第15話『宝』
こんにちは川中 春夏です。
今回も間に合いました…
「ど、どういうことですか?」
「うむ、今回の騒動で我々魔法使いは討伐に大きく貢献したため、ドロップ品は私達のものになるはずだ。」
なんとも傲慢な考えだろうか…と思ったが、確かに今回の件での魔法使い達の貢献度は相当のものだろう…
あれだけの炎魔法を撃った事によって、敵の進軍を防げたのも事実だ。
僕達はその進軍が遅れたものを倒していただけなので、ある程度は貢献したと思うが、魔法使い達には大きく劣るだろう…
だからと言って何も報酬が無いのはおかしい…
『すみません。僕達も戦ったのですが、何も貰えないのはおかしいと思います。』
すると、
「お前達にも報酬はちゃんとある。
だが、ドロップ品は私達の物だということは分かってくれ…」
『俺はいいですが、家族の方は…』
と言って後ろを振り返って見ると、両親と妹は街の方に歩いて行っていた。
〔ちょちょちょちょ!!なんで俺一人置いていくんだよ!!!〕
俺の事をかばってくれていた妹でさえ、街に戻ろうとしていた。
〔え…だって、厄介なことに巻き込まれるのはやだからね〜〕
と母さんが答えた。
〔その代わり、さっきエラムちゃんが『ツリーキノコ』を取ってきてくれたから、冒険者ギルドだっけ?にもって行こうかなと。〕
〔お母さんだけが冒険者ギルドに行ったって「ん?」って受付の人がなるだろうから、私もついて行くの…お兄ちゃん…ふぁいと〕
エラム凄すぎません?
よくあの戦いの後に『北の平原』に取りに行けたな…
あ、『ツリーキノコ』はどこにありますか?って受付の人に聞いたら『北の平原』って言われたんだけど、依頼を受けてからすぐに『西の平原』に来ちゃったから、採取しに行けないな…と思って諦めてたけど、エラム様がわざわざ『北の平原』まで行ってくれて『ツリーキノコ』を取ってきてくださるなんて…ありがとうございます!!
〔…分かった。はぁ〜…
こっちは結構大変なのに!!〕
と、最後には愚痴を漏らしつつもエラムには感謝の念を送った。
『…家族の方は用事ができたようなので、俺が決めますが、ドロップ品が5つ以上入っていた場合1つはこちらに貰えないでしょうか?』
ダンジョンモンスターは倒すとドロップ品である『宝箱』を落とすが、稀に何個か『宝箱』の中に入っている事がある。
その確率は、上位の魔物になるにつれてどんどん高くなる。
今回倒したダンジョンモンスターは、パーラとほぼ同等の強さになっていたから、かなりの確率で複数入っているだろう。
こんなことどこで聞いたか。と問われるだろうが、パーラ達が戦っている最中ずっと母さんが念話で教えてくれていた。
初めは戦いに集中しようと思ったが、俺達はなんにもすることが無く、なにかしようものなら必ずあしでまといになる為、母さんの念話での講習を受けるしかなかった…
しかし、念話での講習を受けて新たにわかったことがあるが、1つは『念話で話した内容は完璧に記憶する』という事と、念話は頭に伝えたい言葉を浮かべて、誰に送りたいかを思えば伝わるのだが、頭で言葉と相手を思い浮かべながらでもどんな行動でもできるということだ。
今回エラム達が戦っている最中に話しかけたが、どっちかに気を取られることは無く、隙も作ることはなかった。
ただ、戦い慣れてるからだろ?と思うかもしれないが、例えるなら、自分で自分としりとりをしながら、誰かの顔を浮かべ、バスケの試合をするようなものだろう。
これを同時に行うのだから普通は不可能である。
しかし今回エラム達は念話をしながら敵を倒していたので念話は特別な力なのだろう…
それで、母さんとの講習は約20分。
その全ての内容を覚えているのだから、念話はとてもすごいものだとわかるはずだ…
と、話がそれたが、今目の前にいる魔法学校の校長(傲慢な小太りの男)は、かなり考えているようで真剣な顔立ちだった。
今思えば、魔法学校の校長ってことは、今度舞奈が行く学校の校長なんじゃないか?
やばい…俺のせいで妹の印象も悪くなってしまう…
でも、1つくらいは欲しいからいいだろう…
「分かった…もし5つ以上だった場合1つはお前に譲ろう…」
わかっていただきありがとうございます。
俺はぺこりとお礼をして、『それでは、家族を追いかけなければいけないので失礼します。』と言い、ギルドに向かった。
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ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回で…




