ソフィーさんと模擬戦
冒険者パーティー《暁の一天》のメンバー
アレク……リーダー。イケメンの少年。
ソフィー……サブリーダー。20代のお姉さん。
ドリス……土系統の魔法使い。くるくるツインテール。
レトキン……大柄な男性。趣味は筋トレ。
キアラ……ドワーフの女の子。体型は小っこい。
サブロー……本作の主人公。見習い。
〝ゴーちゃん大活躍〟が、収まって――
それから、僕がもっぱら用いている得物に関する話になった。
「僕の武器は、これです」
とククリを取り出し、皆に見てもらう。
全員が注目したが、中でもレトキンは取りわけ関心を示して、大柄な身を乗り出してきた。
「おお~。これは、凄い業物だな。差し支えなければ、どうやって入手したか教えてくれないか? サブロー」
「良いですよ。この刀の銘は『ククリ』というんですけど、獣人の森でダガルさんから頂いたんです」
「〝ダガルさん〟とは、何方かしら?」
ソフィーさんが尋ねてくる。
「ミーアのお父さんです。ミーアが僕の旅に同行することが決まった折に、贈ってくれたんですよ」
実際の経緯は少し違うが、説明はこんな感じで良いだろう。
ドリスが興味深げな眼差しで、僕を見た。
「〝ミーア〟って、さっき、キアラの話の中に出てきた猫族の女の子よね? アンタと、どういう関係? 一緒に旅をする仲で、彼女の親御さんがわざわざ立派な武器をアンタに持たせたとなると、アンタと〝ミーア〟という名前の子は、つまり……」
「確定。恋人同士だ!」
キアラが、嬉しそうに小声で述べた。
「え! そ、そうじゃありません」
僕は、慌てて否定する。が、キアラは何故か独り合点して、僕を説得してきた。
「恥ずかしがらなくて、良いのに……そこは、ぜひとも胸を張ってもらいたい」
あの、キアラ。貴方はどうして、そんなに僕とミーアをくっ付けようとするの? 10日ほど前のほんのひととき、辻馬車に同乗しただけで、ミーアとは言葉を交わしたことすら無いはずなのに。
レトキンが快活に笑った。
「あっはっは! 初々しいな、サブローは。要するに、アレだ。サブローとミーアさんとやらは、〝友人以上、恋人未満〟な関係なわけだ。〝はじまったばかりの2人〟というヤツだな」
「〝友人以上、恋人未満〟……分かった。それで妥協する」
レトキンの勝手な解説に、キアラが納得してしまった。
いや、ちょっと待ってよ!
「あの、僕とミーアは……」
「なんだ? サブローは〝友人以上、恋人未満〟じゃ、不満なのか? 贅沢だな」
「レトキンは、振られてばっかりだものね」
「ドリスは、手厳しいなぁ。まぁ、その通りなんだが」
そうなのか。レトキンは、失恋街道を驀進中なのか。これは、彼へ親近感を覚えてしまうな。
僕の中で、レトキンへの好感度が急上昇する。
ぜひ、レトキンにも《彼女欲しいよー同盟》に参加して欲しい。
ともに〝砂漠に咲いている花〟を追い求めよう!
「聞いてくれ、サブロー」
「なんでしょう? レトキン」
「つい先日、それなりに長い付き合いのあった女性に『君と俺は、どんな仲?』とさりげなく尋ねてみたんだ」
「おおう。それで、どうなったんですか?」
「アッサリと『他人以下、知人未満』と言われたよ」
レトキンは、笑顔のまま涙を流していた。
僕も泣いた。
名も知らぬ、女の人。そこは、せめて『他人以上、知人未満』と言う場面なんじゃないの? それはそれで、辛いけど……
男2人で涙に咽んでいると、ドリスが辛辣な口調でツッコんできた。
「だって、レトキン。アンタ、その女性に『貴方と私は、どんな仲?』と訊かれた時、『贅肉以上、筋肉未満』と答えたんでしょ。そりゃ、振られるわよ」
なんだソレ? マッスル・ラブにも、ほどがあるぞ!
