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異世界で僕は美少女に出会えない!? ~《ウェステニラ・サーガ》――そして見つける、ヒロインを破滅から救うために出来ること~  作者: 東郷しのぶ
第七章 冒険者パーティー《暁の一天》5+1

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番外編『アナタがビキニに着替えたら』(イラストあり)

『ビキニの回』始まるよ~。


※前話の「小話・その2――《アナタがビキニに着替えたら》」の続きです。ページ途中に、ミーアのイメージイラストがあります。

 今回のサブローはテンションがかなりオカしいので、ご注意を。

「あ。それは水着に着替えるんです」


 ビックリ仰天な、チャチャコちゃんの発言。その衝撃に、ウェステニラの大地は激しく揺れ動いた! ……とさえ思えた。

 な、なんという奇跡(ミラクル)! 中世ヨーロッパ風の……《剣と魔法の世界》であるウェステニラに、水着があるなんて! 素晴らしすぎる。


 う。

 妙に、ドキドキした気分になってきたぞ。胸の奥より湧き上がってくる、この熱い思いは……これは、期待感? ふむふむ。16歳の健全な若者として、当然すぎる心理の反応ですね。


〝水着〟かぁ……ワクワク。でも、どんな水着なんだろう? ワンピース? セパレート? それとも、も、も、もしや、ビ、ビキニ――


 ああ。今の季節は春なのに、夏の風を肌に感じる。空には白い入道雲が見える! あと、心地よい潮騒(しおさい)が耳へと響いてくるよ。



 そう。ここは、南国。青い海。美しい浜辺で、はしゃいでいる――ビキニ姿のミーア。(まぶ)しい。


   挿絵(By みてみん)


※注意! ミーアの姿は、サブローが真美(しんび)探知(たんち)機能(きのう)を使用した場合の〝人間バージョン〟になっています。それと正真正銘、サブローの妄想の産物であるため、胸の大きさが多少、盛られています。実際のミーアの胸は、もっとペッタンコです。



「サブロー! 早く、こっちへ来るニャン。海の水、冷たくって気持ち良いニャよ」

「ミ、ミーア」

「にゅ? どうして、サブローは海のほうばっかり眺めてるニョ?」

「それは、今のミーアの姿が可愛すぎて、まっすぐに見られないからだよ」

「…………そ、そんニャ事を言われたら、アタシも恥ずかしくなっちゃうニャ」


 僕はゆっくりと、ミーアへ目を向ける。モジモジと照れる、ビキニの彼女が……。


「ミーア」

「サブロー」


 そして、僕とミーアは見つめ合い――


 波が、ざっぷ~ん。



「サブロー。(にゃに)をボーとしているニョ?」

 ミーアの(いぶか)しげな声を聞き、ハッと我に返る。目の前には、いつものケモノっ()なミーアの姿が。うん。このミーアも可愛い。


「なんでも無いよ、ミーア。ところで、チャチャコちゃん」

「どうしました? サブローお兄ちゃん」

「僕は詳しく知らないんだけど、ナルドットの水泳場で皆が着ている水着って、どんなものなのかな?」


 さりげなく、探りを入れてみる。

 ちょっと首を傾げる、チャチャコちゃん。その動作と同時に、彼女のツインテールが軽やかに揺れた。


「サブローお兄ちゃんは、ご存じないのですか?」

「その通りなんだよ。僕もミーアも、水着とは(えん)が無い生活をしてきたからね」


 ミーアは森で生まれて育ったし、僕だって少なくともウェステニラへ転移して以降は、水着姿の女の子にお目に掛かったことは無い。まことにもって、遺憾(いかん)の意を表したい。

 ちなみに、水着姿のウェステニラの男性に会った記憶も全く無いけど、野郎(ヤロー)の格好などは、この際、どうでもいい。


 僕の話の内容について、ミーアも肯定してくれた。

「そうなのニャン」


「なるほど。つまりサブローお兄ちゃんもミーアお姉さまも、水着をお持ちでは無いのですね。一応、水泳場(すいえいじょう)では水着の貸し出しも行われていますが、ご自身専用の物を買って、用意をなさっておくほうが、私は良いと思います」


 チャチャコちゃんの説明を聞き、僕の思考は一瞬、止まる。


「ええ!? ナルドットでは、水着の販売もしているの?」

「ハイ。服飾(ふくしょく)専門店で購入できますよ。水泳場が本格的に(にぎ)わうのは夏が近づく、もう少し先の時期ですけど、水着は一年を通して売っています」

「よし! だったら早速、明日、ミーアの水着を買いに行こう! 〝善は急げ〟だ!」

「サ、サブロー。アタシ、別に水着を欲しいにゃんて思って無いニャン」


 勢い込む僕とは対照的に、ミーアはちょっと気後(きおく)れ気味だ。猫族のミーアは水が苦手なため、積極的に泳ごうとは考えないのだろう。

 しかしながら。


「ねぇ、ミーア。水着を買ったからって、無理に泳ぐ必要は無いんだよ。けれどナルドットに住んでいる以上、運河やトレカピ河と関わりがある生活を、僕らは、せざるを得ない。それこそ、冒険者として、運河の中へ飛び込まなくちゃいけない事態に出くわす可能性だってある」

「…………」


 僕の説得を受け、ミーアの瞳に迷いの色が見えはじめる。

 ここは、押すのだ! 僕の胸の内に満ちているのは、ミーアの頑張りを温かく見守る、いわば〝下心(したごころ)〟――では無くて、〝親心(おやごころ)〟なんだから。


「ミーアの夢は『立派な冒険者になること』なんだよね? 水が怖いからって、逃げてちゃダメだと思うんだ。じょじょに、水に慣れていこうよ! そのための第一歩が〝水着の購入〟なんだよ」

「で、でも、お金を無駄遣いしちゃうニョは――」

「大丈夫! 一本角熊(ユニコーンベア)を退治したときに得たお金が、まだまだいっぱいあるからね。赤猫さん……じゃ無くて、チュシャーさんのご厚意により、貰った資金だ。こういう時に出し惜しみしてたら、意味が無いよ!」


〝ミーアの水着を買う〟以上に価値があるお金の使い方なんて、如何なる世界にも存在するはずが無い。


「にゅ……チュシャーさんが……」

「『ミーアが泳げるようになった』って知ったら、猫族の村の皆も喜ぶよ!」

「そうかニャ? パパもママも?」

「もちろん! 『自慢の娘だ』と言って、大喜びすること間違いなしさ!」


 僕がそう言い切ると、ミーアはこっくりと頷いた。


「サブロー。分かったニャン。アタシ、水着を買うことにするニャン」


 僕とミーアの話し合いを静かに聞いていたチャチャコちゃんが、「明日、ワタシが、そのためのお店へご案内します」と言ってくれた。感謝するよ! チャチャコちゃん。


「幸い、ここ数日は、(あに)ぃは商用で遠出していてナルドットに不在です。兄ぃが居ないうちに、ミーアお姉さまの水着の購入を済ませてしまいましょう」


 確かにバンヤルくんが居たら『俺がミーアちゃんの水着を選ぶ!』とか宣言して、大騒ぎしそう。


《鬼の居ぬ間に洗濯(せんたく)》ならぬ、《(あに)ぃの居ぬ間に水着の選択(せんたく)》だ!



 翌日。

 僕とミーアはチャチャコちゃんに案内してもらい、水着を売っているお店へとやって来た。


「あれ? ここは……」

 見覚えが、あるぞ。


 目当てのお店は1階建ての服飾専門店だが、その隣にドデカい3階建ての建物がある。


「サブロー。隣は、ツァイゼモさんのお店ニャン」


 あ。そうだった。ナルドット有数の大店(おおだな)である、ネポカゴ商会の本店だ。僕は『ぐっふっふ』と余裕たっぷりに笑う商会の会長、ツァイゼモさんの姿を思い出した。


「水着を販売している、このお店も、ツァイゼモ様が経営なさっているんですよ」

 と、チャチャコちゃんが教えてくれる。


 そうなんだ。さすが、大商人。ヒキガエルっぽい容姿のツァイゼモさんは、水関連の商品にも強いに違いない。なんと言っても、カエルは両生類だからね。


 店内へ入る。


 ミーアの水着を選ぶ際には、ぜひ僕の主張も参考にしてもらおう! ビキニは良いよ! 必ずやビキニを! お勧めはビキニ! ビキニ万歳(ばんざい)! ビ~キ~ニ~! と勇み立っていたのに、肝心な時に、僕は水着販売のコーナーから追い出されてしまった。


「ミーアお姉さまの水着は、ワタシと女性の店員さんで選びます。サブローお兄ちゃんには、後で確認してもらいます」


 チャチャコちゃんの意見がもっとも過ぎて、反論する余地(よち)を見いだせなかった。無念。

 まぁ、でも、ミーアの水着姿をすぐに目にすることが出来るんだから……。


 ソワソワしながら、待つ。


「サブローお兄ちゃん。もう、良いですよ。来てください」


 最速で、チャチャコちゃんの声がする場所――水着コーナーへ行く。ビキニだ! きっと、ビキニに違いない!


