第27話 お願いを聞いてあげる
“東の森”で勝負という事に彼女はなったらしい。
だが、一方的に宣言したからと言って、それに従うかというとそうではない。
現にシーナは笑いながら、
「嫌よ。なんで貴方の言う通りにしないといけないの?」
「……私が負けたままなのは気に食わないのよ。……そうね、この勝負を受けて、貴方達が勝ったら何でも一つ言うことを聞いてあげるわ」
ロゼッタがそんな事を言い出した。
なんでの一つ言うことを聞く、その言葉にシーナの目が光った気がした。
「本当に何でも言うことを聞くのね?」
「……叶えられるものならね」
「それは二人で一つ? それとも私とアキラで一つづつ?」
「欲張りね。でもそうね……一つづつで良いわ。その代わり私が勝ったらシーナとそこの異世界人には言うことを聞いてもらうわ。そんなにひどい事にはならないから安心なさい。二人に出来る範囲の事にするから」
そう言いきったロゼッタ。
そばにいたセレンがどうしようというかのように顔を青くしていたが、止められそうにないようだった。
と、シーナがそこで、
「それでロゼッタ、最近、“暇”?」
「まあね。こうやって遊びに来るくらいだもの。“暇”だわ」
「好都合ね。いいわ、その勝負受けてあげる」
「……勝つつもりでいるのね。でも、その余裕が命取りだってすぐに教えてあげるわ」
そうロゼッタがシーナを睨みつける。
この二人、どういう関係何だろうと俺が見ていると、そこでロゼッタと俺の目が合う。
にたりとロゼッタが笑った。
俺が嫌な予感がした。
「そっちの異世界人も楽しみにしていなさい。この私を床に倒したことを後悔させてあげるわ」
「お、俺はただ避けたくらいっで……」
「最近男を女装させてみたいと思ったのよね。着せ替え人形代わりになって貰おうかしら」
「……」
「楽しみにしていてね」
などと言ってロゼッタが去っていく。
だが俺は凍り付いた。
何が楽しくてそんな恰好をしなければならないのか?
いきなり異世界に来て女の子の“玩具”にされるのは俺としてはちょっと……そう思いながら呆然と見ているとそこでシーナが、
「しまった、先に行かれたわ。変な話をして意識をそらしたのね……それに武器もまだ買っていない。せめて武器だけ一つ買って、すぐに追いかけるわよ」
シーナがはっとしたようにもういなくなったギルドの出入り口を見てそう言い、すぐに見つけたそこそこのお値段? らしい短剣を俺は手に入れて、すぐに“東の森”に向かったのだった。