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異世界で僕は美少女に出会えない!? ~《ウェステニラ・サーガ》――そして見つける、ヒロインを破滅から救うために出来ること~  作者: 東郷しのぶ
第四章 バイドグルド家の白鳥

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仲良し少女3人

 翌日、馬車の中。

 僕はフィコマシー様・シエナさん・ミーアへ、昨晩の事情を説明した。


 今朝の寝起きの際の反応は、3人(さんにん)3様(さんよう)だった。


 目覚めた直後に、僕と顔を合わせて。


『サブロー、おはよ~ニャン』と(ほが)らかに挨拶してくれたミーア。

 ちょっぴり驚き、恥ずかしそうに(うつむ)いてしまったフィコマシー様。

 仰天し、「あぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃ~!!!」と奇声を発したシエナさん。落ち着かせるのに、苦労しました。


 僕は、3人へと話す。


 魔法によって彼女らを眠らせ、貴賓(きひん)ルームへ侵入してきた男がいたこと。

 ソイツは僕に発見されるや、窓から退散したこと。

 その後、僕は部屋に待機して、朝まで寝ずの番をしたこと。


 ミーアは『サブローが助けてくれたのニャン。サブロー、ありがとさんなのニャ』とお礼を述べてくれる。


 シエナさんは「不覚を取ってしまいました。惰眠をむさぼってしまうなんて、メイド失格です」と酷く落ち込む。

 車体の底を突き抜けて、地面にめり込んでしまいかねないヘコみっぷりだ。

 

 フィコマシー様は、不安そう。

 自身の知らぬ間に、寝室へ男が2人も押し入ってきていたのだ。無理もない。


「フィコマシー様、ご心配なさらずに。御身(おんみ)に関して、男には指一本触れさせていません。もちろん、シエナさんにも、ミーアにも」


 3人の少女へと微笑む。


「あ、あの、それなら……椅子に腰掛けていた私が、何故朝方にはお嬢様やミーアちゃんと同じベッドで寝ていたのですか?」


 シエナさんが、訊いてくる。

 うっ……こ、答えにくい。


「そ、それは僕が……抱きかかえて、運びました……。眠った状態のシエナさんを、あのまま椅子の上に座らせておくのも……」


 付け加えると、3人が同じベッドの中に居てくれるほうが、危急の際に護りやすいと考えたのだ。

 天蓋付きの寝台は、3人一緒でも余裕で眠れるくらいデカかったし。


 でも思い直してみると、デリカシーが無さすぎたかな。

 シエナさんが再び、「ピピピピピ」と奇声を上げている……。


「申し訳ありません。けれど、誓ってオカしな真似はしていませんので」

「オ……オカしな真似っててて?」


 シエナさん、動揺しまくり。


「変なところには、触っていません!」

「へへへへ変なところってててて?」


 シエナさん、パニック寸前。


「え? そ、その、それは胸とか……」

「そんな! サブローさん、ご遠慮なさらずに!」

「え?」

「え?」



「しかし、部屋へ侵入してきた男は何者なのでしょう…………魔法使いだったのですよね?」


 フィコマシー様が、問いかけてくる。


「ええ、僕と同じくらいの年齢の少年でした」

「やはり、一昨日の馬車襲撃犯と関係が?」


 沈着さを取り戻したシエナさんが、話に加わってくる。

 しばらく「ピヨピヨ」と(さえず)っていたが、故障箇所を自力で修復したみたい。


「男は、そのような口吻(こうふん)をもらしていましたね」


 ふざけた態度ではあったが。


「そして……」

 僕は、口籠もる。


 これは、打ち明けても大丈夫な内容なのか? 

