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アヴニール・ネクト  作者: Yohei
エルドラ編
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第1章1話 16年の過去

初めましてYoheiです。この作品は私の初めての小説ものですがかなり考えて作っています。

人の喜び、悲しみ、怒り、感動、すべての感情を味わえる作品となっております。読んでくれた皆さんにその一端が少しでも共感していただけたらと思います。

西暦2050年カレット国は敵国であるガイラ国との戦争に敗れ、名をエルドラと改め開国を受け入れた。しかし、受け入れると言うのは建前で国王や軍は再編されほとんどがガイラ国の人間から任命され実質的な支配を受け入れることになった。戦後は人々の生活は困窮し、苦しい日々が続いたがガイラ国の技術の導入によりたったの50年でエルドラは大陸一の強国になり人々の生活もみるみる良くなっていった。街には笑いが戻り活気にあふれていた。


町から少し離れたとある村の一角では今日も灯がともされ、笑い声が漏れている。

冬の寒い中16歳の誕生日を迎えた俺は東堂篤。今日は両親の計らいで友人を呼んで俺の誕生日パーティをしてくれている。


「いやー、篤も16歳かー」

「大人の仲間入りだなー」


そう上から目線で俺にちょっかいをかけて来るのは定塚唯史だ。

短い髪をかきあげ今日もきれいにセットしている。爽やかイケメンめ、いけすかない。

この国では16歳になると成人として認められ結婚もお酒も嗜めるようになる。


「唯史も1ヶ月前に16になったばかりだろー」

「俺は2100年生まれだが、篤は2101年生まれだもんなー」


そう、唯史の誕生日が11月24日で俺の誕生日は12月24日なのだ。

唯史は満面の笑みで俺をからかっている。

初めは年齢なんて関係ないだろとか思ってたけど、こいつの顔を見たらなんか腹が立ってきた。


「調子に乗らない」


そんな時2人の間にあった見えないプラズマを切って入ったのは俺より半年以上も誕生日が早い鳴上芽依だった。

芽依は長い髪を耳にかけなおし上から目線の正しのさらに上から見下ろしていた。


「うぅぅ・・・」


あんなに威張っていた唯史が一瞬で黙ってしまった。

芽依には人を石にしてしまう力があるのかもしれない。

絶対怒らせないようにしよう。そう俺は自分の中で言い聞かせた。

とはいえ普段の芽依は温厚で誰にでも優しいタイプの女の子だ。

だが唯史に対しては絶対的な強さを持っている。俺が出会った頃にはすでに2人は知り合いでその頃からこんな関係だった。

2人の会話を笑いながら見てると俺の服の裾が何かに引っ張られているような感触を感じた。


「私だって来週16歳になるもん」


そういってどこか不満そうに俺の裾をつまんでいるのは笹峰亜紀。亜紀とは幼馴染で小さい頃からいつも一緒にいる。


「亜紀はまだまだ子供だよ」


年齢的な意味ではなく精神的に子供だといったつもりだったが亜紀はさらに頬を膨らませて俺を睨んできた。そこが子供なんだよ。

むくれる亜紀をなだめようとすると、さっき唯史に同じことをされて怒っていたのがフラッシュバックしてきた。

全く同じ状況じゃないか。俺は自分で言っといて恥ずかしくなってしまった。


「いっぱい食べてね、まだまだあるから」


俺が落ち込んでいるのもお構いなく後ろから陽気な声が響いてきた。


「こんなに作らなくても良かったのに」

「そんなわけにはいかないわよー」

「今日はあっちゃんの16歳の誕生日なんだもの」


そういって次々に料理の乗った皿をテーブルの上に置いていくのは俺の母親である東堂南だ。

もう50近くになるのにこの元気さといったら。16歳になった今でも謎だし、今後も一生謎のままだろう。

テーブルには和洋中すべてのジャンルが揃っており、それでもなお母は料理し続けるのだ。


「あぁつぅぅーーーーーー 飲んれるかぁー」


深夜の商店街でダル絡みをしてくる酔っ払いのおっさんみたいに来たのは俺の父親の東堂真司だ。

普段はエリートエンジニアで何でも作れる鬼かっこいい父親だがお酒を飲むとこんなんになってしまう。そしていつも次の日に禁酒を誓うが気づいたらまた飲んでしまう。お酒って怖い。