レトキンへの同情心が、一瞬で消失してしまった。
「しかし、筋肉にハッスルしてしまうのは、男にとって避けられぬ宿命。大腿四頭筋の艶めかしさに匹敵する官能さを、彼女に求めるのは……」とかレトキンは呻いているが、もうコイツのことは無視しよう。
食事終了後も語らいは続き、《暁の一天》が探索や戦闘をする際のポジションの話になった。
ソフィーさんとレトキンが前衛で、敵と直接ぶつかる。
アレクとドリスは中衛で、弓矢や魔法により攻撃を援護。
キアラが後衛で、後方や左右などの全般を警戒し、場合によっては遊撃に回る。
――そのようなフォーメーションが、基本らしい。
なるほど。それぞれの特性を活かした、合理的な陣形だな。敢えて注文を付けるとしたら、おそらくパーティーメンバーの中で最も冷静な判断力を有しているであろうソフィーさんは、前衛では無く、いざという時に迅速に指示を出せる位置に居たほうが良いような気もするけど…………さすがに、それはメンバーの人数がもっと多くないと無理か。
アレクが僕へ、述べる。
「サブローには取りあえず、キアラと共に後衛になってもらう予定なんだが――」
「分かりました」
「そこで、まずはクエストを請け負う前に、君の腕を確かめておきたい」
「ハイ」
アレクの言葉に僕は頷く。
「しばらく休息した後、君には訓練場で模擬戦を行ってもらう」
「了解です」
♢
ギルドの建物の裏手にある、広大なグラウンド。
数日前、スケネーコマピさんを相手に武術試験を受けた場所――そこへ、僕たちはやって来た。
「サブローくんの対手は、私が務めさせてもらうわね」
ソフィーさんが微笑む。
僕は、一礼した。
「宜しくお願いいたします」
僕とソフィーさんは互いに木刀を構えて、向かい合った。審判役は、アレクだ。
《暁の一天》の他のメンバーは少し離れた位置から、僕とソフィーさんの様子を見守っている。
正面より、ソフィーさんを見据える。彼女は木刀の先を僕のほうへ向け、中段の姿勢を取っている。
圧力を、感じる。
彼女は……強い。クラウディには及ばないながらも、リアノンと同等か、それ以上のレベルだ。まぁ、リアノンは実戦になると途方も無いパワーを発揮するタイプだから、判断基準としてはあんまり当てにはならないけど。
精神を集中させる。
――が。
全身に、ズキズキとした痛みが走る。クラウディとの戦闘で負った傷が癒えていない――現在の僕の体調で、どの程度ソフィーさんと渡り合えるのか、正直に言って自信が無い。
実は、先ほどの食事どき。
僕の身体がどのような状態になっているのか、パーティーの皆に話そうかとも考えた。でも、止めた。
クラウディとの決闘について、その原因や結果を安直に述べるのはイロイロと問題がありすぎる。侯爵家の内情を丸ごと打ち明けるわけにもいかないし、下手したら、フィコマシー様やシエナさん、あるいは《暁の一天》のメンバーに迷惑を掛けてしまう可能性がある。
〝知られてしまうこと〟のリスクと〝知ってしまうこと〟のリスクと――どちらも軽視しちゃいけないと、思う。加えて、今もなお微量に掛け続けている回復魔法の効果がどれくらい経ったら表れるのか、現状ではハッキリしていない。以前の僕の身体に戻るのに掛かる日数は……いや、左肩や右脇腹の深刻な負傷を考えれば、そもそも〝元の自分〟になれるのかどうかなんて、分からない。
能力に関する僕の未来は、不確かだ。《暁の一天》の皆との信頼関係についても、未だ構築中の段階。憶測にもとづいて、いい加減な内容を話せるはずもない。
「――では、始め!」
アレクの掛け声とともに、ソフィーさんが瞬速で打ち込んできた。
躱すべきか、木刀で受け止めるべきか、咄嗟に迷う。く! 頭痛が続いているためか、一瞬の判断力が鈍くなっているな。
ガシ! と木刀を斜めに構えて攻撃を防いでみたものの――掌が、痺れる。腕が重い。脚が重い。五体が思うように動かない。
追い打ちを避けるために後方へ跳びすさったが、体勢を崩してしまった。
――しっかりしろ! 醜態を晒すな!
