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第92話

■江里口 華:東京大神3年。片手盾を使いこなす防御型アタッカーだったが、改定に伴う影響でストライカーに転向。

■石井 美羽:東京大神3年。基本に忠実なアタッカー。

■田川 秋:東京大神3年。高機動重装甲ストライカーが登場した初期から運用に成功した数少ない選手。安田の地雷盾という画期的な防御に巻き込まれた子。







■side:東京私立大神高等学校1年 鳥安 明美






 ミーティングルームは、騒然としていた。

 そりゃそうだろう。

 あんなもの見せられて大人しく頷いているなど出来る訳がない。



 決勝トーナメント:第一試合

 熊本私立天城女子高等学校 VS 滋賀私立琵琶湖スポーツ女子学園



 私達は、御神女子との試合の準備で見ていなかった、その試合。

 天城が勝つとは思っていなかった。

 正直、あそこは運良く勝ち上がってきただけってのが大半の意見だし、私自身もそう思う。

 だから琵琶湖女子が勝ったことに驚きはない。


 問題なのは、その勝ち方だよね。

 何、あの動き。

 前に見た時とは比べものにならないほど進化してる。

 去年に戦ったU-18の選考会チームよりもヤバイ。


 まずリーダーが最前線でミサイル攻撃って何?

 LEGENDの常識ぶっ飛んでるんですけど?

 しかも新型ミサイルってあんなのなのか。

 ああいうのは少し厄介だわ。

 ミサイラーってその場で足を止めて戦わなきゃならないから、良いカモだったのになぁ。

 あれじゃ動き回りながら戦えてしまう。

 更に言えば、あの足は何?

 ローラー?

 ブースター装備のストライカー並みに動いてるじゃない。

 あんな新商品あったかなぁ。


「全員、静かに!」


 色々考えていると谷町先輩が声をあげた。

 あの人も大変だよね、2年生リーダーとか。

 ホント、リーダーなんてやりたくない。


「色々と衝撃的だったのは解ります。これからその対策が必要なことも」


 空中に特大画面が出てきてデータ類が表示される。


「明らかに前の琵琶湖女子とは違う。次の試合は後の事なんて考えず、決勝戦のつもりで挑みます」


 そうしてマップ毎に多少差があるものの、基本戦術の話が延々と語られた。

 まあ相手が誰であれ、ある程度は基本的な対処をしつつ……という感じになるのは仕方が無い。

 こちらから仕掛けない以上は、相手の動き待ちになるのは当たり前の話だからね。


「―――では、次。ほんの少しだけど解っている範囲での情報だ」


 監督が出てきて空中のデータが入れ替わる。

 あの短い時間で登場した琵琶湖女子の武装・配置・戦術などが説明される。

 『流石に情報が少なすぎて推測も多いがね』と監督が苦笑するのも仕方が無いのよね。

 あ~、アリス先輩を警戒しつつとかどうしたものかと思っていたけど、それ以上の難問ばかりだよ。


 1人1人の解説が出てくるけど先輩達も困惑しているように見える。

 私も意味不明だと思いながら表示されているデータを見る。


・藤沢 花蓮

 リーダーの癖に最前線で新型ミサイルで序盤の優位を取った選手。

 ホント、LEGENDの常識である『リーダーは後方で全体指示』って項目を読み直してこいと言いたいね。


・新城 梓

 前々から頭おかしいストライカーだと思ってたけど、更に磨きがかかってた。

 ブースター装備をあそこまで操作出来る選手は、然う然う居ない。


・大場 未来

 世界戦の時にも見たけど、大野先輩みたいに突っ込むのが上手い。

 そして大野先輩と違って接近を許せば即詰みというのが痛い。

 私もこの選手の突撃には注意しなきゃ。


・杉山 栄子

 パッと見で凄く地味。

 でも堅実なサポーターだと思う。

 ウチのサポーターでもここまで基本を徹底してる人は居ないかもしれない。


・大谷 晴香

 相変わらずのグレマニアだった。

 というか更にグレ投擲の腕上がってますよね?

 そんなに器用に投げれました?


・南 京子

 私の癒し枠、京子先輩。

 U-15の時は、よくお菓子をくれた癒し系。

 あの気まぐれなアリス先輩と仲が良いというだけで偉人認定出来る。

 というか、先輩。

 そんなに積極的に仕掛けていく人でした?

 覚えているのは、アタッカーの後ろから援護してる先輩なんですけど?


・笠井 千恵美

 いや~、先輩どうしてそこに居るんですかね?

 というか相変わらず腕部ロケ好きですよねぇ。

 何か見ない間に強引な攻めが綺麗になってますけど、昔のままでも良かったんですよ?


