第166話
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■side:霧島 アリス
日本屈指のLEGEND会場。
世界大会などの会場にもなり、高校生大会でも使用される巨大施設。
そこを貸切ってU-18女子日本代表の選手や関係者が集まっての会議が行われていた。
幸い日本の世界大会予選は後半スタートだ。
だからこそ時間的な余裕もあり、こうして時間をかけて調整も出来た訳で。
「さて、それぞれ思うことや感じたこともあるだろう。でもね、その―――」
前で演説をしているのはU-18女子日本代表監督である芳川監督だ。
選考では色々あったが、結局は大きく変化せずといったメンバーとなった。
まずは、福田・宝月・近藤のアイドル【Twinkle star】の3人。
今回、宝月心愛がメンバー入りをした。
冬大会の最終の突撃など、思い切りの良い動きで勝利に貢献し続けたことが評価された形らしい。
【Arcadia】の佐藤も決勝戦の撃ち合いなど評価されての継続だ。
大会で活躍したと言えば新入りである六角・国友もそうだろう。
2人とも非常に堅実的な戦いで常に前線を押し上げる動きが高評価だったようで。
扱いにくいビーム砲を器用に操るオンリーワンの能力で今年も代表となった温井もいる。
あとは、ほぼお決まりのメンバー。
琵琶湖女子からは、1年の頃から頑張ってきた宮本・三峰・安田。
U-15で同じ、そして転校組でもある笠井・黒澤・長野。
付き合いが長くなった大谷・南。
ライバルとして戦い続けてきた谷町・大野・鈴木・一条・三島。
必死に食らいついてくる後輩の渋谷・岡部・鳥安。
現状、最高クラスのメンバーが集まる結果となった今年の日本代表。
「って思うんだけど」
「それをお猫様にぜひとも言ってやって」
雑に話を振ると三島冴が、盛大なため息を吐いた。
私も噂で聞いたことがある。
南保などの元代表の一部が代表落ちに納得できないと監督に抗議したらしい。
その負けん気は素晴らしいと思うが、それを己の自己研鑽ではなく他人にぶつけている時点で、まあお察しである。
結局、黒澤や大野が勝負で決着をつけようと誘ってボコボコにしたそうな。
……惜しい。
その場に居れば、ぜひそれに参加したかった。
一度ぐらいアレの顔面に弾をぶち込んで見たかったのに。
世界大会と言えば、予選から面白い試合が多い。
無事にアメリカ代表となったシャーリーは、ブースターに振り回されるような大雑把な制御が減ってきていた。
大型ブレードの振りも、単純な一撃だけではない身体全体を使った動きが出来るようになっている。
ブレードで言えば、黄若晴もかなりキレのある良い動きをしていたわね。
前世で見かけた某国の特殊部隊に負けないレベルかも。
……あ~嫌なこと思い出した。
アイツら、大雨の密林っていう最悪な環境で山を2つ超えてもまだ追いかけてきてて、ホント迷惑だったなぁ。
結局、国境まで引き連れる訳にも行かず、全滅させるのに3日もかかって大変だった。
あの時、味方のキャンプ地で食べたヘビは―――どうやら忘れてしまったみたい。
少し思う所もあるけれど、こんな平和な世の中で前世の記憶は必要ないってことなのかもね。
ああ、そう言えばバネッサも何か言ってたような。
スペインとは勝ち続けて行けばぶつかるだろうから、その時に叩けばいいや。
正直、その程度にしか思ってないってのもあるけども。
等と色々考えていたらみんながざわめきだした。
ふと見ると予選最初にぶつかるネパール戦のメンバー表が出ている。
ま~、マスコミが騒ぎそうなメンバーだこと。
でも言い方はアレだけど、ネパール相手なら色々と試せる。
だからこそのメンバー表なのでしょう。
予想通りというか、何と言うか。
監督がメンバー表に関しての説明をしている。
簡単に言えば「実力を示した奴は、今後も出場を検討する」という話だ。
そう言われてしまえば、負けず嫌いの集まりだけあって自然とやる気が出ているようね。
10枠しかないものを奪い合う訳だから当然と言えば当然なのだけど。
■side:谷町 香織
初戦のメンバー発表を見ながら事前に監督達と話をしていたことを思い出す。
最初はアリスがリーダーをやる予定だった。
しかしアリス本人が「何のためにリーダーやってきたのよ」と言い出した。
別にこのためにリーダーをやっていた訳ではないんだけど……。
気づけばリーダーを任されることが多くなり、自然とこの立場になっただけの話で。
なので今回もそうしてゆるっとした感じでリーダーを任された。
メンバーに関しても、正直琵琶湖女子が強すぎて枠が埋まることが問題だった。
これを解消するためにというか、何とかしようと琵琶湖女子以外のメンバーは積極的に居残り練習をする。
それが良かったのか、監督もそれを危惧したのか、チャンスを与えようということになった。
しかしこれは今回のメンバーだけの話ではない。
予選中は全員お試しという状態で検討することになる。
だからこそ、私も気が抜けない。
リーダーになった私がレギュラー落ちしてベンチの常連では示しがつかない。
「ねえ、香織。あとで練習付き合ってくれない?」
「ああ、良いね。私ももう少し動きの確認したかったし」
同じく危機感を感じているだろう恋が声をかけてきた。
気持ちはわかる。
ある意味、世界大会では仲間でありライバルだったのだ。
そんな相手に置いて行かれるなんて御免である。
いつまでも琵琶湖女子だけなどと言わせない。
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