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人間関係に関する私的見解

作者: コルシカ

人間関係に関する私的考察


 いつの世もどこの場所でも悩ましいのは人間関係である。

 人間が複数で一つ所に集まるとなると、一人でも感情の動きが流動的なので、全員が全員気分よく過ごせるということはまずありえない。

 大学時代経営学の基礎としての「人間関係論」というものを学んだのだが、ガッチリ職場を管理して仕事を進めるよりも、多少人仕事の管理がアバウトでも、人間関係のよい職場の方が成果は上がるというものであった。

 まあ人間関係を重視しすぎると、サボタージュが起きてしまうので、その辺のさじ加減は大事になるのであるが。

 このIT社会においても、良くも悪くも人間が仕事を回しているし、家庭や友だち等広く楽しく悩ましいのは人間関係だ。


 (望ましい人間関係)

 人間関係の理想とは何であろう。例えば、ある人は「いつでも悩みを聞いてくれる人」というだろうし、反対に「自分の悩みをそっと後押ししてくれる人」というかもしれない。

 私は人間関係でもっとも重要なのは「距離感」なのではないか、と考えている。

 その「距離感」は人によって理想はそれぞれであるから、各人に合わせた距離感を取っていくことも大事だろう。

 一般に「君子交わること淡き水のごとし」という古語もあるのであるが、私としてはこの古語を理想と思っている。

 しかし、切迫した悩みや問題を抱える人は、頻繁に連絡をとってくるだろうし、とくに普通の日常を送っている人は年賀状一枚で連絡をすますことだってある。

 それは他人に限ったことではなく自分にもあてはまることなので、よくよく人との付き合いの濃度は大事にしなければならない。

 人はいつも機嫌がいい生き物ではなく、感情をもっているがゆえ、いままで機嫌が良くても数秒後には機嫌が悪くなったり、やる気がなくなったりという感情の起伏の激しい生き物である。

 そこで他人の感情の起伏と自分の感情の起伏の二つの波を合わせて接するのはなかなかの難易度であろう。

 中には他人のことを気にせずズカズカ話題を振ってくる人もいるが、話題を振られた方は迷惑な思いをすることが多かったりする。

 なので、考えすぎは良くないけれども、さりげなく話しかけるときには相手の感情を察し、TPOに応じた声掛けは有効なのかもしれない。

 こういう「察し」はコミュニケーションが得意な人ならほとんど無意識のうちにできているのだけれど、コミュ障の私などは逐一考えたり、話しかけるのをやめたりと苦労するので、やはり個人差はあると思う。


 (人間関係を妨げる感情)

 人間関係がぎくしゃくする場合多くは「嫉妬」という感情が働いている。

 人はどうしても他人と比べてしまう生き物なので(これをしなければ格段に生きやすくなる)、他人が自分のもっていないもの(容姿、お金、人気等)をもっていたりすると疎ましく感じてしまう。

 よくできた人、あるいは大人の品格をもつ人なんかは、他人の美点を称賛したり目標にできたりする余裕があるのであるが、たいていの人は羨ましさゆえにその人を「引きずり降ろして嫌な思いをさせてやりたい」と考えてしまう。

 職場等でこういう「できる人」を嫉視し、いじめたおすと当然のことながらその人は離職してしまい、のちにできる他の人が入社してくればまたいじめるので離職、嫉妬深い人だけが残るという悪循環に陥るであろう。立派なブラック企業の完成である。

 学生間で問題になっているいじめも嫉妬の一形態なのではないかと思う、

 つまりいじめのターゲットの学生を決めると徹底的に無視やいやがらせをして追い込む行為は「相手を下げて自分を上げる」という嫉妬の奇形であろう。

 自分の努力や行動を行わずして優越感に浸る。これは劣悪な偽物の自己実現にすぎず、組織でこれをやってくる人間は一番の害悪であろう。いじめを嗜好する人で、好かれたり仕事ができる人など寡聞にして知らない。

 いじめは傷害罪と同等であると私は考えるので、学校や職場でそれを受けた場合はしかるべき部署や先生に訴えるか、それでも効果がないときは全力で逃げるべきである。

 一つ所で悪意にさらされたら早晩鬱や希死念慮にさらされるので自殺してしまうケースがあとを絶たない。このようなつまらぬ組織、自分を大切にしてくれない組織からはすぐに逃げることである。


 (人間関係を円滑にするために)