 いや、フィコマシー様たちは当事者だ。隠し事は、良くない。


「男は、王子の命令で動いているようなことを口にしていました」

「な!」「ええ!?」


 フィコマシー様は息を呑み、シエナさんは狼狽(うろた)えた。


「心当たりが、おありですか?」


 僕の質問に答えるのを、フィコマシー様は逡巡(しゅんじゅん)する。代わって、シエナさんが教えてくれた。


「王太子殿下は、オリネロッテ様と親密な仲なのです」


 王太子殿下は現在17歳、4つ下の弟妹が居るらしい。王子と姫の双子だとか。

 そして王太子はオリネロッテ様を婚約者にしたくてたまらず、ただ今絶賛求愛中。


 だが、いくらオリネロッテ様に好意を向けているからと言って、それで王太子がフィコマシー様へ害意を抱くだろうか? 意味が分からないし、理屈に合わなさすぎる。まして、弟殿下は更に関わりなど無いはず。


 う~ん……。


「まぁ……そもそも、信用ならない侵入者の発言ですからね。こちらを惑わすための、偽情報かもしれません。〝王子〟と言っても、ベスナーク王国以外の王子である可能性もありますしね」

「そう……ですね……」


 フィコマシー様が考え込む。


「それと、聖女……」

「聖女……ですか?」


 僕の片言に、シエナさんは小首を傾げた。


「ハイ。その不審な男は、しきりに『聖女』なる単語を口にしていたのですよ。シエナさんは、何かご存じですか?」

「聖女様は、伝説的な存在です」


 シエナさんが、語る。


「かつて、このウェステニラにおいて、魔族とそれ以外の種族との間で大きな争いがあったそうです。邪悪と正義の、戦争です。無論、人間も魔族と戦いました。その折に、正義の陣営には2人の聖女様が降臨されたと伝えられています。女神様より祝福を授かった聖女様……。いずれの聖女様も、人間であられたとか」


 聖女が……2人?


「聖女様のご尽力(じんりょく)により、正義の軍は魔族に勝利することが出来ました。以降、ウェステニラの多くの地域で、聖女様は敬愛や信仰の対象となっています。女神様の化身(けしん)見做(みな)している方々も、少なくありません」

「なるほど……あの男、何故『聖女』なんて言葉を口走っていたのか……」

「聖女様に過度な思い入れのある……なんらかの狂信者……なのでしょうか?」

「……分かりませんね」


 シエナさんの疑問に、僕は解答を返すことが出来ない。

 フィコマシー様に続いて、僕とシエナさんも思考の迷路へと入り込んでしまう。


 聖女……女神の化身……魔族。

 ん? ちょっと、待て。あの黒ずくめの少年、やはり魔族だったのではないか? 


 魔族の少年が、ベスナーク王国あるいは他の国の王子の命令を受けて動いている?

 では、聖女とは? アイツは確か、『壊れた聖女』と述べていたような……。


 もしかして、聖女は……。

 僕はチラリと、フィコマシー様へ目を走らせる。


 まさか……ね。


 さて、どうしよう? フィコマシー様やシエナさんへ、これも告げるか?


 ……………………。

 僕は、首を軽く振る。


 いや、止めておこう。

 いくら何でも、この情報は怪しすぎる。殆どが、僕の直感にもとづく憶測だ。今更確認しようもない話をしても、いたずらにフィコマシー様たちの不安を煽ってしまうだけだ。


 僕らは今日中には、ナルドットに到着する。そうなれば、フィコマシー様とシエナさんはバイドグルド家の庇護下に入る。

 冷遇気味とは言え、フィコマシー様は御領主様の実の娘なのだ。襲われたと知ったら、キチンと守ってくれるはず。

 僕の護衛の役目(?)も、おしまいだ。


 侯爵家ならば騎士が多数仕えているだろうし、お抱えの魔法使いも居るに違いない。彼らは、僕なんかより、よっぽど頼りになる。フィコマシー様たちは、安全だ。

 一介の風来坊に過ぎない僕がアレコレ気に掛けるのは、余計なお世話というものだよね。


 もとより、フィコマシー様及びシエナさんとは、ナルドットへの道中を共にしただけの間柄(あいだがら)


