アクセサリーはどんな意味?
主人公である前川清(26)はブラック企業でこき使われサビ残の毎日を過ごしていた。
ある日、疲れた足を引きずりながら帰宅途中の夜道を歩いていると、知らぬ間に異世界に来ていた。
さ迷い歩くうちにモンスターに出会った前川は、ほうほうのていで逃げ出し、心優しい娘、カンナ(16)
と出会い、異世界の言葉や風習を覚え、街で建設のアルバイトを始めた。
今日は、初めての給料でカンナへのプレゼントを買いに来た前川だった。
近所で一番大きな町、ブレンターノの商店街を歩く前川。
広さ10mほどのまっすぐ伸びた道路の両脇に、様々な屋台が出ている。
魚、肉、果物、生きた小動物、衣類、装飾品、魔導書。
この世界に来て初めて買い物に来た前川は、好奇心からついキョロキョロしてしまう。
「今日買いたいものは着替えと保存食と、あと簡単な武器とカンナちゃんへのプレゼントも買えたらいいな」
腰にしっかりと結び付けた、1か月分の賃金が入った袋の重さを確かめると、
アクセサリーの屋台に座る白髪のおじいさんから声をかけられる。
「そこのイケメンのお兄さん、ちょっと見ていって。良いアクセサリーがあるよ、彼女にどうだい」
「生まれてから彼女いないんですよ、僕」
前川、頭をかく。
「そりゃどうしてじゃ、呪われているのか?」
「違いますよ!気が弱くて、自分に自信が持てないだけです」
おじいさんは髭をなでて、
「じゃあこれを持っていきなさい、心から求めている相手が見つかる指輪じゃよ」
「おいくらですか?」
「可哀想だから5ギルでええよ」
「同情された!!悲しい!!」
前川、商品を見渡す。
「プレゼントを買いたいんですが、髪留めか何かありますか?」
「誰にプレゼントするんじゃ?」
「カンナっていう女の子です。僕を助けてくれた、大切な人です」
おじいさん、目を細める。
「どれぐらい大切なんじゃ?」
前川、顔を赤くしながら、
「初めて誰かを守りたい、って思えたぐらい大切です」
「ほっほーう、じゃあこいつを持っていきなさい」
おじいさん、前川にペンダントを渡す。
「これはあなたを守りますという意味のペンダントじゃ」
前川、ペンダントを持ち上げて眺める。
「ありがとうございます、彼女によく似合うと思います」
「財布の中身の半分でええよ」
「えっ、たっか・・・」
「彼女への気持ちを値切るでないぞ」
前川、仕方なく払う。
「毎度あり、またおいで」
「考えときます」
前川、アクセサリー屋を後にする。
灯りのともる一軒家の扉を叩く前川、辺りは暗くなっている。
「ただいまー」
「お帰りなさい、どうだった?」
カンナ、前川を出迎える。
「へんなおじいさんにぼったくられた」
「何買ったの?」
前川、ペンダントを取り出す。
「これを、君に」
受け取るカンナ、顔を真っ赤にしてうつむく。
「あれ、どうしたの?怒った?」
顔をぶんぶんと横に振るカンナ。
「嬉しい、ありがとう」
「良かった!どいういう意味かよく分からないで買ったんだけど」
前川を睨みつけるカンナ。
「えっ、どうしたの?」
「これは結婚を申し込む時に相手に渡すものです」
前川、あっと驚き口に手を当てて、
「ごめん!そんなつもりじゃなかったんだ!知らなかったんだよ」
「そんなつもりじゃないって、どういうこと?」
前川、顔を青くしながら、
「違うんだ、誤解なんだよ。おじいさんに騙されて買ったんだ」
「もういい!!!」
ドアを開けて走り出すカンナ、追いかける前川。
「待って!違うんだ!」
どこまでも追い続ける前川。
この後、前川は指輪の力を使ってモンスターに連れ去られたカンナを追いかけて、夜の騎士の城に潜入してカンナを無事に救い出すのだが、それはまた別のお話。