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コードは盤上に  作者: 芦田孝祐
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ちょっとこれ以上は

「本当ですか?すごいすごい。もしよかったら私にも教えてくださいよ」

 将棋を知らない人に教えても意味があるのかどうか分からなかったが、ヒントをくれたお礼として白沢さんに私の仮説を教える。

「多分これ、将棋の棋譜だ」

 白沢さんはぽかんとしている。

「キフ、ですか?」

「うん。将棋は八種類の駒が盤上で動くゲームなんだけど、それの動きを表しているんだ」

「え、動きを数字とアルファベットで表せるんですか?」

「通常は数字と漢字だけどね。アルファベットでも同じことさ。例えば、最初に52Gって書いてあるだろう。これは52の地点に駒が動いたことを表している。52の地点ってのは、将棋盤の9×9のマス目の右から五列目、上から二段目って意味だ。そしてその後についているGは駒の種類、ゴールドの略だから金将だね。今調べてみたけど、ここに書いてあるアルファベットは全部将棋の駒を英語にした時の頭文字だ。Lはランスで香車、Bはビショップで角、Pはポーンで歩、Kはキングで玉将」

 そこまで説明したが、白沢さんはあまり驚いていない様子だった。一気に説明しすぎたので、理解が追いついていないのかもしれないと思ったが、そうではなかった。

「なるほど。で、その通りに動かすと何が起こるんですか?」

 そう言われて、私の理解が片手落ちだったことに気がつく。そう、これが将棋の棋譜だと分かったところで、この棋譜が何を意味するのか分からなければ意味がない。

 私は将棋盤を脳内で構築した。いつもやっている、得意の作業だ。将棋の対局一局分の駒の動きを頭の中で並べるくらいなら十分できる作業だ。

 しかし、そこで思考は止まった。通常棋譜というものは、最初の状態からの駒の動きか、特定の局面からの駒の動きを表すものである。そして、二番目の符号である43Lという香車の動きからして、明らかに後者である。しかし、だとすればおかしなことになる。特定の局面からの棋譜だというのに、その特定の局面というものがこのメモには一切存在しないのである。

 改めてメモを見直すが、やはりこれ以上のことは書かれていない。

「あの、津井さん?」

 興奮状態から急停止した私を心配そうに白沢さんは声をかけてくれた。

「ちょっとこれ以上は、もう少し本格的に検証してみないと、かな」


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