8章までに開示された聖女に関する設定の解説 ※ネタバレあり + 小話
設定解説と、おまけの小話の回です。
作品内における《聖女》がどのような存在なのか、少々ややこしくなったため、8章までの段階で分かっていることを簡単に述べさせていただきます。
ネタバレ全開ですので、ご注意ください。
キーパーソンとなっているのは、6人の少女です。
◯女神ベスナレシアの聖女関連
・フィコマシー(バイドグルド家――ナルドット侯爵家の長女・16歳)
・シエナ(フィコマシーのメイドで、彼女の腹心・17歳)
・オリネロッテ(バイドグルド家の次女で、フィコマシーの妹・15歳)
◯女神セルロドシアの聖女関連
・アレク(本名はアレクサンドラ・16歳)
・ソフィー(アレクの腹心・本名はソフィールイザ・22歳)
・聖セルロドシア皇国の皇帝(アレクの妹・15歳)
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以下、箇条書き風の説明です。
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1200年前の時代、ビトルテペウ大陸において魔族とヒューマン(人間・エルフ・ドワーフ・獣人など)との間に大戦争――《聖魔大戦》が行われた。
戦争の最中、魔の女神――魔神レハザーシアは《魔王》を魔族の指導者として地上へ遣わす。
それに対抗するために、双子の女神ベスナレシアとセルロドシアは、各々の加護を与えた2人の《聖女》を地上に誕生させた。聖女はヒューマンを率いて、魔族と対決する。
戦いはヒューマン側の勝利に終わり、魔王は2人の聖女の力によって封印された。
その後、ベスナレシアの聖女はベスナーク王国を建て、ベスナレ教を創始する。
一方、セルロドシアの聖女は聖セルロドス皇国を建て、セルロド教を創始する。
※聖セルロドス皇国は最初は《セルロドス王国》という名であったが、途中で国名が変更され、その頃からセルロド教の教えも〝人間至上主義〟のほうへ変質していった。
サブローがウェステニラへ転移してくる16年前に、魔王に施されていた《拘魔の封印》が綻び、勢いを得た魔族はヒューマンへの反攻作戦を開始する(魔族の本拠地は、トレカピ河の北――タンジェロ大地にある)。
時を同じくして、トレカピ河の南――ベスナーク王国に《ベスナレシアの聖女》であるフィコマシーが、聖セルロドス皇国に《セルロドシアの聖女》であるアレク(アレクサンドラ)が生まれた。
※双子の女神(ベスナレシアとセルロドシア)が、ヒューマンと魔族の新たな衝突に備えて、地上に聖女を再誕させた。
魔神レハザーシアは、生まれてくる2人の聖女へ《錯誤の呪い》を掛けた。それによってフィコマシーは容姿が偏って認識されるようになり、アレクは性別が反転して理解されるようになった。
現在、フィコマシーは過剰なまでに体型がポッチャリ(本当は、そうじゃ無い)に、アレクは男性である(実は女性)と、周りの人々も、フィコマシーやアレク自身も思い込んでいる。
※『聖セルロドス皇国の皇帝は女性しかなれない』という決まりがあるため、アレクは皇位を継承できなくなる。またフィコマシーはベスナーク王国の王太子から嫌われ、婚約者候補から外される。
本来なら聖女フィコマシーがベスナーク王国の王妃となり、聖女アレクサンドラが聖セルロドス皇国の皇帝となるはずであったのだが……。
フィコマシーの母親(侯爵夫人)とアレクの母親(皇国の前皇帝)が生きているうちは、呪いの効果は抑えられていた。フィコマシーは家族に愛されていたし、アレクは《アレクサンドラ》という本当の名前で呼ばれもしていた。
しかし7年前に侯爵夫人も前皇帝も亡くなり、フィコマシーとアレクへの周囲からの迫害が激化する。場合によっては〝居ない者〟として扱われるようになる。
フィコマシーはシエナを除いて味方が皆無となり、アレクはソフィーと共に皇国の外へと脱出した。
ベスナレシアとセルロドシアの《聖女への祝福》、そしてレハザーシアの《錯誤の呪い》は、真の聖女たち(フィコマシーとアレク)が母親の胎内にあるうちに行われた。
双子の女神の神聖力と魔神の神魔力――その絶大なパワーの二次的影響により、フィコマシーの妹(オリネロッテのこと)とアレクの妹(現在の聖セルロドス皇国の皇帝)は《聖女》として誤認識されるほど魅了の力を、無自覚に発揮するようになっている。けれど、強すぎる力を受けて、狂っていきつつもある。
※《天界定律》――天上世界の決まり事によって、原則的には、神々は地上での事件に介入できない。レハザーシア・ベスナレシア・セルロドシアの3神は、それぞれギリギリの線を計算しつつ、魔族とヒューマンの争いに関与しているが、あからさまに干渉すると、他の神々(特に主神パンテニュイ)から咎められ、制裁される――ケースによっては消滅させられる可能性もある。
魔族は2人の聖女の存在を知り、その抹殺を企んでいるのだが、直接に殺すことは出来ない。魔神レハザーシアにより、固く禁じられているためだ。
