第30話『報酬金』
こんにちは川中春夏です。
今回長めで、序章が終わりそうですが、もうちょっと続きます。
現在、街に向かってガルントさんの眷族であるエンシェンに乗っている訳だが、危機的状況にある。
1つ目は、このまま街に行くと兵士や冒険者ギルドに加入している人達が襲ってきそう。 という事
2つ目は、ガルントさんの結界内にいたため、結界外での時間はそれほど進んでいないと予測できる。だから
このままギルドに行って、『????』の依頼達成しました。と言ったところで怪しまれるだけ、そこで『ガルントさんの眷族のエンシェントドラゴンが家に帰っていただけです。』と説明したら、多分追い出されるだけだろう…
何故かって?
まず、ガルントさんから聞いた話だが、ガルントと言う名前は本名じゃないらしい…
しかも、ガルントという名前は、「大昔の大賢者の名前だ。」と聞いたから、素直にギルドの受付の人に『ガルントさんの眷族』と言って信じる人はいるはずもない…
…まとめると、時間がたっていないにもかかわらずギルドに帰ってきて、依頼達成の証拠が無く、おまけに大昔の大賢者の眷族に会って来たと戯言を言っているだけになってしまう事。
3つ目は、死にそうだという事。
出発前は背中に乗っていた…
だが!!
エンシェの飛行スピードが早すぎて、一番後ろに乗っていた俺が風圧に耐えかねて吹っ飛び、エンシェの尻尾にしがみついている状態だ…
それだけでもかなり危うい状況だということがわかってもらえるだろうが、アニメでも見たことがあるだろう、飛んでいる龍の尻尾は上下するシーンを!!
まだだ!まだあるんだ!
まだ、それだけ?と言われるかもしれないから補足しよう…
上下に揺れる=少し体がずれる→そしてまた上下に揺れる→またずれる の繰り返しである!
なーんだと思った人もいるだろう… この説明を見ればなーんだと思うのは納得いく…
だが!!!
よく考えて欲しい…龍の体表は何で覆われている?
そうだよ!!硬いうろこだよ!!
つまり、ずれると同時に俺の顔にダメージが入るんだよ!プラスして言えば、服は多分もうボロボロだろうな!!
出発前は楽ちんだと思っていたのに…災難だ…
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そして、今、街の入口である門の前に到着した。と同時に、兵士がこちらに走ってくる。
死ぬかと思った…
〔母さん達よく聞いてくれ、この状況は厄介な事になりかねないことはわかるかもしれないから、俺の案を聞いてくれ…
俺は見ての通りかなりの重傷者に見えないこともないから、俺が手酷くやられた所をこの龍が助けてくれたシナリオでいこうと思う…
エラムはできるだけ見つからないように隠れてくれ。
パーラは見た目は完全に俺たちと一緒だからバレる心配はないと思うが
、バレたら厄介なことになるからできるだけ目立たないように。
あとは、俺達の演技しだいだ。〕
〔分かりました。〕
〔わかったぁ〜〕
そう言って、エラムはエンシェの影に隠れた。
母さん達もそれぞれ返事をし、兵士が到着するのを待つ…
遠くからしだいに姿が近ずくにつれて、ガシャンガシャンと鎧のうるさい音も近ずいてくる。
「何者だ!!」
先頭で走ってきた兵士の人は聞いてきた。
『怪しいものではありません。この街のギルドに入会している者で、先程依頼が達成出来たので、ギルドに報告に行くところです。』
さすが父さん…全く怯まずに返答できている…こういう事は父さんに任せよう。
「そうなのか…では、ギルドカードを提示してくれ。」
そうして、皆それぞれのギルドカードを提示する…
がしかし、俺だけギルドカードが無かった…
「そこの青年は入会してないのか?」
『いえ、入会はしましたが、今回の依頼で魔物に手酷くやられまして、ギルドカードも紛失しました…その時に助けてもらったのがこの龍でした。』
「そうか…しかし、街に入るにはギルドカードの提示は必須なのでな…」
『それなら冒険者ギルドの方に来ていただき、顔を見せれば入会者だと言うことがわかるはずです。』
「そうか、ならギルドの職員が到着するまで待て。」
『分かりました。』
「しかし、この龍は見たことないぞ…まだ兵士になって間もないから知らないだけかもしれないが…」
と、エンシェの腕やら首やらを触る…
…エンシェがキレてる…今にもパラレルワールドに送るあの技を使いそうな勢いだが、我慢してくれ!