 じつは人間関係に悩まないコツは他人との関わり合いではなく、自分自身の中にあったりする。

 最重要キーワードは「人と自分を比較しない」というものだ。

 自分はどうあがいても他人にはなれない。と同時に他人も自分になれないものだ。知らず知らずに他人を見て「なんで自分みたいにできないのだろう」「なんで自分はみんなみたいにできないのだろう」と比較をしてネガティブな感情になるのが人間関係のもつれである。

 人の能力や容姿、経済状況等はそれぞれの個性である。それを認めたうえでおおらかに尊重できれば人間関係はうまくいく。まあそれがどうしてもできないところに人の業の深さがあるのだろうが。

 もし大らかに他人の美点を褒める余裕が出てきたとき、自分にもいい感情が生まれポジティブになれる。

 つまり他人の美点、能力に感化され自分も向上できるということだ。

 しかし先述した比較による嫉妬に陥れば、せっかくのいいお手本をけなし、自分の向上心なしに相手を引きずり降ろすという最悪の結果になりうる。

 よい人は自分の周りから離れていき、見渡せば器の小さな嫉妬深い人間だけになっている。それは避けねばならない。

 そのためには心に余裕をもたねばならないとも述べたが、そのキーワードは「自分のコンディションを整える」という点にあるのではないか、と私は考えている。

 「コンディションを整える」とは当たり前のように聞こえるが、睡眠を七時間以上とる、おいしい(かといってジャンクフードや贅沢品ばかりでない)食事を腹八分食べる、休みの日や時間に趣味を楽しむ等、己の心身を休養させ充電することに他ならない。

 換言すれば、己を充実させることによって他人の個性を認める余裕を心の中につくっておくことであろう。

 そうなるとなんだか真言密教にある「宇宙の中に自分があり、自分の中に宇宙がある」というような教えみたいになってしまうのだが、やはり先人の教えは偉大である。

 己のコンディションを整えれば、他人との距離もおのずと実感できる。他人と比べたりしなくなる。結果他人の良いところを素直に自分に反映できる、というわけだ。


 (これからの人間関係)

 人と人とがどんどん接触することが少なくなっていく社会。これがアフターコロナの未来なのかもしれない。

 仕事はリモート勤務が推進され、買い物も店員の顔を見ないでネットで商品だけを吟味しワンクリックで自宅に届く。

 友だちともスマホのLINEで要件やおしゃべりをする。

 人間関係は過去に比べて希薄になっているのは事実である。

 それでも実際コミュニケーションをとるのは人と人なのであり、お互いを思いやってきもちよく仕事や学業、遊び等を進めていくことに変わりはない。

 スマホやパソコンのモニター越しに展開される人間関係だからこそバーチャルに感じてしまう部分は否めないが、その奥には生身の、感情をもった人間がいることを忘れてはならない。

 かつては(今も多いが)コールセンターで顔の見えない電話越しにオペレーターを怒鳴りつける人もいたが、ネットだからといってこのような悪習を踏襲すべきではなく、ネットリテラシーに則って、節度あるやりとりをすることが必要とされている。

 話題は変わるが、立場によって極端に人への接し方を変えるのもみっともない態度であろう。

 例えば飲食店等の店員に「お客様は神様」のごとく偉そうな態度を取る、等も好ましくない。

 金銭を支払っているからといって傲慢な態度や悪態をついていれば、その場の雰囲気は最悪である。店員のみならず、同席している友だち等の気分を害すること察して余りある。

 これは会社の上司だからといって飲み会で説教とか恫喝をする行為となんら変わらないのであって、「立場を利用したパワーハラスメント」である。

 学生での部活の先輩が年上だというだけで理不尽な行為を強要するのにも似ている。

 これらは明らかに自らの地位利用による権力駆使であるから、当然批判を受けて当然の行いである。

 ミスや気になる点は、冷静に指摘すればよいのであって、気晴らしに怒鳴りつけたりパワハラをしていれば早晩人間関係は崩壊するし、そういった悪事は本人に返ってくること必至である。

 いろいろな人間関係を考察してみて思うことは、結局お互いに思いやりの心をもつ心の余裕が必要だということである。

 そのためには他人と比較しない、自分のコンディションを整える、地位利用しない等、それぞれ己の心身を耕す必要がある、ということだ。

 昨今戦争や地球環境問題、経済格差等グローバルな問題が山積している現状も、先述した人間関係の改善策で、前向きな問題解決が可能なのではないかと改めて思った次第である。

                  終


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