・シャーロット

 アメリカ人?

 留学生?

 何故にブレード1本?

 そしてどうしてアリス先輩並みにその武装で動けて戦えてるの?

 これがアレか、天才ってやつか。

 というか、これだけ強いならU-18とかに出てきてもおかしくないのに見たことないんだよねぇ。


・安田 千佳

 毎回リーダーだけ撃破?

 何その舐めプ。

 いやいや、アリス先輩ですらそんなこと滅多にしないのに。

 というか、コイツが一番解らにゃいんだよねぇ~。


 素人っぽさに演技感が無い。

 でも成績を見れば、あの的確なヘッドショットを見れば天才。

 少なくともマイマイ先輩クラスだろう。


 え?もしかして私ヤバイ?

 アリス先輩だけでも手に余るのに、マイマイ先輩クラスまでセットなの?

 そんな2人相手に1人で撃ち合えと?抑えろと?競り勝てと?

 ……馬鹿なんじゃないの?


・霧島 アリス

 今回、先輩が一番不気味だよ。

 全国大会の戦績が現時点で1試合出場の1キルのみだよ?

 あの『最強のブレイカー』がだよ?


 いつもみたいにやる気が無いだけなら良いんだけど、たぶん違うよねぇ~。

 周囲が強すぎて出番が無いだけですよねぇ~。



 まあそんな感じで恐らく全力なスタメンの主要なのを見たけど、やっぱりダメでしょこれ。

 もはや世界戦の決勝戦とかで出てくる連中クラスですよ?

 こんな島国の大会で出てくるようなメンバーじゃない。


 江里口先輩とかが、ロシアのソフィアみたいな強さになったり、石井先輩が一人で無双してくれないかなぁ。

 もしくは田川先輩が、相手のブースター軍団を一人で止めてくれるとか。


「あぃだぁ!」


 いきなり頭を叩かれて、思わず声が出る。


「何するんですかぁ~!」


「お前も頑張るんだよ、鳥」


 叩いてきたのは、鈴木先輩だ。

 相変わらず黙ってれば可愛い系でモテそうなのに口を開けば毒舌過ぎるのよねぇ。


「そりゃ私だって頑張りますけど~」


「お前の目が『誰かが強くなって相手を何とかしてくれないかな~』って言ってるんだよ」


「し、失礼ですよ、先輩!ほ、ほら見て下さいよ、このぱっちりした可愛い瞳を!」


 そう言いながら先輩に顔を近づける。


「ほらほら!やる気に満ちた感じが見えてくるでしょ~?」


「そういうことをやる時点で既にダメなんだろうが」


「あぃだぁ!」


 またも頭を叩かれて、私は頭を抑えながらその場でしゃがむ。


「アンタら、いつまで漫才やってるの?」


 呆れた顔をしながらそう言うのは、大野先輩。


「クソ鳥に言え」


「あぁ~!また言いましたね、先輩!『クソ鳥』は禁止だって言いましたよねッ!?」


「そうだっけ?」


「そうですー!言っちゃダメっていいましたー!ついでに『ハイエナ』も可愛くないのでダメって言いましたー!」


 最近、何故かネットの一部で私のことが『ハイエナ』だとか『クソバード』などと言われている。

 どうやら私の追撃成功率の高さからそういう話になったらしいが、不名誉過ぎる二つ名だ。

 もっとロシアの妖精みたいな可愛い感じだったり、マイマイ先輩のような『スナイパー』みたいなカッコイイ感じを希望する!

 雑誌関係では『狩人』って言われてるらしいけど、それはあと一歩足りない感じがするんだよねぇ。


「はいはい、時間が無いのだからあまり騒がないで」


 谷町先輩の一言で、ようやく全体的な話が琵琶湖女子の話へと戻った。

 そこから実際にどういう戦術が有効そうかという話になり、最後は練習試合を数戦することになった。

 その練習試合は、いつもより数倍気合が入ったものになる。


「あぁ~、せめて意地ぐらいは見せたいなぁ~」






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次話予定 2021/05/03 02:00~03:00

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― 新着の感想 ―
あぁ~、せめて意地ぐらいは見せたいなぁ~…ダメだ、気持ちがもう負けてる。 アリスもさすがに国内の他校の生徒は不思議の国に招待してないのね。
あれだ。 この鳥ちゃんに必要なものは 『根拠のない自信』 これだよ、これ。 これさえあれば、如何なる苦境でも中指を立てながら「大丈夫。任せて。」と放言できるようになるヨw (注:二つ名が「マッドスチュ…
[一言] ラッキーVSバード。勝つのは何方だ!?次回「安田死す」デュエルスタンバイ!!
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