第113話(帰還)
どうやらマサトと入れ違いになってしまったらしい。
シーナは悔しそうだが俺は、
「だが、シーナの城の方には向かっているんだろう? だったら急げば合流できる」
「そう、そうね、数時間だもの」
そうシーナがうめくように呟くとそこでアウレッタ王が、
「では、急いで馬車を手配しましょう」
「よろしいのですか?」
シーナがそう聞くとアウレッタ王は笑い、
「見たところ、この城で私たちを好きだしてくれたのは貴方様のようです。それに、マサトも娘と一緒に手助けをするようにと、馬車で送り返しましたから……馬車で追いかけて一緒に城の件に当たった方がいいでしょう。……我々も、ひどい目にあったのですから、事情は分かります。特にあなたの国が我々の城のようになるのは……危険すぎます」
最後の方は真剣な表情と声で、アウレッタ王が俺達に告げた。
魔族が介入するといっているくらい、シーナの国が操られるのは危険だということだろう。
もっとも、こういった“介入”といった形での、危険な存在が現れた時の“暗線装置”的な役割があるのかもしれないが……と恐ろしいことを思いついて俺は、すぐに考えるのをやめた。
そこでアウレッタ王が、
「では早速、馬車の用意を」
「ありがとう、助かります」
「あの怪物や、操られた使用人たちを何とかしていたのですからこの程度は大丈夫です。ただ、そういったものを手配する人間を探して、起こさないといけませんが」
そう冗談めかして彼は俺達に告げたのだった。
こうしてエリス共和国のアウレッタ王たちに馬車を手配してもらった俺たち。
まず初めにメイド長などを探して揺らして起こし、必要な人物を探し出した。
メイド長は、普段はいる場所……の前に倒れていたので、すぐに見つけられたのはよかったらしい。
そして馬車を用意してもらい、夜の道を走る。
今日は雲のない明るい夜だったのでまだ道が見やすかったと、馬車の御者のおじさんが言っていた。
途中、魔物にも遭遇したが弱いものであったらしく、すぐに馬車上からロゼッタが新しい魔法の練習と称して倒してしまった。
シーナがそれを見て私の方が一歩遅かったと悔やんでいたりする。
この二人は仲がいいなと俺は思ってみているとセレンが、ロゼッタをもっとお淑やかにするべきとたしなめていた。
そんな風に馬車の内部はほのぼのとしつつ、移動したのだった。
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