2.ギルドへ!
小林太郎が空を飛んで街へと近づくが少し離れた場所に降り立つ。
空から近づけば服装も相まって不審者極まりない。
「だいじょうぶかなぁ。いきなり刺されないかな」
何故か小林太郎は気弱な設定になっている。私の性格が透けてしまう。
まぁ、太郎という名前で不良というのも珍しい気はするが。
逆に現在だと太郎という名前のせいで不良になるかもしれないな。
「とりあえず行ってみよう」
小林太郎は徒歩で街へと近づく。いきなり矛盾して申し訳ないが彼がいるのは草原だから隠れる場所など無かった。
「こんにちは・・・」
小林太郎は街へと入るための関所にて受付に声をかける。相手は憮然とした表情の中年の男性だ。頭は禿げている。
「なにか用か?」
「いえ、街に入るにはどうしたらいいかなって」
「ただ街に入るなら勝手にしな。身分証が欲しけりゃギルドへ行け」
「ありがとうございます」
小林太郎は怯えながらもすんなりと街へと入る。本当は通行手形とか必要としたいところだが、牢屋にいきなり入るというのもいかがなものか。
小林太郎はこの世界において無一文だ。生き抜くためにお金は必須。彼はまずギルドへと足を運ぶことにした。
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この街で一番大きい建物がギルドだ。酒場が併設されているこの建物には屈強な男性が多く出入している。
西部劇に出てきそうな両開きの扉を開くと一斉に視線が小林太郎に向く。大抵の場合は見知った顔であるのですぐに視線は外される。しかし、今回に限ってはひ弱そうな見たことのない服装の青年であるので一定の視線が小林太郎に留まる。
彼はヒュッと息を飲んだ。
小林太郎は目線を合わさないように受付へと向かう。
「すみません。ギルドに登録したいのですが、可能ですか?」
受付の女性は黒の髪の毛を2つに結んだ小柄な女性だ。彼女はにこやかに小林太郎に返事をする。
「はい。可能ですよ。ではこちらに名前をお願いします」
小林太郎の前に差し出された書類は彼には日本語に見える。新しい言語を創りだせるほど私は賢くない。
彼はフルネームを漢字で書くことを躊躇った結果、カタカナでタローと記して女性に返す。
「タロー様ですね。ではこちらのカードに血をお願いします」
小林太郎改めタローは血という言葉に慄く。しかし、差し出された針のついた装置に指を差しだしてゆっくりと指を刺す。
痛みがした瞬間に指を引き抜くと針の先に血が一滴ついている。タローは針を反対にしてカードへと血を振り落とした。
「ありがとうございます。こちらで登録は完了です。登録料は銅貨3枚になりますが、今お支払いしますか?それともクエスト報酬から払いますか?」
現在のタローはまったくの無一文だ。よって取れる選択肢は決まっている。
「報酬からでお願いします」
「かしこまりました。では、こちらのクエストからお選びください」
タローの前に3種類のクエストが用意される。
・薬草の納品 納品量によって報酬変化
・スライムコアの納品 納品量・キズの有無で報酬変化
・雑草刈り 報酬銅貨10枚
タローは少しの間思案する。
薬草の納品は見分けることが困難だ。
雑草刈りは範囲が指定されておらず、労力に見合わない可能性がある。
タローはスライムコアの納品を選んだ。
「これでおねがいします」
「かしこまりました。銅貨3枚の目安はコア3個、もしくは完全なコア1個となります。身分証は納品完了で交換となります。では行ってらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
タローは一礼をしてギルドを出た。
こうして彼は初めてのクエストへと向かった。