ギター
ジャーン
ジャーン
今日は我ながらいい出来だ。いつもよりも、音がきれいに聞こえる。
でも私はもうギターを始めて3年目だ。
それでこれは遅すぎる。
fコードも引けない。ドレミもわからん。なぜギターを続けてこれたのかさえ分からない。
でも、続けてさえいれば、いつかバンドが組めるから。
私がリードギターをやってみんなが私と音を合わせてくる...。
なんと美しい妄想だろう。
そのために練習は続けなくてはならない。そう信じている。
キュイーン。
チョーキングの音だ。
チョーキングだって、つかえるけど活用はできない。
でも、チョーキングだけはきれいになる。だから、好きだ。
でも、どうしてだろう。私は一日3時間ほど練習しているのに。
うまくなろうとする気配がない。やることはわかるのだ。でも、
いざ弾くと、切れる。
ギュイーン
グリッサンドの音だ。
これは本当に簡単なはずなのだ。
でも、録音して聞いてみてもベンチャーズのテケテケにしか聞こえない。
もう、めちゃくちゃに弾くしかないのだろうか。
そうしている間だけ。
ギタリストの気分になって、気持ちよく感じる。
私はスウ、と息を吸って、ギターを構えた。
ジャーン
ジャーン
ジャーン
バン。
自分のギターの音をかき消す大きな音。
それに続き意識も遠のいた。
と思ったのだが、意識が遠のくのは本当に一瞬で、ただ目の前が白いだけだった。
なんだここは。
「誰か!」
大きな声で叫んでも誰も来ない。お母さん?お父さん?
私の妹は?
家族は、どこ?
私は、目を閉じているのかもしれない。
でもやはりそれは見えているのだ。
いや聞こえている。
素晴らしいドラムの音が。
「え?」
「うわあ!」
「ごめんなさい!私目が悪くて...」
ん?
なんだこれは。