第122話 (効果はあった)
その敵と視線が合う。
彼は、“笑った”。
「初めましてでいいかな。この姿で正面から会うのは、初めてだね」
「そうなるな。そして、俺に何をしたんだ」
そう返すと目の前の敵はさらに笑い、
「エリス共和国で、群衆に紛れて君には新しい道具をこの女に作らせて接触してみたが……欠陥品であったようだな。マサトの力の影響を受けずに、操れると聞いたが、この通り失敗だったようだ。一度力を使った相手に、別の手法で力を使うと干渉しあって効果がなくなると言っていたから使えずにいたが、これでは使っても使わなくても変わらなかったようだな」
まったく困ったものだというかのように肩をすくめて、ちらりと倒れている……その、おそらくは“ミコ”と呼ばれる異世界人だろう人物を、冷たく見る。
彼にとってその異世界人の彼女はただの“道具”に過ぎないのだろう。
そう思っているとそこでマサトが、
「そこにいるのはお前の仲間じゃないのか? 操っているとはいえ」
「これは貴方方と同じ異世界人ですよ。たまたま操ってみたら思いのほか使えましたね。もっとも貴方の力のおかげで、洗脳が解けてこの通りただの転がっているだけの“荷物”となり果てましたが」
そう言ってマサトの方を見ながら敵は、
「幻影を見せる特殊能力。意識に作用する能力、という面倒なその力のおかげで私の能力がかき消されるとは思いませんでした。対策を立てたのに全部裏目に出てしまいましたしね。……私が操れる人物の距離は、この城にいながらエリス共和国程度まではどうにかできる程度に、この女の道具のおかげで広がりはしたものの……補助の道具も使ったというのにマサトとそちらの異世界人によってすべて破壊され、無効化されるとはね」
嘆かわしいというかのように顔に手を当てるしぐさをするこの人物を見ながら俺は、言った。
「マサトのその特殊能力の力は、確かに俺を操ろうとする力には“効果はなかった”」
「ほう、ではどうして貴方は操られないのでしょう? 異世界人同士の潰しあいが楽しみでもあったのですが」
「俺の特殊能力でそれは消し去った」
そう返すと、目の前の敵が初めて笑みを消した。そして、
「そういえばそこの異世界人の能力を私は知りませんでしたね。魔法で攻撃するといった能力かと思っていましたが、どうも違うようですね」
「話す義理はない」
目の前の敵に俺はそう返したのだった。
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