第34話『ダンジョン探索2』
こんにちは。川中春夏です。
久しぶりの投稿なので、次数を増やしたつもりでしたが、あんまり増えてないですね…
『なぁ、ガルントさん、多分『超回復』って異能力じゃなくて、スキルの方だと思うんだが、スキルと異能力だったらなにか違いがあるのか?』
確か、そうだったはず…と間違いを正し、さらに質問を加えることで、なんかいい感じになる〜という事を…まぁどうでもいいか。
その間違いに気がついたのか、1度紙を見てから、
「お〜すまんすまん。私の見間違いだったよ。それで、スキルと異能力の違いだが、異能力はスキルの進化系…と言えばわかりやすいかもしれない。例えば、『超回復』の場合、異能力に進化すると、『打撃無効』とか『魔法攻撃無効』とか、完全に攻撃を無効化するようになる。」
なるほど、『超回復』では、傷を負えば即座に回復するけど、まず傷を負わないわけか…
まぁ、別の言い方すると『上位互換』ってやつかな?絶対みんな欲しがる能力だな…
『じゃあ、スキルから異能力に進化させることはできるのか?』
「いや、そんな話は聞いたことがないが…」
ガルントさんもエラムも、そんな話は聞いたことがないと少し悩むような感じで答えてきた。
〔多分できるよぉ〜〕
唐突に頭の中に響いてきた念話で話しかけてきたのは、パーラだった。
〔え?できるの?〕
さっきまでエラムとガルントさんができないって言ってたから、てっきりできないと思ってたけど…
パーラの念話を聞いたエラムは、驚いた顔をしながらパーラの方を見る。早く説明してくれ〜と、言うような目線をずっとパーラに送っていたが、ニコッと笑顔を返し、教えなーいと言っているような意地悪さがあった。
〔まぁ〜、簡単に説明すればぁ〜、私の父から聞いた話なんですけどぉ〜、1度だけ父に挑んできた勇者がいたんですよぉそれでぇ〜父が優勢だったんですけどぉいきなり勇者のスキルが異能力に進化したらしいですよぉ〜〕
そんなことがあるのか…というような顔のまま俯き、少し時間を置いてから半ば信じていない顔を上げ、無理やり納得させたようだ。
まぁ、聞いた話なんだからこれ以上聞いても特にこれといった情報はないと思い、諦めたと思うんだけど…相当知りたい情報だったのか、顔が歪んでいるように見える…
『じゃあ結局、よくわからないって結論でいいよな?俺も質問してばっかですまん…街で調べておけばよかったな。』
少し、罪悪感を覚え無理やり話題を切る。
そんな中、突拍子のない話ばかりしていた俺たちの影で、両親二人とも頭にハテナがかなり多くあるようで、今にもオーバーヒートしてしまいそうな様子であった。
しかも、たまに念話で話をしていたから、聞きたくなくても、覚えたくなくてもよくわからない話が頭に入ってくるが、理解が追いつかず、『意味不明』で頭の中は溢れているだろう…
『あ、そうだ、舞奈。このダンジョン出たら学校に行くけど、どう思ってる?』
出せる話題がなく、咄嗟に思いついたのは学校のことだけだった。
『うーん…どんな人たちがいるかわかんないし…お兄ちゃんと一緒なクラスだったらいいな〜みたいな…えへへー』
なんとも凄い返答が返ってきたものだ…まぁ、どんな人たちがいるかは聞いてなかったから不安になるのはわかるけど、俺と一緒なクラスになることは無いんじゃないかな…だって年齢的に…あ、一緒になりそうだったわ…
そんな他愛のない話をしていると、突如後方から獣の雄叫びが聞こえた。
☆★☆★☆★☆
「なんだ!」
その声にいち早く反応したガルントさんは、最前列を歩いていたが、即座に後方、父と母の後ろに立つ。
一瞬の雄叫びの後には、一歩一歩こちらに近づいてくる、重々しい足音が聞こえてくる。しかし、かなり距離があるのか、一向に姿が見えない。
〔ん〜とぉ〜私が見てきてもいいですかぁ〜?〕
先程まで前方でガルントさんと一緒に歩いていたはずのパーラは、いつ来たのか、俺の隣に立っていた。その横顔は、何かを知っているような表情で、少し楽しげに暗闇の先にいる『何か』を見据えている。
「ああ、よろしく頼む。」
〔はぁ〜い〕
その一言を発し、ゆっくりと先の見えない通路を進んでいく。
しばらくして、『何か』と接触したのか、またもや雄叫びが聞こえた。が、しかし、先程の雄叫びと違ってどこか愛犬が主人を見つけて、喜んで吠えている様な印象を受けた。
さらに、少しして、またこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。パーラが失敗したのか?まさかそんなに強い相手なのか?様々な不安とそんなことはありえないという疑問が押し寄せてくる。
一歩、また一歩と近ずいてくるのに伴い、パーラから何も知らせがないことも合わさり、さらに不安が募っていく…
『ガルントさん、どうですか?敵かどうかわかりますか?』
少しの希望を持ってガルントさんにたずねる。
「いや、何故かわからないが暗闇の向こうにいる『何か』の気配や敵意が全く感じられない…しかも、足音も逆にとうのいて言っているように感じられる…一体どうなってるんだ。」
ガルントさんでさえわからない…どんな奴なのか、敵なのか味方なのか、それさえ分からないとガルントさんが言うんだから……もう諦めよう(ニコッ)
いやいや、さすがにここまで来て、はい、死にました現世に戻ります。となってもらってもちょっとやだな〜
せめてまともに魔法とか撃てるようになって、激戦を繰り広げた後になら死んで、現世に戻ります。ならまだ許せるけど、全く何もしていない…特にめぼしい特技はない…さて、助かることを祈ろう。
