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我の名前。

昔HPで書いていたものを、思い切ってリメイクで書き直し隠していた設定を盛り込みました。初めましても、お久しぶりですな方もよろしくお願いします!サイトは人気が無かったので、知らない方は多いとは思いますが…コメントブックマーク評価気軽にお待ちしています!!実は中学2年生の時練った小説でして、漂う何かが溢れて…恥ずかしいですね。



黄昏時、変わっていく太陽は、この世ならざる世界を強調してるようだった。

類まれなる違和感、それはこの少年とも青年とも言い難いブルーサファイヤの目と髪を携えた彼自身が意味を成す。―敢えてここでは、彼の事を「青年」として扱い、この物語を進めよう。


「はぁっ…はぁっ…ちっ、しつこい!!」


追手を撒こうと必死になり、こんな人気のない所に違える。足を運んだことを後悔してももう遅い。

ハッキリ言うが、気配からして退路を断たれた。もう逃げ場がない、と暗に降伏を促されてる事に気が付く。「クソ野郎が」悪態を口に出し、頭の中を冷静に冷やしていく。周りを見渡すと、狩猟用の網と積まれた砂袋が置かれていた。


自分が持つ暗器等はもうここまで来るまでほぼ使い切り、魔法薬や手榴弾、魔石、巻物なども同じくだ。


「やってみる価値は…ありそうだな」


暗い色のレンガが積まれた家が立ち並ぶ暗闇に満ちた郊外。所々に、赤い斑点が迸り、それはすなわち誰かの死を意味する。喧騒はほぼない一時の夕闇。シチュエーションとしてはほぼ満点の、相手にとって彼を捕らえる為の格好の餌食。


「素早いガキだな、とっとと降伏すればいいものの…」

「まぁ、中々賢いガキだ。ちまちま魅了チャームを使って、近づけば目くらまし、その上暗器でトドメ。ったく魔界にも労働基準法が欲しいぐらいだぜ」

「俺達も捕まえれば、ガッポリ儲かるんだし、とっとと捕まえちまおうