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第120話(支配)

 目の前の視界がゆがむ。

 なんでこんな時に、と俺は思う。

 同時に、こんなことは今までなかったと気づく。


 なぜ今、こんな風に俺の体はなったのか。

 そこで声が聞こえた。


「待っていたぞ、もう一人の異世界人。お前の能力は非常に有用のようだ、そこにいるマサトという異世界人よりもな。むしろ、そちらのマサトを倒すのにつける……私はそう判断したのだよ」


 頭の中で、以前であったことのある人形のあの声が反響する。

 人形の声は、彼の肉声だったのだろうか?

 そう思いながら、俺は今自分に何が起こっているのかと思う。


 焦ったような、シーナやロゼッタ、せれん、そして久しぶりの友人のマサトの声がする。

 頭がずきずきと痛む。

 知らない誰かの、心配するような声も含めて、すべてが混線して、深夜にすべての番組が終わってしまった後の砂嵐のような雑音のように混ざり合い、言葉に聞こえない。


 ただただ耳障りな音。

 周りの音がそう聞こえる。

 視界もグニャグニャとゆがんで、色々な色が混ざり合ってひどく気持ちが悪い。

 

 水面にインクを流し込んで、模様を作った後のような奇妙な模様に見える。

 そんな狂ったような音と色の中で俺は、“声”を聞いた。


『従え、特殊能力チートを使って攻撃をしろ』


 それは命令のようだった。

 けれど不愉快な“音”を含んだその声に俺は抵抗する。

 命令されて何かをするのは、“嫌”だ。


 俺は、俺の“意思”でこの特殊能力チートを使う。


『従え、特殊能力チートを使って攻撃をしろ』


 もう一度同じような声が聞こえた。

 吐き気をもよおすような邪悪さをその声はたたえている。

 悪意に満ちたその声に意識が乗っ取られそうになりながらも、俺自身が心の奥底で持っていた無意識の羨望のようなものが語りかけてくる。


 それでいいのか、と。

 正義と悪と、どちらを望むのか、と。

 この力はきっと、俺が思っているよりも強力な特殊能力チートだ。


 そんなことは俺は、とうの昔に気づいていた。

 ただ、自分にそんな大きな力があるとは、“行使”することになるとは思わなかったのだ。

 そして今、その力は俺の手を離れて、誰かの慟哭を呼ぼうとしている。


 それは、許されない。

 俺は、俺の……“良心”にもとづいてこの力を使う。

 そう、俺は“決めた”。


 俺を支配するのは、許さない。

 支配しようとするその力は……“効率的”に“抵抗”し“排除”する。

 そう思った瞬間に、すべてがガラスのように砕け散る光景と音を、俺は感じたのだった。 

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