運転―緩
三題噺もどき―ごひゃくきゅうじゅういち。
車内に冷たい風が吹く。
ほんの少しだけ開けた窓の隙間から、ひっそりと入り込んでくる。
そのくせに身震いするほどに冷たい風は、ほんの少し火照った体には案外丁度良かった。
末端冷え性のせいで(かは知らないけど)、頭ばかりが熱くなっている。
「……」
手はかじかんでハンドル操作も一層注意しながらしている。
足はわりともう。感覚がなかったりしたり……暖房でもつければいいんだけど。ガソリン代がさらに上がるらしいので、あまり消費につながることはしたくない。ま、最悪つけるけれど。今はそこまでじゃない。寒いけど。
「……」
近くの百円ショップに向かうために、川沿いの道を走っていた。
この辺の木は桜ばかりなので、紅葉を見ることは出来ない。川の反対側に行けば見れたはずだけれど……そうでなくても今年はどこに行っても紅葉はなかったような気がする。銀杏はかろうじて見たような見ていないような。通っていた小学校は大きな銀杏があったんだけど、アレはまだいるのかな。もう枯れているかもな。
「……」
川沿いということもあってか風は一層冷たく感じる。
今日は風が強いような気がするけど、気のせいかな。
まぁ、この道はいつも風が強いから気のせいかもしれない。
「……」
若干走りづらい道を進んでいき、大通りに出る。
川を渡す橋を含めたその大通りは、車がのろのろと走行していた。
ここの道はいつでも混雑している。これを解消するために橋がもう一本かけられたのだけど、あまり意味がなかったようだ。いや、多少はマシになっているのかな。
「……」
左折するために指示器を出しながら、少しだけ進む。
横断歩道があるので、あまり前に出たくはないのだが。まぁ来る気配はないので大丈夫だろう。それまでに誰かが合流させてくれればそれでいい。のだけど。
「……」
急いでいるのか皆そんなに。
道の先の信号は赤で進みようがないのに、こちらは見えてなどいないと言うように詰めてくる。まぁ、知ってはいたがこうも詰められると疑問には思うよな……。真横に車いる方が嫌じゃないか?私は嫌なので気づけば入れるんだけど。ま、気づかないということだろう。別段急ぎのようじゃないし、ゆっくり待つとしよう。
「……、」
と思った矢先に、こちらの道に入ってくる大型車両がいた。
狭い道なのでこちらが動かないとアレは入りづらいかもしれない。それは本人が分かっている事だろうから、少しゆっくり来ているんだろう。
あれが曲がろうとするタイミングで入ればいいか。
「……」
大型車両が開けた隙間に入り込み、なんとか渋滞に合流する。
信号は青に変わっていたが、あまり進みはよくないらしい。
ま、この先には飲食店もあるし、ショッピングモールもあるし、さらに進んでいけば踏切があったりするので、混むのも仕方ない。
「……」
私もそのショッピングモールに用事があってきている。
その中に百円ショップがあるので。そこで色々と買いこんでおこうと思ったのだ。昨日掃除をしていたら鋏が出てきたんだけど(失くしていたやつ)、使い物にならなかったので新しいのを買おうと。ついでに買い物も頼まれたのでそれも済ませてしまおう。
「……」
車間距離を気にしながら、少しづつ進めていく。
そういえばあそこの百円ショップ、お菓子とかは置いてあっただろうか。
ちょっとなんとなく、飴が食べたい気分なので、その辺も買いたい。唐突にこういうのって食べたくなるんだけど、我が家は飴は買い置きしていないのだ。スナックとかチョコはあるんだけど。
「……」
コーラ味とかソーダ味あるだろうか……果物系はよく見るんだけど、その辺は案外なかったりするんだよな、まぁあそこに行けばあるしいいのだけど。
炭酸が飲めないので、コーラとかソーダとか飲んだ記憶はないが、飴とかグミは好きだったのでよく食べていた。果物系は逆にあまり食べなかった気がする。
「……」
行った先であるものを買えばいいんだけれど。
あそこまでたどり着くのに一体何分かかるんだろうな。
距離的には20分、30分くらいでつく距離ではあるんだが、たどり着きそうにもない。
「……」
道を少し外れたら、近道は出来なくもないんだが。
そこまでして急ぎたいわけじゃないし、あの道はあの道で狭いので運転しづらい。
ま、案外スムーズに行ったりすることもあるし。ゆっくり行こ。
お題:紅葉・鋏・コーラ