己を叱咤する。
ソフィーさんは、追撃をしてこなかった。落ち着いた目線で、僕の動作を見定めている。
息を吸って、吐く
よし。こちらより、攻勢に出るぞ。
勢いをつけて足を踏み出し、更に木刀を繰り出す。
2合、3合と、僕とソフィーさんの木刀がぶつかり合い、そのたびに甲高い音を立てた。
想像以上に、左腕が使えないな。しかし、その事実をソフィーさんに悟られたくは無い。
僕は攻撃のスピードを上げる。
木刀を思い切って、振り下ろした。ソフィーさんに一当て出来るか!? と期待したが、彼女は巧みな体捌きで僕の打ち込みをサッと躱してしまう。
すかさず、ソフィーさんは僕の喉元を目掛けて突いてきた。間一髪で、迫り来る木刀の先端を避ける。
ソフィーさん。なかなかに、えげつない攻め方をしてくるな。
僕とソフィーさんの攻防はそれから、ひとしきり続いたが、怪我の影響もあって、次第に僕はソフィーさんのスピードについていけなくなった。
あっ! と思ったと同時に、彼女の木刀が僕の右太腿を打った。
そこには、傷口が――
「ぐ!」
膝が崩れないように、踏ん張る。だがそのため、僕の構えは隙だらけになった。
ソフィーさんは素早く接近してきて、僕の首元にピタっと木刀の刀身部分を当ててみせた。見事な技だ。
負けた…………。
僕は戦闘態勢を解き、頭を下げた。
自身の呼吸を意識する。息が荒い――この程度の太刀打ちで、疲弊してしまうなんて。
情けない。
今回の惨めな敗北に関して、振り返る。
言い訳は、しない。僕は潔い男なのだ。
これは模擬戦で、相手に大きなダメージを与えないように戦っていたとか――
真剣勝負なら、最初に全力で致命傷を負わせにいっていたとか――
もとより僕は絶不調であり、加えてそれを隠しながら刀を交えていたとか――
なのでこの結果は、しょうが無いじゃない? とか――
大目に見ることも、時には大切ですよ? 皆さん、分かってください! とか――
言い訳はしない。絶対に、しない。しないったら、しないのだ! …………自己弁護しまくりですね、ゴメンナサイ。
必死に悔しさを堪えつつ、内心で意味不明な謝罪をする。
そんな僕のもとへ、《暁の一天》の皆が近寄ってきた。
「見習いなんだし、こんなもんでしょ。ソフィー相手に、あれだけやり合えたんだから、まずまず上等よ」とドリス。
「サブローは、体力が不十分みたいだな。明日から……いや、今日から、筋トレに励むことを勧めるぞ。良かったら、指導してやろうか?」とレトキン。
キアラは無言のまま、僕の身体を2回ほどポンポンと掌で軽く叩いた。〝ドンマイ〟と慰めてくれているらしい。
アレクは僕に対して、失望の念を抱いた様子だ。
「スケネービットさんが前もって話してくれた内容から、もう少し使える人材だと――僕は思っていたんだが……〝新人にしては、それなりに腕が立つ〟……その程度か」
アレクの溜息まじりの言葉を聞いて、僕は申し訳ない気分になった。
どうもスミマセン。なにぶん、身体のアチラコチラを修復中なもので……。
ソフィーさんは何も発言しなかった。離れた場所から、しきりに僕と、自身の手元にある木刀を見比べている。彼女、何を考えているんだろう?