俺はまたいつものように親父の介抱をしなければならないと思うとため息をつき親父を近くにあるソファに寝かせた。


「やばっ、もうこんな時間」


ふと腕につけている時計を見たのは芽依だった。

あたりは真っ暗でみんな時間を忘れてしまっていた。


「もう0時だよ」

「えっとー、パーティが始まったのが6時だったから、、、、」


唯史が両手を使い数え始める。


「6時間!?」

「早く帰らないとお袋に殺される」


唯史が急いで帰り支度をし始めるとそれに続いて芽依も荷物をまとめだした。


「亜紀もそろそろ帰った方がいんじゃないか?送っていくよ」

「ありがとっ」


3人のうち亜紀だけは帰り道が別方向なのだ。流石にこんな暗いほとんど街灯もないようなところを女の子1人で帰らせるわけにはいかない。

亜紀も帰り支度を始め、俺は母さんのところへ行った。


「みんなを送って来る」

「気をつけるのよ」

「はいはい」


母さんに一言言うと俺はみんなと一緒に外に出た。


「南おばさん、今日はありがとうございました!」

「いいのよ、またいつでも来てね」


亜紀が挨拶をすると芽依と唯史も少し会釈をして4人で家を出た。

家から少し離れた道、2本に枝分かれしたところで止まり俺は振り返り3人の目を見つめた。


「今日はありがとう」

「今までで一番の誕生日だった」

「いいってことよ」

「おめでとう」


唯史と芽依が改めて祝福の言葉をかけてくれた。亜紀は何も言わずに微笑んでいる。


「それじゃあ、また」


街灯ひとつない歩道には俺と亜紀の足音だけが鳴り響いていた。

特に話すこともなく少しずつ亜紀の家に近づいていくが不思議と2人の間にはぎこちなさは無く、むしろ安心感さえあった。


「あーあ、篤も16歳か〜」


突然亜紀が口を開き、どこか不服そうな顔をしている。


「何だよ」


俺は亜紀のこの表情を見慣れているため大体何かわかっているが一応聞いてみた。

どうせ大したことではないだろうが。


「私たちももう大人なんだね」


予想外の方向からの攻撃に俺は一瞬時が止まったように無心だった。

てっきり俺だけ先に16歳になったからずるいとかそんなことだと思っていたのに。


「ずっと一緒にいるからな」


俺は何とか思いついた言葉を並べぎこちなく返した。


「そうだね」


それでも満足したらしく、嬉しそうだった。


「来週は期待してるから」

「何をだよ」

「プレゼント、さぞいいものをくれるんだろうなー」

「あまり期待はすんなよ」


ここであげないって言ったらまた機嫌が悪くなる。

それに亜紀には結構迷惑をかけている気がする。

今年ぐらいはいいものをあげよう。


再び2人の間に会話はなくなったが慣れたものだ。

亜紀も俺と同じ気持ちだろう。


2人で歩き始めてから10分ほど経ったところで灯がちらほら見えてきた。もうすぐ亜紀の住む村に着くのだ。


「ここでいいよ」

「でも・・・」


ここまで来たから家まで送って行くつもりだったんだけど。夜だし。少し不安な気持ちが残っていた。


「ここからなら灯もあるし近いから」


そんな俺の心配をものともせず亜紀は強引に俺から距離を置いた。


「わかった」


俺は心の片隅に残る僅かな不確定要素をそのまま、ここで帰ることにした。


「それじゃあまたね」

「ああ」

「気をつけてな」

「篤こそね」


俺に手を振ると亜紀は走って自分の家の方に向かっていった。

俺は亜紀の背中が少しずつ小さくなっていくのを見ながら考え事をしていた。


「俺って幸せものだよなー」

「親に愛されて、友達に愛されて、いつかバチが当たりそうだ」


そんな独り言をしながら冬の寒い空気に頬を少し赤く染め帰っていった。

町には俺の足音だけがコツコツと鳴り響いている。

まるで俺以外の人がいなくなったかのように。












まずは、この作品をお手に取っていただいてありがとうございました。少しでも未来に希望をというコンセプトで作らせていただいてるこの作品の今後を見守っていただけたらと思います。作品の感想や相談などTwitterやコメント欄でお聞かせください。また最近ラジオアプリのHimalayaラジオ始めました。そこでは私の声を交えて日々の気づきや質問、相談など話しています。ぜひ一度足を運んでみてください。

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