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受験にむけ

あれから3か月がたった。

通学時の周囲の視線には若干嫌気がさすけど学校生活にはだいぶ慣れた。これも学校のみんなが協力してくれたおかげだ。最近では校内では他人の視線を意識しなくて済むようになり、勉強を楽しむ余裕も出てきた。


前の世界での気象予報士試験合格レベルの知識が新しいうちに、こちらの世界でもなんとか合格したい。一旦、合格レベルまで到達しその記憶が残るうちにまた勉強しているわけだから、それなりに自信はある。


資格さえ取れれば、あとは大学進学だ。幸いこちらの世界の男子生徒はほぼ行きたい大学に推薦入学で入れる。気象関係の仕事に就くという僕の夢をかなえる鍵は、とにかく次の気象予報士試験で合格することだ。


瞳ちゃんといえば、すでにバレー部を引退し本来なら大学受験モードのはず。県内有数の進学校であるこの高校で常に学年3位以内をキープする文武両道スーパーウーマンだった瞳ちゃんは、受験に焦る様子は全くない。焦るどころか僕が進学予定の大学など試験勉強を始める前から早々に模試でA判定をとっている。それだけなら歓迎すべきことなんだろうけどね。あまりに余裕がありすぎて最近は全く別のことに集中してしまい、そのことが僕のプレッシャーになっている。


3か月前、大切な二人の思い出を忘れてしまったことを謝罪するとともに、これからのことを誓い合った日の登校時、彼女は僕が使っている参考書や問題集の書名と出版社名について尋ねてきた。


「別に教えるのは構わないけど、どうしたの急に?」


「私もその試験、受けるわ」


「え?気象予報士試験を?どうして?学科はもちろん実技もあってとてもむつかしいよ、この試験」


「あなたが受けるから」


「いやいやいや。なに、その動機!大体、瞳ちゃん、気象に興味あったの?まったく素人じゃないの?」


「そんなことないわ。雪緒が気象に興味があるのは知っていたから、私もちょっとは勉強していたわよ。でないと、会話が続かなかったもの」


この時は、無謀な子だと思いつつ、僕が使っている参考書類の名前を教えてあげた。


それから3か月、今では立派なライバルとなってしまった。何そのスペック、反則でしょう。これ、もし彼女が受かって僕が落ちたら、僕の立場はどうなるの?


「別に資格試験は合格ライン超えた人は全員受かるんだから、ライバルじゃないでしょ?」


「それはそうだけど、やっぱり僕だけ落ちたら、僕の立つ瀬がないよ」


僕は不満顔で頬を膨らます。それを見た彼女は優しい笑顔で言う。


「わかったわ。もし雪緒が落ちていた場合、私の合否は不明としとく。大丈夫、この手の資格って持ってる本人が何も言わなければ持ってないことと同じよ」


「そんなの余計に屈辱だよ!」


「じゃあしっかり勉強したら?自信あるんでしょ?」


ぐぬぬ、悔しい。これだから天才は好きじゃないんだ。ところが、僕が不満を示せば示すほど彼女は笑顔になっていく。だから!その余裕が嫌いなんだってば。


「はいはい、謝るわ。どうも、優秀でごめんなさい」


「だからそういう態度が腹立たしいの!大体、顔が笑ってるよ!悪いなんて気持ち、これっぽっちもないでしょ?」


「だって、あなたのそういうところ、とても可愛いんだもの」


「な!・・・」


急にこんなことを言われると恥ずかしくなる。僕は悔しい気持ちとうれしい気持ちと恥ずかしい気持ちがごちゃ混ぜになり黙り込んでしまう。


「さ、集中しましょ。あと2か月しかないわよ」


ま、いいけどさ。こうなったら、絶対、受からなきゃ。僕たちは同じ参考書に向かい無言で勉強に集中する。泣いても笑ってもあと2か月。


絶対に受かってやる!




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