「じゃ~ん。ミーアお姉さまに、水着を着てもらいました」

「ど、どうかニャ? サブロー」


 え? あ、う~ん…………なんか、予想とは違う。


 ミーアがお(ため)しで着用している水着は、ビキニでは無かった。セパレートでも無かった。ワンピース……ではあるけど、身体全体が生地(きじ)で覆われていて……長袖(ながそで)で、胴体部分は首まで布で隠れているし、スカートの長さは膝下(ひざした)まである。更に、スカートの下には足首へ届くパンツを履いている徹底ぶりだ。


 なんだコレ? 色っぽさもオシャレ感も、カケラも無いぞ。なにより、この服――水着? は、身体にピタッとしていない。ダボッとしている。外から見て、身体のラインが全く分からない。上下ともにダブダブで、おまけにミーアは、頭にスイムキャップみたいな帽子を被っている。せっかくの猫耳が、隠れちゃっている。


〝水着〟と言うより〝寝間着(ねまき)〟としか思えないんだが……。


「え~と。チャチャコちゃん。このお店で売っている水着で、違う種類のものは無いのかな?」

「何を変なことを仰っているんですか? サブローお兄ちゃん。ナルドットのみならず、ベスナーク王国、いえ、ウェステニラにある水着は、全てこのタイプですよ」


 チャチャコちゃんの無情な宣告が、耳へと届く。10歳の少女が発する残酷な言葉に、僕は心の中で涙を流す。

 そんなぁ……。


 ムムム。これは、いったいどういうことなんだろう?

 悩む。


 あ。分かったぞ。ミーアが今、身につけているのは、地球で言うところの〝ヨーロッパの19世紀の水着〟なんだ。女性が人前で肌を(あら)わにする行為について、まだまだ抵抗があった時代のスイミングスーツで、水に濡れても肌が()けない生地で作られていたとか。


 19世紀後半の地球は、もはや近代ではあるのだが……イロイロな面で中世の様相(ようそう)を色濃く残しているウェステニラでは、〝水着〟はあっても、この段階が限界なのか――


 身体にピタッとした水着が出現するのは、地球では20世紀。ビキニの水着が女性の間で普通に着られるようになるのは、20世紀も後半になってからだ。あと100年くらい()たないと、ウェステニラで女性がビキニを身につける光景を目にすることは出来ないのかもしれない。


 現在のウェステニラは『ビキニ革命、いまだ成らず』な状態というわけだ。すごく、ガッカリしちゃったよ…………けれど! 


 気を引き締め直す。

 今ここで正直な感想を述べちゃうことがマズいのは、いくら(にぶ)い僕でも分かる。


 ミーアが期待に満ちた眼差しで、僕を見つめている。絶対に褒めなくては!


「わ~。素敵だよ! 可愛いね、ミーア。水着が、とっても似合っている!」

「ありがとニャ。サブロー!」


 ミーアが喜んでくれる。そしたら、なんとなく僕も嬉しくなってきた。


 まぁ、良いか。ダボッとした〝地球の19世紀風の水着〟を着ているミーアの格好も、それはそれで可愛いのは事実だしね。あと、よくよく考えてみれば、真美探知機能による人間バージョンならともかく、ケモノっ娘のミーアが本来の猫族の姿でビキニを着ても、どんな外見になるか……イマイチ、想像できない。


 それはさておき、ミーアの水着の他に、僕も自分の水着を買った。男性の水着も、女性の水着と同じタイプのしか無かった。下半身部分はスカートじゃ無くて、ズボンっぽかったけど。しかも女性の水着は、それでも赤や黄色など色彩が華やかなバージョンもあったのに対して、男性用水着は白と黒のシマシマ模様しか売っていなくて……〝寝間着〟どころか〝囚人服〟に見えたよ。僕、こんなの着て、泳ぐの?