しかし、鈍感なのかかなりキレているエンシェに気付かず、兵士は初めて見る漆黒の龍を舐めるように見ている…
あの伝説の大賢者の眷族だと知れば、この兵士はどうなるのだろうか…
ほかの兵士もこの龍については知らないらしく、じっくり観察をしている…
多分エンシェが尻尾を一振すれば、兵士何か帰らぬ人になりそうだな…
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兵士の人がギルドの関係者を呼びに行ってから戻ってくるまでは
そこまで時間はかからなかった。
到着すると同時に俺たちの顔を見て、ギルドに入会している人だと説明してくれた。
最近入会したばかりだし、今もまだ依頼が殺到しているらしい『????』の調査に行ったのだから、少しは覚えられていると思ったがあながち間違っていなかったようだ。
そうして、無事に街の中に入ることができ、まず初めに向かった場所が冒険者ギルドだった。
しかし、街に入るための門へ続く道を歩いているエンシェが、自分の怒りをどこにぶつけていいのかわからず、ただひたすらに地面を力強く踏んでいる…ただでさえかなりの足跡が残るのにさらに怒りも混ざるとなると、多分170cmの身長の大人が入るぐらいの深さになっているんじゃないかな?
そのぐらいプライドを傷つけられたのだろう…
しかし、何もせずに我慢していたのは上位魔種のプライドなのか、ガルントさんの眷族としてのプライドなのかわからないが、兵士達はこの寛大な心の持ち主であるエンシェに感謝した方がいいと思う。
まぁこれで2つの危機は除けたが、問題はあと一つ…依頼の成功をどう証明するか。だな…
ギルドに到着するまでに何か考えは無いかエラムとパーラに聞いてみたが、あまり期待できるような作戦は浮かばなかった…
ここまで来たらどうにか報酬だけは貰いたいが…上手くいくことを願うばかりである。
そうして、ギルドの扉を開け、中に入る…
エラムは外でお留守番…にしようと思ったが、さすがに可愛そうだったので頭に乗ってもらった…
なぜか懐かしい気分になる…
「あ、シューマ様とマーナ様、それと両親の方々、無事の帰還で安心しました。」
受け付けにいたのは、俺達に依頼をまとめて受けさせてくれた人だった。
「シューマ様はかなり手酷くやられたようですね……こちらをお使いください。」
渡されたのは、試験管のような細長いガラスの入れ物に入った蛍光色の緑の液体が入った物だった…
こんな説明じゃ嫌なもののように聞こえてしまうかもだから、いわば『回復ポーション』と言う物を思い浮かべてもらえばいいだろう。
『ありがとうございます。大切に使わせていただきます…』
「それで、依頼場所に行ってみて何かありましたか?」
『それなんですが……兵士の死体が何人いかあり、巨大な間ののが通ったあとなのか、地面に跡が残っていました…
俺達はまだなりたてだったので、特に注意もせず進んでしまい、俺だけこんな怪我を負わされました…まぁ、もう大分回復しましたけど…
なので、これ以上のことはもっと上のランクの方に任せようと思って戻ってきました。』
「なるほど…これはやはりゴールドランク以上の方に行ってもらった方がよかったのかもしれませんね……
貴重な情報ありがとうございました。」
そう言って受付嬢は奥に入っていき、何か袋を持ってきた。
「こちらは、依頼の報酬になります。シューマ様達が戻ってこられるまでにもたくさんの『????』の依頼があったため、報酬金が上がっております。こちらは金紙幣10枚になります。
なぜこんなにも依頼が来るかはまだわかっておりませんが、それほど危険な依頼なのかもしれません。」
ちょっっっっとまって!!金紙幣10枚!?日本円にすると、5000万!?
怖い怖い!!
突然大金が入ると感じるなのぞ恐怖心とはこの事か!!
皆、金紙幣10枚と聞いて驚きすぎて身動きが取れてない…
『あ、あの、そんなに貰ってもいいんですか?』
「ええもちろん、危険な依頼ほど報酬は上がるものですよ。」
『あ、ありがとうございます。』
金紙幣10枚を受け取り、1枚だけ金貨に変えてもらうように頼んだ。
このあと、装備を揃える時に金紙幣を出すと大変なことになりかねないからな…
「それでは、金貨1万枚になります。」
ドンッと机に置かれたのは、巨大な皮袋が20個ぐらいだろうか…
ギルド内にいた冒険者達もいつの間にか皆俺たちの周りに集まって口を開けていた。
『あの、お金って預けることはできますか?』
正直、この量のお金をどうやって運ぶかについては全く考えていない…と言うより、考えることが出来ない。お金の桁が多すぎて。
「できますよ。」
『あ、じゃあ金紙幣9枚と、金貨9000枚を預けたいです。』
「分かりました。では、こちらにサインを。」
サラサラと貯金に関するサインを書き終える。
3つ驚いた事がある。
1つは、税金がないこと
2つ目は、貯金していられる期限がないこと
3つ目は、どんな額でも貯金できること
この世界…最高だな!
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ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回で…




