういうことだオイイイイ!」
もちろん爆弾解除についてはカミーラにも口止めしてある。
だが勇者がそれを知っているということは、止めきれなかったということだ。
「だ、だから私じゃない!私じゃないんだ!」
「なら誰だって……衛兵か!約束破りやがったのかああああ!」
膝から崩れ落ちて項垂れるアケィラを見て、カミーラは申し訳ない気持ちで一杯だった。
「す、すまん。私が気付いた時にはもう彼らは勇者に報告していて、止めることが出来なかったんだ」
「どうしてだ。どうしてあいつらは裏切ったんだ」
「まてまて。彼らは裏切ったつもりはないんだ」
「あぁ?」
隠したかったことを暴露してしまったのだから、救世主のお願いを聞くと言ったくせに聞かなかったのだから、裏切りと思われても不思議ではないはずだ。
「お前がお願いしたのは『偉い人』とか『街の人』に言わないことだろ。彼らにとっての『偉い人』ってのは貴族様とか権力者とか上司であって、勇者様はその括りに無いんだよ」
「なんだと!?」
尊敬する凄い人物であるが、『偉い人』という表現からは少し異なる印象を勇者に向けて彼らは抱いていたのだ。ゆえに彼らへの口止めは意味をなさず、むしろ救世主が居たのだと喜んで勇者に伝えたのだった。
「おい、そんなとこで寝てないで俺の料理を食え」
「今はそんな気分じゃ……」
「食え」
「チクショオオオオ!」
脅しにも近い怒声でそう言われてしまったので、アケィラはショックを味わう余裕などなく席へと戻りガツガツ食べ始めた。
「美味いよ!超美味いよ!これまで食べた中で一番美味いのに涙が止まらねぇよチクショオオオオ!」
「かっかっかっ!そんなに美味いか!お代わりもあるから沢山食べろ!」
「こうなったらやけだ!じゃんじゃんもってこーい!」
現実逃避のやけ食い。
絶品料理に舌鼓を打ちながら、アケィラは今後の身の振り方を考える。
「(まだだ。この場の奴らを口止めすればまだ間に合う。こいつらが俺に感謝しているというのなら、救世主権限で駄々をこねまくって平穏な毎日を守るしかない!)」
どうしても平穏な日々を譲れないアケィラは悪あがきをしてあがこうと考えていた。
そんな彼の元にギルマスがやってきた。
「せっかくの戦勝会なんだ、そんなしけた面すんなよ」
「この状況でどうやって喜べと!?」
「ならこんなのはどうだ。好きなことでもあれば多少は気が紛れるだろ」
「え?」
ギルマスが差し出したのは、くるくる丸められて厳重に魔力封が為された書状だった。
「最近ダンジョンで見つかったものなんだが、かなり厳重に封がされていて、低レベルの解錠スキルでは開けられなくてな」
「ダンジョンから書状?」
「時々出てくるんだ。中にはアイテムの製法や魔法の習得方法が書かれていることが多いな。それが未知のものだったら大発見になる」
「ふ~ん」
アケィラはそれを手に取るとじっくりと視始めた。
これまでの嘆いていた雰囲気から一変し、やはり好きなことが相手となると気分がガラっと変わるらしい。
ギルマスはそのことが分かっていて気分転換に、閉じられた書状をアケィラに渡したのだろうか。
「なんだ簡単じゃん」
「は?」
しかしアケィラの楽しい時間はあっという間に終わってしまったようだ。
彼が優秀すぎるが故。
「いやいや。これ超複雑な封印が何重にもかけられてるんだぞ。いくらお前でもそんなに簡単に解けるとは思わないんだが」
「確かに一見して複雑だけど、ほとんどが分かりやすいダミーだからそれを除けば割とシンプルだぞ。それにこの手の封印は見たことがあって、その亜種みたいなもんだから解くのは直ぐだ。例の爆弾の方が遥かに難しかったわ」
そう言ってアケィラは得意の薄い魔力を書状に纏わせ、封印されている魔力を掴んで動かしあっさりと解いてしまった。
「はい、完了。はぁ……」
解錠が終わってしまえば元の憂鬱な気分が戻ってくる。
アケィラはまたやけ食いに戻ろうとフォークとナイフを手に取ったのだが。
「やはりお前はすさまじいな」
「もう用が無いなら一人にしてくれ」
「そう言うな。せっかく開けたんだから読んでみろ」
「いいのか?」
「ああ」
果たしてその書状にはどのような内容が書かれているのか。
己の解錠技術をより磨くための手段が書かれていないだろうか。
ほんの僅かな期待と共にその書状を読み始めたアケィラは、すぐに顔面を真っ青にしてプルプルと震え出した。
それからしばらくして、書状を床に叩きつけて思いっきり立ち上がる。
「騙されたああああああああ!」
書状の内容は期待を裏切るどころか、落ち込んでいたアケィラを更に地獄の底に叩き落とすものだったのだ。
「どういうことだよギルマスうううう!どうして俺のことが領主に知られてるんだよおおおお!」
書状はなんとこの街を治める領主からアケィラに宛てたものだった。
『この書状を開封出来たということは、貴殿の実力は本物だ。是非会って街を救ってくれたことに対して感謝を伝えたい』
という内容が貴族らしい表現でつらつらと書かれていた。
「ダンジョンで見つかったってのは嘘だったんだな!」
「ああ」
「くそ!くそくそくそくそ!どうして俺の平穏を壊そうとする!どうして誰も俺の願いを聞いちゃくれない!」
「それは違う。俺達は誰もお前のことを漏らしてなんかいないさ。これだって偉い人からやれって言われたから仕方なくやっただけだ」
「なら何で領主が俺のことに気付いたんだよ!」
「さぁな」
アケィラはレストランの中を見渡し、一人一人の顔を確認した。
すると可哀想な人を見る目ばかりであり、やらかしたことを隠していそうな人はいなかった。
つまりはここに居ない誰かがどうやってか領主にアケィラのことを伝えたのだ。
「まぁまぁ、そんなに気落ちするな。領主様は大貴族にしては珍しく平民の事をしっかりと考えて下さるお方だ。お前が嫌がることは極力しないでくださるだろう」
「うう……だとしても繋がりが出来るだけで嫌なんだよぅ……」
一旦繋がりが出来てしまえば、貴族がらみのトラブルに巻き込まれてしまうかもしれない。
今回の戦争のように、僅かな関わりから一気に中心人物へと昇華するなんてこともありえるのだ。
「(ガチで国外逃亡を考えないと)」
平穏な生活をどうにか守るために。
だが果たして彼の優秀さを知るこの場のメンバーがそれを許してくれるだろうか。
戦争が終わり、街中が喜びに満ち溢れる中、アケィラの苦難はまだまだ続きそうだった。