そのあと休憩を挟みつつ、僕は皆と幾つかの演習をした。
アレクの弓矢の腕前や、片刃の剣の扱い。
レトキンの戦闘用の斧の破壊力。
キアラのメイスの振りまわし。
――そういったものを、見せてもらった。
僕もククリを抜いて、攻撃や防御の型を披露する。
ドリスが述べる。
「サブロー。その〝ククリ〟という刀……ハッキリ言って、アンタには過ぎた代物よ」
うるさいな。分かってるよ。
でも、この広いグラウンドで相変わらず「ここの土は踏まれすぎて、危機に瀕しているわね。ゴーちゃん、出動! 華麗なるダンスで、可哀そうな土を救いなさい。どじょう掬い……じゃ無くて〝土壌救い〟の舞を躍るのよ!」とかやっているツインドリルに、文句を言われたくは無いぞ。
〝どじょうすくいの舞〟……いったい、どこの安来節だ!?
全員の稽古の模様を眺めさせてもらう。
う~ん……なるほど。
近接戦闘ではソフィーさんがもっとも強く、次にレトキン、かなり差があってキアラ――そのように、僕は結論づけた。
意外なことに、アレクは2級冒険者であるにもかかわらず、3級冒険者のキアラよりも弱い。もちろん彼の刀の技量も相当なものだし、加えて弓を上手に使えるんだから、特に問題は無いけどね。
冒険者のランクが単純な武力で決まっている訳では無いことを、改めて実感する。
ドリスは魔法使いなので、武術の強弱について別に関係は無いが……なんかアッチのほうで
「ゴーちゃん。3回転半ジャンプよ!」
『ピギー!!!』
「諦めちゃダメよ、ゴーちゃん。土の根性……土の根性……〝ど根性〟を見せなさい!」
『ピギギギー!』
「足がもげても心配しないで。土ならココに、いっぱいあるから!」
とか叫んでいるぞ。
彼女、いろんな意味で大丈夫なのか? あと、ゴーちゃんも大丈夫なのか?
ちなみに《暁の一天》の皆から見た僕の実力は――〝新人としては、まぁまぁ。今後の努力に期待します〟という感じのようだ。妥当な評価だね。
日が暮れてきた。
ソフィーさんが、僕へ語りかけてくる。汗に濡れた肌に髪が引っ付いてる……彼女の風情は、とても色っぽい。
「サブロー、明日の予定なんだけど……」
ソフィーさんに名前を呼び捨てにされると、そのたびにドキッとしちゃうな。ドリスに同じことをされても、何にも思わないが。
ふむ。早速、依頼を受けて、クエストに赴くのかな?
「明日一日は、ナルドットの街を皆で観光します。そのつもりでね」
え? か、観光? 僕は可能な限り早く、たくさんのクエストを熟して、そしてランクアップしたい……。余計なことに、時間を費やしたくは無い。でも、新入りがいきなり初日に反論するのも――
僕のモヤモヤした感情に気付いたのか、ソフィーさんは優しく微笑んだ。
「サブロー、焦っちゃダメよ。〝すぐにでも、クエストに挑戦してみたい!〟という貴方の気持ちも尤もだけど、パーティー内での親交をキチンと深めることも、冒険者にとっては大事な仕事なの」
「大事な仕事……」
「いずれ、分かるわ」
「ハイ、承知いたしました。ソフィーさ……ソフィー」
僕は、そう返事をした。
ギルド長のゴノチョー様も、仰っていたな。『意識的に〝頑張らない〟ようにしなさい』――と。
明日は、心身を楽にする日にしよう。
♢
その日の夜、僕は《虎の穴亭》のラウンジで、今日あった出来事をミーアと互いに報告しあった。当たり前のように、バンヤルくんとチャチャコちゃんが同じテーブルを囲んで座っている。
ま、良いけど。
「アタシ、これからしばらくの間は午後の実地研修でも、皆と一緒になって習うことになったニャン」
「皆って……誰?」
「ナンモとララッピにゃん」
「ララッピ?」
「ララッピは、ウサギ族の女の子にゃの。アタシより1つ歳上で、今はやっぱり研修中ニャんだって」
ミーアの話によると、猫族のミーア・犬族のナンモくん・ウサギ族のララッピちゃんの3人が臨時パーティーを組む形で、野外の研修を本日は受けたのだそうだ。明日以降も、同様とのこと。