※女神に加護されている聖女を魔族がダイレクトに殺めると、ベスナレシアとセルロドシアが怒りのあまり、魔神レハザーシアや地上の魔王を攻撃してきて《神々の戦い》が勃発し、世界の均衡が崩れてしまう怖れがある。
逆の意味で、ヒューマン側も魔王の生命を直接的に奪うことが出来ない(レハザーシアの怒りを警戒して)。それゆえに、先の大戦において2人の聖女は、魔王を殺さずに封印した。
フィコマシーとアレクが自ら生命を絶ってしまうように、魔族は2人を精神的に追い込もうとしている。その方法が、彼女たちの腹心――シエナ(フィコマシーの唯1人の専属メイド)とソフィー(元・皇国の近衛騎士)を殺すこと。
シエナはフィコマシーの、ソフィーはアレクの、絶対的な心の支えになっている。2人が居なくなったら、聖女たちが生きる気力を失ってしまうのは間違いない。
つまり現在、魔族から最も生命を狙われているのは、シエナとソフィーである。
中でもシエナは、フィコマシーとベスナーク王国の王都ケムラスへ帰った場合、アルドリュー(王太子の側近。おそらく魔族)が待ち構えているため、かなり危ない。
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以上で、説明終了です。要するにヒロインたちのピンチは、今後も続く……ということです(汗)。
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※おまけの小話です(内容はコメディー)。
登場人物が、メタ発言をします。本編とは一切、関係ありません……。
◯その1――シエナとフィコマシーの会話
「フィコマシーお嬢様、大変です!」
「どうしたの? シエナ」
「8章で、私たちは1度も登場しませんでした。これは由々しき事態です」
「そんなに心配しなくても……。〝ある時期においてレギュラーキャラが不在〟な例は、物語が長編の場合、よくある事らしいですし」
「油断してはいけません! 私はもちろん、お嬢様も、フェードアウト現象に巻き込まれないように注意しなければ――」
「フェードアウト現象?」
「レギュラーだったはずの人物の出番が次第に少なくなっていき、気が付いたら、作者も読者も、その存在を忘れてしまっているという……そんな現象のことです」
「なんて、怖ろしい……」
「漫画などでは、最終回の集合イラストで、端っこのほうにチョット顔だけ描いてもらう……お情けで出してもらう……そんな〝みじめっ子〟に成り果ててしまうのです」
「哀しすぎますね」
「最悪、読者の皆様から『あれ? 最終回なのに、新キャラが登場している。変なの』などと言われるハメに陥ります。長篇漫画では、最初と最後で絵柄がスッカリ変わっているケースも少なくありませんから」
「シエナは〝漫画という文化〟について詳しいのですね」
「メイドたる者、当たり前な知識です」
「メイドは全然、関係ないと思います」
「どちらにしろ〝長期にわたる作品内での欠席〟というのは宜しくありません。知らないうちに、サブローさんが、クルクル巻き巻きヘアーな女性に唇を奪われている……なんて大事件が起こっている可能性も」
「ふふふ。シエナは、おかしな話をするのね。そのような事、あるはずも無いのに」
「申し訳ありません。突飛すぎる想像をしてしまいました。私って、アンポンタンですね」
「本当に」
「え?」
「え?」
「…………」
「…………」
「アハハハ」
「うふふふ」
「とにかく、お嬢様。小説であろうと漫画であろうと、長篇モノの登場人物は、ポジションキープのために注意を怠ってはいけないのです!」
「なるほど」
「私は頑張ります! 絶対に、メインヒロインの座を守り通してみせます!」
「え? シエナがメインヒロイン?」
「あ。間違えました。メイドヒロインです。私はメイドなので」
「ですよね」
「メインヒロインのポジションは、誰にも譲りません!」
「メイン?」
「また、間違えました。メイドヒロインのポジションです。私以外にも、メイドキャラは居るので」
「…………」
「――メインヒロインの誇りに懸けて!」
「ねぇ、シエナ。貴方、わざと『メイド』と『メイン』を言い間違えていない?」
◯その2――ドリスとキアラの会話
「ねぇ、キアラ」
「なに? ドリス」
「アナタ、設定では〝無口キャラ〟になっているわよね?」
「そう」
「それにしては寡黙だったのは最初だけで、そのあとは作中でメッチャ喋っているじゃない。キャラ設定が崩壊していない?」
「大丈夫」
「どうして?」
「心配無用」
「何故に、自信たっぷり……」
「私が喋っているのは本作中の登場シーンだけで、出ていないときは黙っているから。ドリスや他の皆は、登場していない時でも話しているけど。舞台上と舞台裏を合わせると、トータル的には、私は〝無口キャラ〟になる」
「そんな、都合が良い話……」
「母は私に教えてくれた。『〝都合が良い女〟になっちゃダメ。でも時と場合によって〝都合が良い女〟を演じることは大事』って」
「キアラのお母様は、そういう意味で言ったんじゃ無いと思う」
◯その3――9章に関する予告風なナレーション
可憐な猫族少女であるミーアが誘拐されてしまった!
前代未聞の緊急事態! ミーアを救うために――
サブローが動く!
フィコマシーとシエナも動く!
オリネロッテも動く! 彼女の陣営の者たちも動く!
冒険者ギルドも動く!
《世界の中心で獣人への愛を叫ぶ会》のメンバーも動く!
《世界の片隅から獣人を愛でる会》のメンバーも動く!
《飾りじゃ無いのよケモミミは~、あっは~会》のメンバーも動く!
怒濤の総攻撃!
果たして、ミーアを掠った誘拐犯たちの運命は……?
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「……あの、サブローさん」
「なんでしょう? シエナさん」
「この予告の内容だと、ピンチに陥るのはミーアちゃんじゃ無くて、誘拐犯たちのほうになっちゃうように思えるのですが……?」
「気のせいです」
「そ、そうですよね! 気のせいですよね」
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「サブロー。ミーアちゃんが誘拐されたというのは本当か!?」
「あ、リアノン。そうなんだよ――」
「おのれ! オークどもめ、絶対に許さんぞ! その太い首をまとめてポーン! としてくれる。ドングリと一緒に、ドン首もコロコロだ~!」
「あの、やる気満々なのは結構ですが、まだ犯人がオークと決まったわけじゃありませんよ?」
「何を言う? サブロー。たとえミーアちゃんの誘拐に直接に関わっていなかったとしても、この世の諸悪の根源にオークの存在があるのは間違いないことだ。オークは撃滅すべし、即滅すべし、必滅すべし」
「殺意のレベルが高すぎる……どうして、リアノンはそこまでオークを憎むの?」
「教えてやろう! あれは、私が幼き日のこと。両親は家に居なくて……父上の書斎で1人で遊んでいたとき、本棚の奥に1冊の本を見つけたのだ。タイトルは『最後の就職戦線――エリート女騎士 VS 素寒貧オーク』だった」
「リアノンの父上って……」
「その本に載っている話の中で、オークは悪逆非道の限りを尽くしていた。私は読みつつ、義憤を抑えきれずにブルブルと震えてしまったよ。そして、誓ったのだ。『邪悪なオークどもを、この世界から必ず駆逐してみせる!』と」
「幼いリアノンが、そこまで怒るなんて……いったい、どんなストーリーだったの?」
「うむ。簡単に内容を説明すると――
『オレ、オーク。女騎士、結婚して』
『なんだと!』
『オレ、いま無職。勤めていたモンスター・カンパニーから首切りされた』
『リストラされたのか』
『女騎士はエリート。養って』
『そこに愛は?』
『無い』
『私の収入目当てで求婚してくるとは……く! コロしてやる! 首を刎ねてやる!』
――という話だった」
「へ~」
「オークはカンパニーから雇用面で首を切られ、女騎士からは物理面で首を切られた」
「そうなんだ」
「生活費が欲しくて、それのみで結婚を申し込むとは……まさに家畜……では無くて、鬼畜の所業だ。オーク、許すまじ! 斬首確定!」
「オークは求婚の前に、求職すべきだったね」
「そう言えば……サブローも無職じゃなかったか?」
「え! ち、違うよ! 僕は、ちゃんと冒険者になってるよ! 収入もあるよ! 本当だよ!」
「良し! ならば、父上に会ってもらっても安心だな」
「なにが、安心!? いろいろな意味で、リアノンの父上には会いたくないんですが」
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「ニャ~。サブローは、きっと助けにきてくれると思うけど、その前に自力で脱出をするニャン。そうしたほうが良い気がするニャ」
次回から9章スタートです。




