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貴方は、誰ですか?

初めての投稿になります。誤字があったらすみません。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。




<1>



         『もし、一つだけ願いが叶うなら、貴方は何を願いますか?』



 お金持ちになりたい?


 自由になりたい?、


 空を飛びたい?


 才能が欲しい?


 それとも永遠の命?





 誰しも一度は考えた事があるだろう。 もしも願いが叶うなら...。


 でもそれは、貴方の本当の望みですか?。


 人間は心の奥深く、普段は全く見えない場所に、本当の願いを隠し持っている。


 それを踏まえた上で、もう一度貴方に問いましょう。




                『貴方の願いは何ですか?。』






 





 もし、それでも望みがわからない、というのであれば。ひとつ、私が見たある物語を聞いてみませんか?。その物語を聞けば、少しは得るものがあるかもしれません。


 なぁに、ただの物語です。それが実際にあったことかなんて、重要ではないんです きっと面白いですよ。









 『これは、ある人間たちの物語。...全く知らない世界で、己と己の願いを探し求めた、何の変哲もない物語です。』



























<2>



 『君は、死んでしまったんだ』





 目を覚まして聞こえた言葉はそれだった。

 



  「貴方は誰ですか?」

 

 そうしてまず出てきた言葉はそれだった。なんにもない真っ白な空間で俺は目の前に立って…いや、浮いている青年に問いかけた。その青年は少し驚いた顔をしてくすりと笑った。

「ん?なんで笑ってるんだ?」

「あははっ。ごめんごめん!。ここに来てそんなに落ち着いてる人間は初めて…いや?もう一人位いたっけなぁ??」

青年は思い出したようにまた笑った。俺はますます意味がわからなくて首をかしげる。そんな俺を見て咳ばらいを一つしてふわりと彼は降りてきた。


 「いや本当悪いね。何年もこの仕事やってるとちょっとした事で笑っちゃうみたいなんだ。…さて、さっきの質問にまず答えようか。僕はーーー」





「ここの管理者。死者の魂を導く神様だよ。」



 青年はそれはそれは美しく微笑んだ。--が、俺にはまず言いたい事があった。


「神様...チャラくね??。」

俺の目の前の自称神様はそれはそれはチャラかった。よくわからない柄のダボっとしたシャツに膝の辺りがいい感じに破れてるズボン。そして帽子めでかぶっている。いやチャラ…うん、チャラかった。当の本人は意味が分からないと自分の格好を見て首を傾げている。

「そうかなぁ…この前来た死者が最近はこういう格好が流行ってるって言ってたんだけど?」

「いつの話っ…まぁすぐやめた方がいいと思いますけど。」

呆れたように話すと気に入ってるのにと悲しそうに頬を膨らませた。


 「そんなことより!俺はこれからどうなるんですか?」

純粋な疑問を投げかける。

「あぁ、そろそろ話さないと次が来るか。さっきも言ったけど君は死んだ。だから神様である僕は君の魂を導かないといけないんだ。」

「そっかぁ。。…ほんとに死んだのかぁ俺。」

「うん、受け入れるの早いね君助かるよ。」

しみじみと頷く俺に神様は嬉しそうに笑う。

「うん?じゃぁ俺は天国か何かに連れていってくれんの?」

天国とか実際どんな感じなんだろうと想像してみるがわからない。そんな俺に神様はまた美しく微笑んだ。

そして嬉しそうに両腕を広げてこう叫んだ。


 「喜び給えっ!君は神に選ばれた!。ある世界で人生をやり直す機会を与えよう!!」


 つまりは転生だね!おめでとう!っとその場でクルクル回っている神様を俺はぽかんと見つめる。

「あれれ?喜ばないの?。人生やり直せるのに。」

「え、いや、はぁぁ??。」

神様のテンションについていけず俺は狼狽える。やり直す?人生を?。

「なんで俺が?」

「さっき言っただろう。選ばれた、と。神様の言葉は絶対だ。それ以上でもそれ以下でもないんだよ。」

そう考えると気にならないだろうと笑う。そう言われてしまっては何も言い返せない。


「でも別に、人生やり直したいとか思ってないんだけど。」

「あれそうなの?。夢あると思うんだけど。……何かちょっと前に来た死者が、最近のブームは転生物ですねって言ってたから、流行っているのかと。」

「いや誰だよその偏ったこと言った奴は。」

死者の言葉に耳を傾けすぎだろと思わずため息が出るがそんな俺を神様は笑う。


「でも面白い所さ。転生者には神様から特別に素敵な贈り物を授けてあげられるからね。」

「贈り物?」

「そう、贈り物さ。」


 説明によると、転生先の世界には一人に一つ、職業が与えられるらしい。もともとそこに住んでいる住人は簡単にはその職業を授かれないという。皆最初はただの村人らしい。その点選ばれし転生者は初めから職業を与えられ、スキルも並程度に使える...という感じの美味しい特典付きとかなんとか。



 確かに夢のあるはなしだ。が、

「ほんとに行く意味あるか?。俺的にはこのまま天国行った方が幸せなんだけど。」

行った所で何があるのか。ただ転生した所で何ができるのか。そんな俺に神様はふっと真面目な顔になった。

「何の意味が、ね。確かにそうだ。目的も何も持たぬまま人生スタートされてもって感じだよねわかるわぁ~。」

いやお前が言い出したんだろうと口には出さないでおく。

「でも言ったろう。素敵な贈り物があると。」

神様はまたふわりと飛び上がり浮遊する。


 「君たち転生者は職業と共に冒険者という肩書も送られる。冒険者として僕が出す最難関のクエストをクリアすれば、何でも一つだけ願いを叶えてあげよう。なんでも、だ。」

「何でも?」

「そう、何でも。」

神様はニコリと微笑んだ。お金でも、権力でも、永遠の命でも...元の世界に戻りたいでも。

「元のって…生き返れるのか?」

「そんなのお安い御用さ。」


 「その、最難関のクエストの内容は?」

俺の言葉に神様は答える。

「自分を探すことだよ。」

                  

