枯草
男は窓際に横たわる。その手は死んだ蝉の足のように縮こまって、二つの目玉が天井の白の生む視覚の雑音だけを眺めている。唯一枕に重力を与えて、地球と合併したその身は、天蓋の墜落を引き受ける。
新たな生命の芽生えを告げる光子の集まりが、カーテンの調和ある破れから紛れ込んで、男の影を東に捧げる。やがてそれらが影を侍らせることに一層執着し、その傾きの中で、男の四肢は海藻のように揺らめく。
手に持っていた本は床の浜辺に打ち上げられて、マグカップは痣を残し干からびた音を掻き立てる。変数の所有物だった部屋で、有理が声を掲げる。
男は骸に至った。それの体には緋色が回って、皮膚は生気で湿っている。そして、喉に蝋の毬栗を抱える。鼻の粘膜に赤潮の波が打ち付ける。脳は緑の死を継ぐ粒子に、彼らの反逆に、巧みにジャックされる。自我の消失を孕む。
脳は失う。
可能性と、歪みと、揺らぎと、差別を。
信号と、決意と、計算と、信仰を。
輪廻を待つ。
二つの目玉が、瞼の闇で雑音を失う。
天井の白で雑音を生む。
男は骸に至る。
瞼の闇で雑音を失う。
天井の白で雑音を生む。
自我の消失を孕む。
瞼の闇が雑音を生む。
男は骸に至る。
天井の白が雑音を生む。
男は骸に至る。
最期に輪廻を迎える。
結論:花粉症で鬱になりかけた