コミカライズ化記念!のオマケ
コミカライズ化記念にちょっとした小話を書いてみました。
■宣伝
2024/09/27 Webコミックガンマ様にてコミカライズ化が決定しました!
イラスト担当は凪庵さんです。
漫画:凪庵
キャラクター表現に定評のある、実力派!
代表作に『彼女がフラグをおられたら』(講談社)
『アイドルマスター ミリオンライブ!ライブリーフラワーズ』(一迅社)
「萌え豚転生」(小社)など
現在1話まで無料公開中!
詳細は下記Webコミックガンマ様のサイトにて
https://webcomicgamma.takeshobo.co.jp/manga/onnayouhei/
■side:南 京子
「ホント、久しぶりね」
お互いにプロになったり会社を経営したり教師になったり。
まあ色々あるせいで、昔のように気軽に会えるような状況じゃない。
でもみんなこうして時間を作って定期的に会うようにしていた。
まあ、簡単に言えば
―――同窓会というやつである
「そう言えばアリスは?」
「今、空港からこっちにタクシーで向かってるそうですよ。どうも道が混雑しているようで」
「仕方がありませんわ。試合終了直後のヨーロッパからの強行軍ですもの」
「そだね。むしろ1時間遅れぐらいで済んでる時点で奇跡だよ」
「その本人から『先にやってて』だってさ」
「なら、料理を運んで貰うね~?」
お互いに近況を話しながら、運ばれてくる鍋に具材を投入していく。
そうして会話をしていく中で、やはり話題になるのはまだこの場に居ない人間だ。
「そういやあの時からかな。コイツ本当に特殊部隊のエースなんじゃないかって思ったの」
「いつの話よ?」
「ほら、U-18女子日本代表の1年目の時にやった紅白戦の後のアレ!」
「あー、何かあったねー」
「何かあったんですか?」
「アレでしょ?アリスをどうやって倒すかって話からの流れのやつ」
「あったね~、そういやそんなの」
「え?なになに?何の話?」
「そうか。あの時のメンバーしか知らないのか」
「よし、ならば京子に任せよう」
「何で急に私なのよ」
相変わらずいい加減な晴香の言動に苦笑しつつも、私は当時を思い出しながら語る。
あれはそう、ちょうどU-18女子日本代表の1年目の紅白戦の後の話だ。
―――――――
―――――
-――
紅白戦。
アリスがひたすら大暴れしたあの試合の後。
みんなが愚痴を言い出したのがきっかけだった。
「くっそ~、やりたい放題過ぎるでしょ~!」
千恵美がアリスの自由さに思わずそう口にした。
そこから晴香や晶までもが口を揃えて「あれはもう災害だ」と言い出す。
本来ならそこで終わっていた話なのだ。
しかしそこに運悪く恋が入ってきてしまった。
「一度で良いからアリスを何とかしてみたい」
その言葉から「どうすれば一撃決められるのか?」という議論が開始された。
いつの間にか相手側だった香織や冴まで巻き込んだ話し合いに発展。
「いっそ複数人で行けば」
という提案からアリス1人に対して「大谷 晴香」「大野 晶」「一条 恋」の3人で戦えば行けるのでは?等と言う意見が採用された。
その話に堀川さんは「むしろあと2人ぐらい足さんでもええんか?」と笑う。
それが3人のプライドを刺激したことで、この変則マッチが実現することとなる。
完全に巻き込まれたアリスは「……何でそんな話に」とため息を吐いていた。
1人対3人の変則マッチは相手側が全員倒されたら負けであり司令塔攻撃などは無い。
今思えば、このルールって完全にアリス有利な条件なのよね。
そして試合は始まる。
崩壊した都市内部の戦闘ステージでの試合が始まると3人は分散することなくまとまって動いている。
しかも異常に狙撃を警戒するかのような動きだ。
すると3分もしないうちに彼女らの遠くの高台に姿を現したアリスが、これ見よがしにスナイパーライフルを地面に置いて去っていった。
『お前ら相手に狙撃銃なんて使わねぇよ!!』という盛大なアピールである。
これにキレた3人がアリスが居た場所へと走る。
特に恋は、あの重装備でよく2人に追いつけるものだ。
左右が小さなビルの瓦礫に挟まれた狭い通路。
そこでアリスの姿を見かけた3人がそれぞれ正面と左右に分かれて相手の出方を窺おうとして―――
カンッ!
唐突に投げ込まれたスモークグレネードに思わず3人は投げ込まれた方を反射的に銃撃するも、スグにそれを止めて後ろに下がろうと―――
―――バックアタックキル!
