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第154話 VS東京大神戦(3年目):決勝戦前編






■side:東京私立大神高等学校1年 稲富愛






 試合が始まった。

 予定通り私は、中央の戦いに参加する。


 今回、基本的に上3・下3・中央4という鉄板配置だ。

 だけどウチの場合は少し事情が違う。

 中央の4人のウチ、後方から支援する鈴木先輩と遊撃である鳥安先輩が、中央としてカウントされているからだ。

 実質的には、谷町リーダーと私の2人で中央を止める必要がある。

 特にリーダーには攻撃が集中しやすいのに谷町先輩は、中央最前列に陣取る。

 これをサポートするのが私の仕事。

 そして後方支援の2人の先輩方にも弾薬供給等をすることもある。

 かなり難しい役割だが、1年の私がそれを任されたのだという自信もある。


 そんなことを考えているとスグに中央で相手とぶつかる。

 何度も試合映像を見てきたからこそ、スグに判別出来た。

 確か宮本と三峰の2人だったか。

 

 宮本が距離を詰めながらリーダーに攻撃を仕掛ける。

 それを後方から三峰が支援するという形らしい。

 スグに状況を全体に知らせつつ、宮本に攻撃を仕掛けようとして三峰の投擲モーションが見えた。

 瞬間的に後ろに大きくブースターを使って後退することで、爆発を回避する。

 そしてまた前に出ると既に2人がかりでリーダーを攻撃しているのが見えて思わず遠距離からマシンガンを撃ちつつ距離を詰める。


 私が援護距離に入った瞬間、相手側が下がる素振りを見せた。

 その瞬間、支援装備を物陰に設置すべく動こうとして―――


「―――稲富ィ!」


 誰かの声がしたので、咄嗟に持っていた大き目の支援ポットを持ったまま振り向いた瞬間、持っていたポットに大きな衝撃が加わり後ろに倒れそうになる。

 それを何とか踏ん張ろうとしている最中に視界に映ったのはこちらに銃を構える三峰の姿。

 ヤバイと思った時、銃声と共に三峰のライフルが吹き飛ばされていくのが見えたと同時に、耐えきれなくなった私は後ろに倒れる。

 そしてスグにポットを確認して……ゾッとした。

 片手斧が綺麗に刺さっていたのだ。

 もし誰かが声をかけてくれなければ、もしポットを持っていなければ……確実に頭に当たっていただろうコースだ。

 一部の投擲武器による攻撃が許可されて以降、注意しろと散々言われてきたことなのに。


「稲富ィ!お前気が抜けてるのかッ!!決勝ではどんな時でも気を抜くなって言っただろッ!!」


 通信越しだけではない、生の声まで聞こえてきたので上を見上げると高台で隠れながら狙撃用ライフルに弾を込めている鳥安先輩の姿。

 しまった、やってしまったという焦りが生まれる。

 決勝戦では、先輩達が口煩く『ほんの少しでも気を抜けばやられる』と言い続けていた。

 相手を考えればそれが大げさな話ではないと理解していたはずなのに―――


 起き上がりながら通信を使って謝罪しようとして―――


 銃声と共に右肩を撃ち抜かれ、衝撃と共に装甲が吹き飛ばされ私自身もそのまま後ろに倒れる。

 一体何が起きたのか。

 何とか頭だけ上げると正面の高台にブレイカーの姿がチラっと見えた。


「―――え……何で?、わ、たし?」


 正直理解が出来ない。

 狙うなら谷町リーダーも居たはずだ。

 他にも全体的に撃ち合いをしていたから、他にも狙えただろう。

 なのにどうしてあの瞬間に、わざわざ私を狙ったの?

 偶然私に当たったならまだ理解も出来たかもしれない。

 でもあれは―――明確に私を狙った一撃だった。

 完全にこちらを見ていたからだ。

 しっかりこちらにライフルを構えていたからだ。

 いきなり撃たれたショックからか、相手の意味不明な狙撃優先度に頭の処理が追い付かない。


 だが次の瞬間、物凄い力に引っ張られるように、地面を抉りながらスグ後ろの物陰に引っ張り込まれた。

 どうやら鈴木先輩が私を追撃が来る前に、物陰まで避難させてくれたようだ。

 ほっぺたを先輩に叩かれ何か言われている気がするが、ハッキリしない。






■side:東京私立大神高等学校3年 谷町 香織






「稲富の奴、意識がハッキリしてねぇぞ!」


 開始直後に嫌な通信が入る。

 たまに居るのだ。

 状況に混乱して一時的な意識障害が出てしまう子が。


「桃香と明美の2人で稲富をスタート位置に投げ込んで。こっちでも申請出しておく。―――水橋ッ!少しだけ中央援護しろッ!」


 相手の返事を聞きながら、水橋が来るまでに僅かな牽制を入れながら様子を見てますよって感じをアピールして、相手に無理な侵攻をさせないようにする。

 スタート位置に運ばれた稲富は、そのままベンチ側で回収されて選手交代となる。

 特に何かしら起これば、ベンチに設置されている簡易診療ベッドで寝かされて全身診断を受けることになる。

 もしそこで何かあれば、そのままベッドごと外部に排出され、待機している医師などの診断を受けながら救急車で運ばれることになるのだが。

 とりあえず何かあろうが無かろうが、今の稲富は戦力外でしかない。



*選手交代:東京私立大神高等学校

 IN

 3年:小神 紅華


 OUT

 1年:稲富 愛



 メンバー交代が通知され、早々の交代に観客からは少しざわついた雰囲気があったものの、スグに応援によってかき消される。


「再度全員に通達ッ!相手の気迫に呑まれるなッ!!私達は今日この日、勝つために努力してきたことを忘れるなッ!!」


「―――了解ッ!」


「返事が小さいッ!!」


「了解ッ!!」


「まだまだッ!!返事はッ!?」


「了解ッ!!!」


「よしッ!!その気迫で相手を呑み込めッ!!押し潰せッ!!勝つのは私達だッ!!!」


 気迫の篭った良い返事を聞きながら、陣形を確認しつつ相手の狙いを考える。

 今年こそは私達が勝つ。

 絶対にだ。


「―――まずは、優勢を取ってアリスを引き摺り出す所からかなぁ~」






*誤字脱字などは感想もしくは修正機能からお知らせ頂けると幸いです。

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