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家族パーティー最強説!! 〜異世界のんびり無双譚〜  作者: 川中 春夏
第一章『無双』
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第42話『入学式〜2~』

こんにちは。川中春夏です。

息をするように遅れました。すみません……

 ☆★☆★☆★☆



『畜生、まさかこんなことになるとはな……』

『どうしよう……』

 柊真達の番になるまでに、28人の新入生(仮)が通路を進み、そのうちの数人は学長らしき人物のところまで辿り着き、安堵の表情を浮かべていた。それ以外の人は、学長らしき人物の直前で倒れる者、通路の半分ぐらいまで進み崩れ落ちる者、境界線らしき所で意識を失う者、とリタイアする人の場所に違いがあるのはそれなりの能力を持っていたということだろうか……どちらにせよ、奥の学長らしき人物のところまで辿り着きさえすれば万事解決である。

 2人の表情は今も沈んだ表情のまま、はじめの一歩が踏めずにいた。

「どうされましたか?」

 隣には無言の威圧をかけてくる案内人。未知の能力によって気絶する通路。ひと握りだけがたどり着ける通路の最奥。全てから『緊張』の悪魔が襲ってくる。

『こんな事ならエラムを連れて来るべきだったかな……』

 入学式だからと学校まで連れてきたはいいが、さすがに学校内につれこめるわけもなく、校門近くの木の上で見つからないように待ってもらっている。

『でもさ、これって私達の入学試験(?)なんだから、自分たちで解決しなきゃいけないんじゃないのかな?』

 入学式の会場に着くまではしゃいでいた舞奈だったが、さすがに目の前で起きたことを受け止め、はしゃぐ事はせず、ただただ俺の左袖をつかみながらぶるぶると震えていた。

『そうだな……いつも頼ってばかりだし、この学校に入ることにしたのも自分たちで魔物を倒せるようにするために決意したことだしな』

 舞奈の一言で思い起こされる。

 エラムやパーラ、それにガルントさんにほぼ任せっぱなしだったダンジョン探索を思い出し、気持ちを奮い起こす。自然と恐怖心は消えていた。

 震えている舞奈も、兄の心情を読み取ったように目に『勇気』という光を宿し、狩りをする狼のように通路を睨みつける。

『よし、行くか!』

『おっす!!お兄ちゃん!!』

 やる気に満ちた声を発し、震えていた足を一歩一歩先に進める……

 最初に倒れた人の辺りに到着し、空気が一変したのを感じた。

 肌寒く、まとわりつくようについてくる空気。一歩が重く、足に何か重りがついているような感覚。徐々に息苦しさも感じてきた。

 突然自分の首に力が入った。それは意識的に行った事ではなく、体の反射反応によるものだった。

 首が締め付けられ、息が出来ない。

『――――!!』

 重い足を無理やり動かし、袖を掴んでいた舞奈の腕を引っ張り、抱き抱える状態で通路を駆け走る。


『―――――っはぁ!!はぁ!』

 ある程度走ったところで、首の束縛がなくなり、肺に空気が補充される。

 意識がハッキリとしてきて、乱れていた呼吸も徐々に治まり、思考が一変する。

 絶望。厭世。失望。敗北感。全ての思考が負の波に飲まれる。

『なんで……なんで……』

 助かったという安堵感から、なぜ助かってしまったのかという失望感に変わり、絶望する。

 激しく鳴り響く耳鳴り、罵声や怒号による存在を否定する幻聴、複数の見知らぬ人物に嘲笑われる幻覚、自分がとんでもなく惨めに感じる劣等感、生きていることが面倒くさくなった怠惰感、生きる意味をなくした虚無感に襲われ、目の前が真っ暗になる。

『俺なんて……なんで……なんのために……』

 1人でブツブツと床に向かって呟きながら、視覚、聴覚、による屈辱的な仕打ち。

 気が滅入って、生きていくビジョンが潰れ、生きていく意思が霧散し、生きていく覚悟が崩壊する。

『あぁ……ぁ……ぁあ』

 弱々しいなり声を上げ、誰かに助けてもらおうと足掻く。その想いも、負の感情の前ではほとんど意味がなかった。

 絶望して、鬱になっている柊真の隣では、押し寄せる【負】の感情に飲み込まれんと抗い続ける舞奈の姿があった。

『絶対……こんなとこ……ろで、失格にはなりたくない!!』

 なおも押し寄せる絶望感。それをはねのけ、ダンジョン探索でも使った杖を取り出す。

『こんなことならもうちょっと魔法、教えてもらうべきだった』

 まだ一種類の魔法しか使えない自分を悔やみながらも、唯一できる加減ができない『ファイアーボール』がある。

 ダンジョンでは敵が強力だったり、数で襲撃してきたことは訳が違う。相手は自分の兄。もし、死なせてしまったら―――

『――迷ってる暇はないよね!!ごめんお兄ちゃん、できる限り力加減するよ!』

 杖を兄の方向へ向け、スゥッと息を大きく吸って、唱える。

『ファイアーボール!』

 内側から溢れ出るような感覚とともに、杖の先端に小さな炎の塊が出来る。

 その塊を睨みつけ、自分の内側から湧き出る魔力の奔流を塞ぎ止めるように、体の内側に力を込める。もちろん、魔法の手加減の方法なんてものは習ってもいないし、してみたことも無い。

『い、いくよ!お兄ちゃん!』

 その合図とともに放たれた炎塊は、一直線に柊真の手前に着き、爆ぜる。

 一端の魔法使いが使えるような威力ではないが、できる限り手加減した一発だった。

 柊真は爆風と共に吹き飛び、第三の境界線を吹っ飛ばし、学長の元に辿り着く。ガルントさんの加護があったにもかかわらず、爆発の被害は左半身に負い、所々肌が焼け爛れていた。

『痛って……て、うわぁぁ!!』

 焼けただれた自分の左腕を見て、何故こんなことになっているのかわからなかった。

 もうひとつは、尋常じゃない回復能力に自分でも驚いてしまったこと。みるみるうちに細胞同士が繋がっていき、醜かった腕は綺麗に元通りに治っていた。爆発による服の修正はできなかったが……

ここまで読んでいただきありがとうございます。

また次回で……

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