◆バックアタックキル
X U-18A:一条 恋
〇 U-18B:霧島 アリス
煙の中で何が起こったのか。
正直、当事者もわからなかったらしい。
それを外から見ていた私達は、もっと意味不明だったけど。
2人はその通知のみで先ほど恋が居た場所に向けて発砲。
しかし弾は空しく瓦礫に命中するのみ。
状況不利と見た晶が、煙の中から外に飛び出し、スグに振り返って煙の方向へと銃を向けた瞬間―――
ふと何かの影が上を通過したことに気づいて晶が上を向く。
そこには―――
「は?」
間抜けな声と共に晶がやられて倒れる。
―――バックアタックキル!
◆バックアタックキル
X U-18A:大野 晶
〇 U-18B:霧島 アリス
上から降ってきた。
そうとしか言いようがないほど高い位置からアリスが彼女のギリギリ後ろに落ちてきたのだ。
そして着地しながら強引に身体を捻っての背後コアへのナイフアタック。
あまりの一瞬の出来事に反応しきれず驚きの表情のまま倒れた晶。
誰も彼女を笑える者など居ない。
スモークが晴れて周囲を警戒したままだった晴香は、一瞬で2人を倒して目の前に堂々と立っているアリスを難しい顔をして見ていた。
そこから長いようで短い3秒ほどの睨み合い。
しかしそれは唐突に終わりを告げる。
アリスが晴香に向かって走り出した瞬間。
「パス!」
少しだけ強めにそう言いながら腰にあったマグナムを軽く放物線を描くように投げた。
現状唯一の飛び道具を急に投げられた晴香は、思わず片手を銃から放して受け止めようとしてしまう。
しかしギリギリの所でそれが何を意味するかに気づいて素早く手を銃に戻して引き金を引いた。
流石に接近戦に持ち込むには距離がある。
誰もがそう感じ、アリスの仕掛けが不発だったと思った時。
私も「霧島アリス」という存在に初めて恐怖した。
姿勢を限りなく低くしながらも晴香に向かって駆け抜けるアリス。
だがそれに対してアサルトライフルが火を噴いた。
もちろん晴香が万全の体勢で無かったのもあるかもしれない。
しかし、それでも―――
カンッ!
キンッ!
ガンッ!
アサルトライフルから逃れるように、しかしそれでも可能な限り最短距離を進む。
そして自分に当たるであろう弾丸を数発ほど、明らかにナイフで弾いたのだ。
それだけでも驚きを通り越すかのような出来事なのに、更にそこから晴香に迫ったアリスは、一瞬で……しかも片手で晴香を投げ飛ばした。
何をしたのか、スロー再生でもよくわからなかった。
それほどまでに素早い投げ。
女子とはいえ装備でかなり重量のある相手をサポートがあるからと言っても同じ女子が軽々と、しかも片手で投げ飛ばすとは。
投げ飛ばされた晴香も「気づいたら寝そべってて空を見てた」と当時言っていたほどだ。
その倒れた晴香にナイフを突き立てて終了。
こうしてアリスを倒そうと試みた3人は、それが如何に困難であるかをその場に居た全員に教える結果となる。
のちに「アリスチャレンジ」と呼ばれ何度か挑戦者が現れたゲームだったが、結局誰もクリアは出来なかった。
しかし不思議なもので、どこからともなく広まったこの挑戦は、今ではU-18女子のリーダーに就任した子が実力を示すために挑戦する伝統になっているそうな。
「へ~、そんなことあったんだ~」
などと呑気に言っているメンバーには理解出来ないだろう。
本当に当時はこれで数日ほど雰囲気がギスギスして大変だったのだから。
そんな昔の話で盛り上がっていると
「お待たせ」
という言葉と共に話題の主役がやってくる。
高級ブランドスーツを着た上品さがあるお金持ちのお嬢様。
そんな雰囲気のアリスが後ろに立っていた。
みんなそれなりの年齢になり、結婚している連中まで居てそろそろ子供という話まで出ている私達の中で、ただ1人当時の姿のまま。
一人だけ老化しない姿に「インチキだ」と皆で声を上げて抗議するのも恒例行事となっている。
まあ、言いたいことや聞きたいこと、色々あると思うけど。
―――まずは皆で集まったことを祝して、乾杯ッ!!!
という訳でちょっとした話を記念として書いてみました。
需要があれば追加も検討します。
まだ公開したてなので正式な販売などの段階では無く、無料公開の段階です。
しかし皆様の応援によってコミカライズ化がどこまで継続するかが決まります。
ですので応援よろしくお願い致します。
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