第40話『入学』
こんにちは。川中春夏です。
ガルントさんの家までの帰宅中、特に何も無く無事につくことができた。しかし、初めてのダンジョン探索や慣れない武器の扱いによる疲労が、家に着いた途端、どっと襲ってくる。家に着いた頃には、夕日は沈み、静寂な夜が訪れていた。
空には無数の星が光っており、この時ばかりは普通に日本にいるような感覚だった。しかし、振り向けば漆黒のドラゴンが羽を休めるように丸くなって寝ている……ここで、日本ではないと改めて思い知らされる。
さすがに家に帰らせるのは危険と判断したのか、ガルントさんは「今日は泊まって、明日家に帰ったらどうだい?」と、提案してくれた。
もちろん最初は断ったが、ダンジョン探索で疲れきった体のまま深い森を抜ける自信がなかったことと、エラムやパーラも少しばかり眠そうだっため、今回はお言葉に甘えて泊めてもらうことにした。
そうして、家の中に案内され、順番にお風呂に入り、就寝。
〜次の日の朝〜
「みんなおはよう」
『お……はよう……ご……ざいます』
最初に起きたのは柊真だったが、昨日の疲れが取りきれていないのか、虚ろな目のまま体を起こす。
「昨日はよく寝れたか?」
清々しい顔でガルントさんが聞いてくる。
『いや、まぁ寝れましたけど……もう少し寝たい気分です』
シャキッとしているガルントさんとは対称に、抜けきらない眠気と戦っている柊真はうっつらうっつらしている。
〔あ、おはようございます〕
次に起きてきたのは、エラムだった。起きてすぐ、俺の頭に乗る。
『あ〜目が覚めるわ〜』
エラムの少し冷たい体が頭に乗ってくれたおかげで、少しずつ目が冴えていく。
〔なぜ目が覚めるかわかりませんが、役に立てたのなら光栄です〕
少し照れくさそうに返してくる。
そんなやり取りをしてる間に、ゆっくりとみんな体を起こして起き上がる。
「みんなおはよう」
ガルントさんが再度挨拶する。
『『『おはよう……ございます……』』』
やはり、父さんたちも疲れが抜けきらないのか、うつろな目をしている。
「よし、じゃあ朝食にしようか」
いつの間にかテーブルの上に皿が並べられていて、美味しそうな匂いと湯気がゆらゆらとたっていた。窓からは、暖かな日差しが差し込んでおり、とてもいい一日が始まりそうな、そんな雰囲気が場を包んでいた。
テーブルの上には、パン一つとスープが一皿、サラダや卵もあった。一般的な朝食のように見える。
美味しそうな朝食に釣られるように席につく。
「そういえば、冬馬と言ったか……『エルフの涙』はどうやって造るのだ?」
パンをちぎりながら、父さんに質問する。
『それなんですけど……正直な話……あまりよくわからないんです』
少しおどおどしながら返答する。
「それは一体どういう事だ?ダンジョンの時は造れると言ってたはずだが?」
『それが……作れることはわかっているのですが、材料はわかっていませんし、具体的な工程も分かっていない状態なのです……これは単なる推測ですが、多分レベルが足りないのではないか……と思っています。』
少しピリついたムードの中、その空気を察し、かなり萎縮しながら理由を話す。
話を聞いたあとでは、ガルントさんは納得したようで、「そういえばそうだった……」独り言をこぼしながら、一人スープを口に運んでいた。
一通り食事が終わったあと、不意に話の続きが始まった。
「確かに、今思えばかなりレベル不足だったと思う。恐らく、その推測も当たっているだろう……少し感情的になり、焦っていたのは事実だ……すまない」
『あ、いえいえ。大丈夫です。私も力になれず、申し訳ないです……』
お互いに謝罪し、お互いに許したところで、実は……とガルントさんから驚くべきことを聞いた。
『『はぁ!?今日入学式!?』』
俺と舞奈は驚きを隠せず、叫んでいた。何しろ、入学の説明を受けてからそこまでの時間が経っていないはずなのにも関わらず、急に今日入学式だとガルントさんから告げられたからだ。
ガルントさん曰く、ダンジョンでのボス戦の時に入った門のせいで、時間が少し早くすぎていたようだった。そのため、気付かぬうちに入学式当日を迎えた訳だが、焦っていたのは俺たちだけではなく、同じ日に検定がある父さんと母さんも同じような反応を見せていた。
なんの練習もせず、いきなりテストを受けるような感覚に似ているだろうか……かなり焦っている様子が、父さんと母さんに見受けられる。
「まぁどちらともなんとかなるだろう……」
そんな軽々しくどうにかなるようなことでもないはずなんだが……特に父さんと母さんは……
『それで、あと、どのくらいで始まるんですか?』
「入学式も検定も2時間後かな……まぁ、エンシェに乗っていけば余裕で間に合うだろう……」
『なら急いでいきましょ!!』
すぐさま出発の準備に取り掛かる、幸い持ち物は少なかっためそれほど準備に時間はかからなかった。
『よし、出発しよう』
朝起きて、朝食を食べ、出発の準備……これらのことを終えるのに1時間もかかっていなかった。
「まぁ、どちらともなんとかなるさ。基本能力値やある職へのセンスはずば抜けているから大丈夫なはずだ!なぁにこの大賢者が言っていることだ、信じなきゃ損だぞ?」
少しからかうように見送られた俺たちだったが、確かに自分の能力は自分でも異常じゃないのか……と疑うほど恐ろしいからなあ。まぁひとつの要因はパーラにあるんだけどね……
☆★☆★☆★☆★☆
「第280期、デュラオス魔法学校の入学者はこちらにお集まりください!!」
ぞろぞろと入学者らしき人達が校門をくぐっていく。
『す、すげー……デカすぎだろ……』
とんでもない大きさの校門を前に少したじろぐ……兄
『ほら!早く行こーお兄ちゃん!』
それに対して魔法学校に入学できることがそんなに嬉しいのか、妹の方は校門には目もくれず、入学式の案内人の所に小走りで行く。
案内人の周りには様々な人が集まっていた。特に、明らかに秀才であろう姿のイケメンやマドンナと呼ばれそうな女子、クラスに一人はいそうな空気の読めないヤンキー……等、定番な人達の姿も見受けられた。
『ねぇねぇお兄ちゃん。これってクラス表だよね……うーんと……あ、お兄ちゃんと同じクラスだ!!』
近くに貼られていた貼り紙には、A、B、C、D、と4つに分けられているクラス表を発見し、俺達はクラスBだった。
『そういや、俺たちこんな服装でよかったのか?』
周りを見渡せば、俺達と同じような服装で来ている人はいなかった。その代わり、この世界での正装服らしき服装で来ている人のみ、ここにいた。
なんとも場違いな感じではあるが、しょうが無い……と諦めるしかなかった。
『どうにかなるよー!!』
相変わらずのハイテンションで、わーわー騒いでいる舞奈を無理矢理静かにさせ、入学式が始まる時間になった。
「それでは、ここにお集まりいただいた皆様は、あちらの大ホールにて入学式を行いたいと思います。クラス別に入場致しますので、クラスAから順番にお並びください。クラス内での並びは自由ですので、適当にお並びください。
それでは、整列でき次第入場致します。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
先週の土曜はどうしても更新ができなかったので、許していただきたいです。
今週は頑張りまーす。