そして、暗闇から現れたのは、双頭の狼の顔を持つ獣だった。
☆★☆★☆★☆
ある森に一匹の狼がいた。
その狼は、群れからはぐれ1人で森の中をさ迷っていた。そしてこの狼が、この森で食料がないことに気づいたのは、そう長くはかからなかった。
日に日に膨らんでいく空腹感。そして、自分が死ぬんじゃないかという恐怖心が常にまとわりついていた。
そんな毎日を4つ繰り返したある日、羊の鳴き声が聞こえた。
それが幻聴だったのか、又は、本当に羊がいるのか、それすら判断を鈍らせていた。しかし、狼は空腹に耐えかね、藁にもすがる思いをしながら辺りを探す。そして遂に、少し先にある草原に8頭ほどの羊を見つけた。
狼は、その姿を見た瞬間、体が勝手に反応し、羊の群れに飛び込んでいく。
いきなり現れた自分の天敵を前に硬直状態の羊が1頭…すかさず牙を突き立てる。しかし、4日も飲まず食わずで過ごしていたため、力が入らず、羊の身震いのみで弾き飛ばされてしまった。即座に態勢を立て直し、再び牙を突き立てようとするが、手足に力が入らない…その間にも、羊の群れは森の中へ逃げていく…
絶好のチャンス…千載一遇の好機…を逃し、再び立った時には、羊の姿はなかった…
目の前の絶望に、立つ気力すら湧かず、その場に倒れ込む。天も味方をしてくれないのか、雲が立ち込んできて、雨が降る…さらに薄い霧も発生し、狼はこの場所が死に際だと悟った。
しばらく意識を失ってたのだろう…気がつけば雨は完全に止み、太陽が照りつけていた。
辺りには雨の影響で水溜まりがいくつかあり、太陽の光を反射して眩しい光を放っている。
そして、なけなしの体力で起き上がり、水溜まりに近づく。1歩、また1歩と確実に目的地に近づいていく。
水溜まりに到着し、4日ぶりの水分補給をする。その時の雨水の味は絶対に忘れないだろう…
しかし、水分補給だけではどうにもできず、なにか食べ物はないか、と探しては見るが、あるのは水溜まりのみ…
森にならあるのでは、と思い、再び森に向かって歩き出す。
しばらく森の中を探したが、一向に食べ物は見つかる気配がなく、また、意識を失いそうになる。
森の中を歩いていると、足音が聞こえてきた…それは、自分の仲間ではなく、人間…重みのある足音、鼻をくすぐる肉の匂い、それらを感じ取った瞬間、茂みに隠れ、獲物の全貌が明らかになるのを今か今かと待ち侘びる。
そして、体が見えた瞬間、飛びつき、確実に仕留める力で牙を立てる。皮膚を貫通し、肉を裂き、骨に到達する…と思いきや、口を開けた狼は、空気を噛んだ。
何が起こったのかわからない狼は、即座に後ろを振り向き、状況を確認する。しかし、先程見かけた人間人間はおらず、ただ木々が揺れているだけだった。
そして、自分の見間違いだと思い、気を緩めた瞬間…突如後ろから雷が飛んできた。
正確には電気なのだろうが、明らかに雷のような音を立てながら、自分に迫ってきたため、そう錯覚したのだった。
少し気を緩めたのが悪かったのか、少しだけ後ろ足にかすり、片足が麻痺してしまい、動かない。
そして、後ろ片足を引きずりながら、その場からできるだけ離れようとする。しかし、今度は、石が飛んできた。それも1個や2個ではなく、数百、いやもしかしたら数千までいっているかもしれない量の石。その、蜂の大軍のような光景を前に、足がすくみ、動けなくなってしまった。
そして、一斉に放たれた石は、木々をなぎ倒し、土はえぐれ、隠れていた小動物全ての体を貫通し、風穴を開けるほどの威力である。それは、この狼も例外ではなく、四肢全てを撃ち抜かれ、歩くことすらも出来なくなってしまった。
相手が動けないと悟ったのか、先程の人間が近づいてくる。
四肢を撃ち抜かれた狼は、対抗する手段が残っておらず、2度目の死を覚悟する。
…
……
………
しかし、その瞬間はまたも訪れず、瞑っていた目をそっと開ける。
〔な〜んだ。狼さんだったのね…てっきり、ケルベロスかと思ってたんだけどな〜〕
そこに居たのは、子供だった…
しかし、普通の子供とは違い、ドレスを着て、首にはネックレスをした、明らかに貴族の子供であった。
〔あれ?まだ生きてるんだ。凄い生命力だね〜〕
弱った虫を見るような目でこちらを見て、特に興味もないというような顔をしていた。
唐突に、緊張感とは全く別のある物が鳴ってしまった。
腹の虫である。
ぐぅぅぅ〜
その音を聞いた少女は、一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに笑い声があたりに響いた。
〔あははは…なんでこんな時にお腹鳴らしてんのよ〜…うーん、じゃあ私の腕食べる?〕
何を言っているんだこの子は…と思うかもしれない。しかし、この子の正体はただの少女でもなく、魔法使いでもない…もちろんただの貴族でもない。
真剣な眼差しとは裏腹に、ある事に興味を持っているようだった。
一体何に興味を持っているのかは、少女自身にしかわからない。
白く、細い腕が狼の前に突き出された。
〔はい、どうぞ〕
狼は戸惑った。一体なぜ腕を突き出しているのか…なぜすぐに殺さないのか…
意味がわからず、少し戸惑っていると、腕をさらに口にちかづけ、どうやっても避けられるような距離ではなくなった。さらに、目の前の腕から発せられる美味しそうな香りが、狼を誘う。
そしてついに我慢できなくなり、その白い腕に噛み付いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
また次回で…