 街に着けば別れることは、最初から決まっていたのだ。彼女たちは侯爵家へと赴き、僕とミーアは冒険者になるべく頑張る。僕らの運命は、一瞬交差したのみ。おそらく、再び交わることは無い。

 僕に出来るのは、彼女たちの未来が幸運であるように祈ることくらい……。


 と、ミーアが突然『シエナの武術のお師匠様が、にゃんとスナザ叔母さんだったのニャ!』と猫族語で興奮気味に僕へ報告してきた。


 僕・フィコマシー様・シエナさんの3人が揃って沈み込んでしまったため、車内の空気を変えようと思ったみたい。

 ミーアはただ無邪気なように見えて、意外に気を遣うタイプだ。


 良し! ミーアの配慮に乗らせてもらうとするかな。

 それに、その知らせには純粋にビックリしたしね。


 僕がシエナさんのほうへ顔を向けると、メイドさんは笑顔になっていた。

 ミーアのお喋りの中身を察したらしい。


「私も、ビックリしました。ミーアちゃんとスナザ様は同じ猫族、しかもお2方(ふたかた)とも黒猫なので、『ひょっとしたら』とは推測していたのですが。スナザ様は私に体術や武器の扱い、それ以外にも広い世界より得た知識など、イロイロな事柄をたくさん教えてくださいました。とても、素敵な女性でした」

『さすが、スナザ叔母さんニャ!』


 ミーアは大喜びしつつ「アタシも、スナザ叔母さんみたいな、立派な、冒険者になる、のにゃ」と人間語で(おの)が意気込みを発表する。


 ミーアの決意表明を聞き、フィコマシー様もシエナさんもニコニコしている。


 昨日までのミーアはフィコマシー様には(なつ)いていたけど、シエナさんに対してはやや他人行儀に接していた。でもスナザ叔母さんがシエナさんの先生であった事実を知り、認識が変化したようだ。

 ミーアは、シエナさんのことを更に好きになったらしい。心を許しているのが分かる。


 猫族少女のおかげで、馬車の中の雰囲気は明るくなった。


「ミーアちゃんも、叔母に当たるスナザ様から武術の手ほどきを受けたのでしょう? するとシエナとミーアちゃんは、どちらもスナザ様の教え子。姉妹(きょうだい)弟子ですね」


 フィコマシー様の指摘を受けて、シエナさんもミーアも凄く嬉しそうな表情になる。


 シエナさんは「私は1人っ子だったから、妹が欲しかったのよね」とニマニマしているし、ミーアはミーアで『アタシのほうが早くスナザ叔母さんに鍛えてもらったんニャから、アタシがお姉ちゃんニャ。妹が増えたのにゃ。姉は、大変なのにゃ』と猫族語で呟いている。


 どうも、2人とも自分が〝姉〟で、『新しく出来た妹の面倒を見なきゃ!』と勇み立っているらしい。


 フィコマシー様とシエナさん、そしてミーアの仲が急速に深まっている。


 ()(かな)()(かな)。仲良きことは、美しき(かな)

 しかし、ホンのちょびっと疎外感。


 シエナさんの話によると、彼女は4年ほど前に、旅の女剣士と冒険者をやっているスナザさんより、ミッチリ武術を仕込まれたそうだ。


 それでメイドであるにもかかわらず、シエナさんはあんなにレイピアの扱いが上手だったのか。

 あと、女剣士はフードファイターでもあったそうです……何だ、それ?

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― 新着の感想 ―
シエナさんは、バグり方が酷いですな〜。 寝ている間に揉まれても意味ないでしょうに。 (´ε`) 聖女の情報を二人が持って無かったのは意外です。 魔族側しか、情報を持っていないのかな? 人間側がポンコ…
[良い点] シエナさんの遠慮なくには吹き出しました。本当は中身は恋愛ポンコツメイドですものね。リアクションが乙女で可愛らしかったです。そして、聖女について、サブローがどんな結論、推察をしたのか、気にな…
[一言] シエナさん大暴走… いいぞもっとやれ!(某スタンプ風)
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