現実世界
ジャーン
ジャーン
ジャーン
私の朝の休息を妨げる音は、歪んだギターの音だった。
(またあそこの娘は...)
そう思い、文句を言いに隣にある彼女の家に行こうとした。
彼女は泉川海という名前のギタリストだ。
ギタリストと言っても、わたしには、彼女が弾いているような曲..、ロックには疎い。
だから騒音にしか聞こえない。
彼女がこの家の隣に越してきたのはまだ一週間にも満たない。
一日目から、うるさい音をかき鳴らしていた。
だから今日こそは注意するのだ。
でも、面倒くさい。なぜ私があの人のために寒い外に出なきゃいけないのか。
私が我慢したほうがましなのではないのか。
しかも、歪んでいても音楽だ。私が好きで音楽を聴いていると思えばいいのではないのか。
そう思い彼は隣の家に行くのをやめた。
ジャーン
ジャーン
ジャーン
だめだ。
このギター、騒音にしか聞こえない
いくらこれを音楽だと認識しようとしても、音楽のイメージが浮かんでくるたびに、エフェクターを変えて、より騒音に近い音に変えてきている。
もはや嫌がらせに近い。
やはり注意するしかない、そう思い重い腰を上げた。
大声を張り上げていった
「泉川さん!」
「川口さん!助けてください!海が...」
拍子抜けした。
注意しようとしてきたのにいきなり助けを求められるとは何事か。
生みの母親は泣いている。
「ど、どうしたんですか!何があったのです」
「海が...、海が死んでいるんです!」
なんだって。じゃあ。
じゃあ、私がここに来るまでずっと聞こえていたギターの音は何だったんだ。