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07・選択


「ちょっと会議したいんだけど、いい?」


コルネさんのその一言で晩御飯の後に全員リビングに集まってこれからの話し合いをすることになった。

エドガーくんも晩御飯前に起きてきて今はそこで大あくびしている。


「さて、現状をまとめようか」


コルネさんは紙を取り出して、そこに文字を書き始めた。


「とりあえず、エルちゃんに確認ね」


「あ、うん」


「君の夢に出て来た悪魔が、君を花嫁だと、次の誕生日に迎えに行くって言ってたんだよね」


「…、そうだよ」


私は頷く。それで間違いない。


「誕生日はいつ?」


「…、半年ちょっと…」


「…後半年ちょいだね。とりあえずここまでには悪魔を撃退する策を練りたいね」


コルネさんが私の言ったことを紙に書き留めていく。

よく見ると報告書みたいなものだ。


「あの、僕たちが来たことで時期を早めたりとかあるんじゃないですか?」


エリックくんが手を挙げて意見した。

…これは私も少し心配していたことだ。


「それはねぇ」


するとすかさずエドガーくんが口を挟んだ。


「たぶん、次の誕生日に迎えに行くのに意味があるからだ。嫁にしてえだけならとっとと連れ去ってる」


「意味…?」


私は首を傾げた。


「不可解なのは呪いか…」


ギンくんがそう呟くとビシッとエドガーくんが私を、正確には私の肩を指差した。


「ソレ、二重にかかってる」


「えっ、二重?」


思わず聞き返してしまった。

つまり、呪いはひとつじゃないってことだ。


「まず、魂を追跡する呪い。ソレは例えばおまえが死んで生まれ変わってもおまえだって術者がわかるよーにする呪いだ。つまり悪魔はおまえの前世から知り合いかもしんねえ」


「もうひとつは…?」


「魔力を身体に蓄積する呪い。周りの魔力を吸っておまえの身体に溜め込んでる」


「……なるほどな」


ギンくんが納得した様子で呟く、コルネさんもエリックくんも何か気づいた様子だけど私には何がなんだか分からなかった。


「エルは何で悪魔がわざわざ人間を乗っ取ったり操るか知ってるか?」


「ううん、わからない…」


私は首を横に振った。

悪魔に取り憑かれたみたいな話はたまに聞くけど、私はその辺には全く詳しくはない。


「契約者がいなければ悪魔はこっちに来ても魔力を使えないからですよ。魔術師は身体に生まれ持った魔力を使いますけど、悪魔は周りの魔力を活用します。魔界は魔力が溢れてますけど人間界には魔力は少なくて悪魔には不便なんです」


エリックくんが説明してくれた、そしてそれにエドガーくんが続ける。


「契約者がいれば契約者の魔力が使えるけどいなきゃ使えねーから適当な人間を乗っ取ったりしてそいつの魔力を使う。神職者でもなきゃ魔力は身体に持ってるもんだしな。最も魔力の強い魔術師なんかは乗っ取ったりできねーから大したこともできねえ」


「そうなんだ……」


「悪魔の魔力=周りの魔力を吸い上げる力ってワケだ。魔物も根本は一緒だから魔力を求めて人間に寄って来て危害を加える」


話が難しいけど纏めると、空気中に魔力が少ないから悪魔は人間を乗っ取ったり、契約しないと人間界で魔法が使えない。

人間界にいる魔物(そもそも魔界からどういうわけか湧いてきてる)は空気中や植物のの魔力で生きるのがギリギリで強くなるためには共食いするしかない。

魔力に反応するから魔力を持っている人間に近づいて来たり襲いかかったりする、という話だった。


「つまり今のエルは相当魔力を溜め込んでるってわけか…」


ギンくんが深刻そうに呟いた。

魔物が集まってくるということは私が呪いが原因で魔力を遠くからでも分かるくらい溜め込んでいるかららしい。


「そ。それを使うには契約だけど契約は契り、つまり結婚でもいいわけ…というかそっちのが都合が良い」


エドガーくんがそう言った。

魔術師の契約は悪魔を従属させるものだけど、結婚になると立場は同等になるらしい。


「大げさな話、人間界で悪魔が暴れられる魔力を作るのが呪いの目的の可能性が高いのかあ……、日にちが指定されてるのも目的の魔力量がたまりきるのがその日だから……何年もかかるのも空気中の魔力は少ないし…」


コルネさんは呟きながらカリカリと紙にメモをしていく。

私は悪魔の魔力タンクってこと?


「それがそうならエルだけの問題ではなくなって来たな」


ギンくんの言うことは私でもわかる。

だって悪魔が人間界で好き勝手暴れられることになったら大変だ。


「あの、私の中の魔力を出すって出来ないのかな」


「んー…だめですね。呪いはかけた本人にしかとけませんし解かないと魔力は貯めたままです」


私の提案はエリックくんにすぐに棄却されてしまった。


「契約…、結婚を拒否するとしてもこのままではお姉さんの身体が持たないかもしれませんし、向こうもどんな手を使ってくるか…」


「魔力を取り出すには呪いをかけた悪魔を倒すか、悪魔と契約するかしないと……だからやっぱり、倒すしかないなあ」


コルネさんがため息を吐く。

契約するって言うのは正直論外だ。


「あの、呪いってどんなのかって見たらわかるものなの?」


「まあ!俺は!天才だからな!!!!!」


私の質問にエドガーくんが胸を張る。

えっへん、って感じだ。


「まあ神の子だけあって敏感なんじゃないですか?」


「聞けよ」


エリックくんが冷たく言い放ったのにエドガーくんがイラッとした様子で突っ込んだ。

とことん相性が悪いらしい。


「エドガー三人が教会に行った後出てきて図書館行くって言ってたからめちゃくちゃ調べたんじゃない?」


「バラすなよ!かっこ悪いだろ!!つか魔術とか呪いって専門じゃねえーし…!」


クスッとコルネさんが笑うとエドガーくんが顔を真っ赤にした。


「その、に、二重にかかってるから変だと思ったんだよ……それだけは気づいた」


照れてる様子でエドガーくんが頭を掻く。

それを見て微笑ましそうにしていたコルネさんだけど、すぐに目を伏せた。


「どっちにしろ今はどうしようもないねえ……」


「とりあえずもう少し調べたほうがいいな。クロードが封印した悪魔についても気になる。それと…あの教会」


「え?教会?」


思わずギンくんに私は聞き返した。

教会が怪しいと思っているの?


「何か妙なモノを感じる。調べたほうがいい」


「……え、でもフロスト神父はいい人だよ…?」


ギンくんは首を横に振る。


「教会自体に何か妙な感じがした。まだあそこの神父の人柄は俺には分からないが、土地自体がおかしいのかもしれないし、何か拭えない違和感がある」


私は何にも詳しくないので何もわからないのは当然だ。

ギンくんがそう言うのならそうなんだろう。


「じゃあしばらくはみんな別行動かなあ…、半年しかないし、効率的にも。呪いについてと、あの教会周辺についてと…街で聞き込みもしたいね。一人だけエルちゃんと常に一緒にいる人を決めようか。交代でも夜番もあって面倒だし。エルちゃん、誰がいい?」


「えっ」


「話しやすかった人でも仲良くなりたい人でもいいよ」


つまり護衛役を一人決めようということだった。

コルネさんの言葉に、みんなの視線が私に集中した。


私が決めるの…!?



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