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破壊神が往く  作者: 桃の妖精
第1章 邪龍と覚醒
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1

 目が覚めると、異世界と呼ぶに相応しい光景が拡がっていた。


 深い森の中で目覚めた俺は、まず現状の把握をする為におよそ1時間ほどあてもなく密林を彷徨っていた。

 密林の中にはリスやうさぎといった小動物から、猪のような前世でも見た事のあるような生き物も多くいた─もっとも、大型の熊を小型のリスが群れで襲いかかっている光景を見る限りでは、その性質は前世とは大きく掛け離れていたが。


 そんなこんなで、彷徨っていた俺は都合よく川を見つけその上流へと向かっていた。

(さて…問題だった水もなんとか見つけられたし…取り敢えず、川の上流に向かってみよう)

 人間が、飲まず食わずで活動出来る限界は3日らしいが、水があればおよそ1週間は活動出来るという前世の知識を引っ張り出し、川の近くならいつでも水分補給は出来るからある程度は大丈夫だろうと思い川の上流へと向かった。

 そして、川の上流を進む内に傾斜が激しくなり恐らく山へと入ったあたりで少し休憩をとる。


 そこで、ふと気付く。

(そう言えば…ヴァースの説明だと、ヴァースと融合した俺は奴の記憶や経験や魔法…そして破壊神の権能を受け継ぐ…と言っていたな…)

 一瞬、己の中に莫大な情報が流れ込んだ影響で激しい頭痛が起き、それによって意識を失った時の事を思い出して顔を(しか)める。

 だが、今の現状の把握さえ出来てないのであれば奴の記憶に頼るのが最善と判断し、意識を深い闇へと沈める。

 すると、頭の中で自らのスペックをなんとなくだが理解する。


 名前〈〉

 年齢 ???

 種族 半神半人(デミゴッド)

 魔法適正 時空魔法 物質魔法 混沌魔法

 権能 破壊(ヴァース)


 うん、よくわからない。

 名前の欄が空白なのは分かるが、何故こんなにもゲームチックに自らのスペックを解説されたのがわからない。と頭を痛めていると、突如頭の中に声が響く。

(ふむ…この声が聞こえているという事は恐らく転生は成功した、と見ていいんだな?環悠理よ。)

 声の主は紛れもない、悠理をこの世界へと導いた破壊神そのものだった。


「おい!どういう事なのか説明しろ!」


 思わず叫ぶが、頭の中の声はそれに対する返答はせず淡々と報告をする様に続けて声を発する。


(言っておくが、我は既に貴様の中に溶けて消えている。この声も、意識が消えてなくなる寸前にお主の為に残した記録…とでも言うべき物だ。)


 悠理はなんとなくだが理解し、ヴァースへの感謝を心の中で呟き次の言葉を待つ。


(まず、簡単な説明からだ。我が権能を使い、お主をリドルヘインへと送り出したがその際に世界の壁を越えた瞬間に、お主は我を宿した…というよりは我そのものである存在へと転生した。全く別の姿になっているであろう。)


 その通りだ。川を見つけ、それを飲もうと屈んだ時に水面に反射する自分の姿を見て驚いた。そこには小柄で華奢な絶景の美少女?美少年?が存在していた。光沢のある銀髪と、中性的な顔立ち─むしろ髪が長いので女寄りだった─と細く華奢な腕や足と相まって、我ながら女なのではないかと疑ってしまうレベルだった。だが、どうやら半神半人(デミゴッド)に性別は無いらしいので、精神だけは男という歪な形になったのだが。


 あまりにも華奢だが、前世と比べるとここまでの道中で息切れひとつしない体力と、襲いかかってくる猪を素手で撃退する程のパワーを見る限りでは、筋肉はかなりついているのだろうと思われる。


(そして、お主が今居る場所はこの世界の三大大国の1つ、グラン皇国という国の南端にある樹海で名をミルテッド樹林という。近くにある一際高い山は、霊峰ネルミエルという山だ。霊峰ネルミエルの頂上付近は、ある古龍が縄張りとしている為、いくら破壊神の力を得、半神半人(デミゴッド)と化したお主でも今行くのは推奨しかねる。くれぐれも霊峰ネルミエルには近づかん事だな。)


 はい…すいません…もう既に霊峰ネルミエルに入ってます…バリバリ古龍のテリトリーに侵入してます…

 変な汗をかきながら思わず胸中で謝罪する。

 にしても古龍か…カッコイイ系の龍なのかおぞましい系の龍なのか1度見てみたいな…等と変な事を考えていると、ヴァースが再び話し始める。


(さて…もう既に時間は無い…か…おそらく今、お主は着る物もなく、あてもなく彷徨っているのだろう。時空魔法で、我の倉庫代わりの空間があるはずだ。それを開いて好きに使うがいい。もし、お主が女子にでも転生していたら流石に可哀想だしな。お主の第二の生に、幸多からんことを。)