それに俺はまた首を傾げた。

「俺を探すって言うのは?」

「簡単。自分が誰で、何処から来たのか。家族は誰でどんな暮らしをしていたのか。何が好きか嫌いか、趣味は何か、夢はあったか、あとはーー…まぁ他にも色々。生前の、死ぬ前の自分について思い出したら君の勝ちさ。」

死ぬ前の俺。

「簡単じゃねぇか?。」


俺の言葉に神様はこちらを見下ろして笑った。

「そうかい?。じゃぁ君は、僕に自己紹介ができるのかい。」

「できるさ。俺は18歳だぞ。」

「おぉ、年が言えるのか。すごいすごい。」

小ばかにしたような言葉に俺は少しムキになった。


「これくらいわかる。さっきまで生きてたんだから。」

「そうかいそうかい。では他にも教えておくれよ。」

神様の言葉に言い返してやろうと息を吸い込んだ。










 そこで止まった。言いたい事が山ほどある。自分の名前、出身、家族とその思い出、何が好きで、嫌いなものはなにか。趣味も特技も、自分の夢も。



 いっぱいある。はずなのに。


 自分の名前も出てこない。



「おや?。どうかしたかな?」


 神様の嫌味な言い方に噛み付くことすら忘れる。


 自分は誰だろう。さっきまでなら言えたような気がしたが、わからない。何故だろう。必死に思い出してみる。集中すればぼんやりと何かが見えてきた。


 誰か、何かこちらに言っている。






 『------、----?、------!。』




 





 『ハルマ』


 俺は自然と口に出していた。

「俺の名前はハルマだ。」

そう答えた俺に神様は一瞬固まったがすぐ安心したように歩み寄って来た。

「いや良かった。自分の名前すら言えない人は久しぶりに見た。ひやひやしたよ。」

「名前わからなかったらダメなのか?。」

「まぁね。きっと他の事は思い出せなかったようだけど。一度死んで記憶が殆どリセットされているからね。名前まで忘れていたら自分を探すどころの話じゃない。名前はその人を表す一番の手札だからね。」

神様は緊張を解くように肩を回す。

「でも...それ以外はホントに思い出せない。」

俺は少し怖くなったが、安心させるように神様は微笑んだ。

「探せばわかるよ、大丈夫。実際、転生先の世界には君と同じような人が結構いるんだ。」

「皆記憶を…自分を探してるのか?。」

神様は笑って肯定する。

「いるよ。たくさん。皆探してる。皆自分が何者なのか忘れてわからないまま消えたくないのさ。死んだとしても、確かに生きていたんだから。」


神様の言葉に胸がキュッと痛んだ。何故かはわからないけれど。



「さて、そろそろ時間だ。君は、自分探しの旅に出るかい?。」

神様は再び俺に問いかける。




 俺はハルマ、名前はハルマ。今わかるのはそれくらい。でもきっと覚えている。生きていたから。生きていたなら、大事な記憶もあったはずだ。それを思い出さないままいるのも気持ち悪い。ここまで来たら全部思い出してみたい。


 俺は顔を上げて笑った。


 「おう!やってやるよ。そのクエスト。そんで無理難題な願い事してやるよ!!!」


そう叫んだ俺に神様は嬉しそうに笑って歓迎しようと答えた。





    ここから、死んで自分を忘れてしまった俺の俺を探す旅が始まったんだ。









 「よし、それでは転生を始めよう。心配しなくても、ほんの一瞬で終わるから。」

神様は目を閉じててねと言うとそのまま何処かに行こうとする。

「あれ?。そう言えば何か職業くれるって言ってたけど…」

「え?、あー…大丈夫大丈夫。それとなくいいやつあげれるようにしとくから!」

神様は不自然に目を逸らす。それに何となく嫌なを気配を察してジトリと睨む。

「まさか選べないとか?言わないよな。神様...」

俺の言葉に肩をびくつかせた。隠すのが下手すぎやしないか。

「変な職業とかなら村人の方が良いんだけど。」

「だ、大丈夫大丈夫!!。ま、確かに使えなさそうな職業はあったような気がしなくもないけど...」

「あったのかよ!」

この神様心配だ。


「まぁ当たるとしても50分の1くらいだよ。」

「リアルだな安心できねぇよ。」

ルーレットとかできめてそうな感じがあるぞこいつ。俺の心配をよそに神様はちゃっちゃと転生の準備を進めていく。そして準備が整ったのかよしと俺に向き直る。


「じゃぁ今から転生される。目が覚めると何かお金かけてそうな建物の中にいると思うけどそこから出たら晴れて転生生活のスタートだから。適当にやって。」

「何か急に適当になったな神様。」

こんな神様が管理する世界に行くのは気が引ける。


 「僕も忙しいんだよ~。ほら、次の死者の魂も相手しないとだから。」

そう言うとにぶい光に包まれる。どうやらもう転生されるようだ。だんだんと神様が見えなくなった頃、思い出したように神様が叫ぶ。

「そうだっ!転生先の世界についてまだ8割位話せてないんだけど、時間ないから行った先で同じ転生者に適当に聞いてネッ!!!。」





 その言葉にフリーズしたが、我に返って叫んだ時にはもう転生は完了していた。


















    とりあえず次あったらあの神様は一回殴ろう。そう心に誓った。














読んで頂きありがとうございます。

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