「サブローと、お揃いニャね!」とミーアが嬉しがってくれたから、無理矢理に笑顔で受け入れはしたものの、しょっぱい気持ちになっちゃうな。


 水着の代金は、ミーアの分も含めて、僕が支払うことにする。ミーアは「アタシのは、アタシが払うニャン」と主張してなかなか譲らなかったが、チャチャコちゃんが「ミーアお姉さま。ここはサブローお兄ちゃんに敢えて花を持たせてあげるのが、むしろ思い遣りなんですよ」と(さと)してくれた。


 チャチャコちゃんは気が()くね。ありがとう……って、君は本当に10歳なのかな?



 お店からの帰り道。

 僕はナルドットの街を歩きながら、今まで知り合った女性たちの水着姿を思い浮かべるよう、(つと)めてみた。『どうして、そんなことをするのか?』って? 知的好奇心を満足させる以外に、特に深い意味は無い。しかし、頑張ってみる。  


 ……で、今日購入したダボダボ水着なら容易に着てくれるのだが、ビキニについては、皆そろって拒否してくる。何故なのですか? ビキニは、素晴らしいのですよ! と僕は誰に向かってなのかは分からないが熱心に主張しつつ、アレコレと想像の翼を広げようとした。でも、結果はダメダメだった。〝情熱の鳥(イマジネーション)〟は、飛ばなかった。


 だって――


 フィコマシー様のビキニ姿は…………あらゆる方面で、なんだかイロイロと無理がある。

 オリネロッテ様のビキニ姿は…………彼女の性格、加えて身分的にも無理がある。

 リアノンのビキニ姿は…………ボディビルダーみたいになっちゃって、熱量的に無理がある。そもそもリアノンは女騎士であるにもかかわらず、ビキニアーマーに見向きもしない不届き者であるし。

 アズキのビキニ姿は…………これはもう、問答無用で無理がありすぎる。


『唯一』と言って良いほどに無理が無いのは、シエナさんである。『シエナさんのビキニ姿は最高だ~!!!』となりそうなものだが、僕の脳内イメージのシエナさんは、ビキニの水着を身につけた上で、何故か頭にカチューシャを装着している。……どうしてだ!? 


『シエナさん、カチューシャを外してください!』と要求してみるものの、彼女は不思議とその格好に、こだわり続ける。う~ん、これは……僕にとって、〝シエナさんはメイドである〟という印象が、強すぎるためか? まさか、シエナさんの本体はカチューシャで、それを外すと動かなくなる……なんて、アホな事はあるわけ無いけど。クラウディと決闘した時には、シエナさん自身の手から彼女のカチューシャを受け取ったしね。


 む~。カチューシャとビキニを組み合わせた、変な水着姿のシエナさん。ならばいっそのこと、ここは〝パレオ(巻きつけるスカート)〟も装着を! ……とシエナさんへ懇願(こんがん)している(おのれ)の妄想の有りさまを、冷静になって(かえりみ)る。


 性向(せいこう)がマニアック過ぎて、ドン引きだ。


 …………。

 想像の翼を、折りたたむ。そしたら、やけに短い翼をパタパタと…………飛ばない鳥は、よく見たらペンギンだった。水中を泳げるペンギンは、水着姿を連想するのに相応しい鳥ではあった。模様も先ほど買った、自分の水着と同じ白黒だし。


 僕はペンギン? どちらにしろ、ビキニとは無縁の鳥類だ。(あきら)めよう。



 いいや! まだ、諦めない! 飛ぶんだ、ペンギン! 『カノジョに(おとこの)ビキニを(ロマンな)着て欲しい(プランニング)』を終わらせるな!


※スミマセン。サブローが諦めないため、「小話・その2」は、まだ続きます。次回で本当に終わります。

 ミーアのイラストは、快盗ルビイロウムシ様(素材提供:きまぐれアフター様)よりいただきました。ありがとうございます! 


『ビキニの回』まだ続くよ~。

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― 新着の感想 ―
胸の大きさが多少、盛られています。 宜しい。其方とは「多少」という言葉の定義について、一週間ほどは議論を重ねる必要がありそうだ。 この戦い……負けられぬ! ᕦ(ò_óˇ)ᕤ ん? 湯着のような見た…
[良い点] まさかそも、続編があるとは!サブローの妄想が撃沈するのがとても面白かったです。本当に思春期にして煩悩のかたまりなんだから。ニヤニヤしながら読ませていただきました。面白かったです。 [一言]…
[一言] 寝巻の水着にビキニを拒絶する女性達!? なんという絶望的な世界ウェステニラ! サブロー君には大至急最優先でウェステニラの水着事情を改善して貰わなければ……
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