 そう考えると、確かに無性でよかった…なんて思わねーよ!性別無くても大問題だよ!とくだらないツッコミをしつつも、予想外のサプライズに思わず小さくガッツポーズを取る。

 早速、時空魔法を使って倉庫を開ける為に時空魔法の使い方を、ヴァースの経験から探し出す。

 自らの中にある魔力を感じ取り、それを放出し空間と空間を繋げる。

「《収納空間(ストレージ)》!!」

 生まれて始めて魔法を行使した瞬間だった。

 すると、空間に穴が開きそこから物が出てくるのかと思えば、頭の中に何が入っているのかがなんとなくわかる。

 取り敢えず、下着と服を取り出して身に纏う。南の森と言えど流石に裸は寒いからね。


 色々な物を溜め込んでいたのでその中から適当にガントレットとブーツと細身の剣を取り出す。もっとも、ガントレットは究極金属(オリハルコン)製でブーツも飛行(フライ)の魔法がかかっているマジックアイテムで剣はというと超暗黒金属(アダマンタイト)製の魔剣という、どれもこの世界に見れば神話の遺物とも呼ぶべき物ばかりなのだが、それを当の本人は知る由もない。何故なら、破壊神自体がこれらに対してあまり興味を示していなかったからというのもあるが。


 一通り身支度を済ませた悠理は、ある事に悩んでいた。それは、


(名前が無いってのも不便だな…記憶を漁った感じだと、この世界でユウリ・タマキなんて名前はどう考えても不自然らしい。)

 そうなのだ、この世界において苗字及び家名を名乗るのは貴族や王族、皇族。はたまた功績を挙げた英雄や大商家位なのだ。

 いきなり表れた人間が苗字を名乗るなど、どう考えても不自然なのだ。


(とはいってもなぁ…どう名乗ればいいものか…)


 ユウリ、やタマキ、という名前自体も一般的ではないどころかどう考えても不自然なのだ。


(うーん…破壊神だから…デストロイからロイ?いや…どうせならもっとかっこいい名前がいいなぁ…)


 等と呑気な事を考え続けて10分程経った頃に、考えが纏まったのかおもむろに立ち上がり、世界へ向けてこう叫ぶ。


「決めた!俺は今日から!()()だ!」


 悠理…もといゼロ曰く、名前の由来は破壊神は『全てを無に帰す』というのと『ゼロからのスタートだから』という事らしい。

 そんな訳で、一通り決めた所で先程のヴァースの言葉を思い出し、この山に住む古龍を一目見たくなったので、好奇心の赴くままに山を登り始めるのだった。




 山を登り始めて、およそ2日。

 半神半人(デミゴッド)の肉体スペックの高さで本来なら1週間はかかるであろう山頂へと到達したのだった。ちなみに飲まず食わずである。

 実は、半神半人(デミゴッド)は人間と同じように、食料などでの栄養補給が必要なのだが半分は神な為、魔力をエネルギーに変換して飲まず食わずでも生活は出来るらしい。

 しかしそうはいっても、元人間であるゼロは流石に飢えていた。空腹にでは無く、味に飢えていた。


(あーくそ…ラーメン食いてぇ…天ぷら食いてぇ…)


 実はこう見えて、美味いものが大好き過ぎて自ら料理を始める程度には食べる事が大好きなゼロは、ストレスの限界だった。

 ヴァースの収納空間(ストレージ)に何か無いかと思ったが、あったのは水を入れれば自動で沸かす鍋やモンスターの素材─鱗や皮といった部分ばかりで肉などは全くなかった─しか見つからないので、仕方なく我慢してきたが流石に2日間も味というものを味わってないというのは、ゼロにとって苦痛でしか無かった。

 そんなゼロの前に、1匹の猪が現れた瞬間、ゼロは反射的に超暗黒金属(アダマンタイト)の剣を引き抜き猪の首を思いっきり羽根飛ばしたのだった。




「はぁ〜…前世のご飯程美味しくないけどやっぱり肉はうめぇ…」


 ヴァースの知識を元に、血抜きや下処理を済ませ、収納空間(ストレージ)の中にあった塩と胡椒をかけて串に指して焼いただけだが、それでも2日ぶりに味わう味覚というのは幸せだった。それも、以外にも猪の肉は柔らかく甘い脂がのっていて前世で1度だけ食べた猪の数百倍は美味しかったので、ゼロはご機嫌になっていた。

 すると突然、早めのお昼を済ませたレイの頭上が暗くなる。


(なんだ!?)


 咄嗟に警戒態勢を取りながら原因を探るべく、頭上を見上げるゼロの視界には。


「ドラ…ゴン…」


 黄金色に光る、純白の龍が頭上を通り抜けて行ったのであった。

ゼロのステータス補足

ブルドーザーを片手で持ち上げてそれでお手玉出来る程度には腕力ヤバいです。

ヴァースが元々パワーで一方的に相手を蹂躙する戦法が好みだったので確実にその影響です。

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