獣人の少年少女でチームを作るのか……指導教官は人間の女性の方らしいが――
と、バンヤルくんが大声を出した。
「ウサギ族のララッピ……どこかで聞いたような。あ、思い出したぞ!」
「どうしたんだい? バンヤルくん」
「ララッピちゃんと言えば、昨年度の《ケモノっ娘美少女ランキング》で7位に入賞していた子だ。ウサギ族の中で、特に有名な美少女だぞ!」
《ケモノっ娘美少女ランキング》……ああ。あのミーアが〝3年連続第1位〟の栄冠を勝ち取ったという、ケモナーが投票する人気ランキングね。ミーアがトップを取っている以上、信頼できるランキングなのは間違いない。
「凄えな! ミーアちゃんとララッピちゃんが、ともに行動する日が来ようとは……奇跡の組み合わせだぜ!」
バンヤルくんは興奮しているが、僕は〝ウサギ族の美少女〟について具体的なイメージが湧かなくて、首をひねってしまった。確かに、ウサギは可愛いが……。
〝猫族の美少女〟だったら、すぐにミーアの姿が思い浮かぶんだけどね。
「ミーアお姉さま。そのララッピという方とは、仲良く出来そうですか?」
「大丈夫ニャン」
「安心しました」
ミーアとチャチャコちゃんがそんなホノボノとした温かな会話をしている最中に、バンヤルくんは僕を部屋の片隅へと引っ張っていった。
「えっと、なにかな? バンヤルくん」
「サブロー。念のために確認しておくが、〝ナンモ〟というヤツは犬族の少年なんだな?」
「うん、そうだよ」
「じゃ、締めるか」
「ハ?」
し、締めるって……〝締め上げる〟ってこと!?
「ミーアちゃんとララッピちゃん、2人の美少女と同じチームで、しかも男子は1人なんて、羨ましすぎ……じゃ無くて、交代しろ……じゃ無くて、許せないだろ。万が一にも邪な思いを抱いたりしないように、あらかじめキュキュッと、ついでにギュギュッと、とどめにゴギュゴギュッと締め上げておこうぜ」
「イヤイヤイヤ、何を言ってるの!?」
ヤバいぞ。バンヤルくんの瞳が、ドロドロとした深淵の色に染まっている。
「ナンモという野郎に、吠え面をかかせてやろうぜ」
ナンモくんは犬族だけに良く吠えるに違いない…………って、僕まで何を考えているんだ!?
「冷静になるんだ、バンヤルくん。君は、間違っている。《世界の中心で獣人への愛を叫ぶ会》のメンバーとして、それは相応しくない主張だよ」
「何だと!?」
「獣人へ向ける愛は、もっと大きいモノであるはず。対象に、男女の区別があっちゃダメだ」
「…………」
「ナンモくんのことも、広い心で愛してあげなくちゃ」
「そうか……そうだな」
バンヤルくんが、納得してくれた。良かった。
「それはそれとして、サブロー。仮にナンモが〝これはチャンス!〟とばかりにミーアちゃんを口説いてきたら、お前はどうするんだ?」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………それは、ミーアの気持ち次第かな」
「随分と長い間だったな。だったら、ナンモがミーアちゃんとララッピちゃんに二股を掛けたりしたら?」
「そんな! 二股をするのは、いけないよ!」(※注 発言主は、ハーレム希望の少年)
「だよな。二股は、アウトだよな」(※注 発言主は、ケモノっ娘ハーレム希望の少年)
「うん」
「もしも、ナンモがミーアちゃんを泣かせたりしたら……」
「当然、潰すよ。平面にするよ」
「ナンモに掛ける慈悲は?」
「無い」
「執行猶予は?」
「つかない。即、処す」
「良し!」
僕とバンヤルくんは、ガッシリと握手を交わした。貴き、友情。
そんな僕らを眺めて、ミーアとチャチャコちゃんが――
「サブローとバンニャルが、手を握り合ってるニャン。仲良しにゃ」
「小悪党2人組が陰謀の密談をしているようにしか、見えない。ミーアお姉さま、危険だから近づいちゃダメよ」
ナンモ「なにかボクの知らないところで、締められたり愛されたり潰されたりしているような気が……ワンワン!」




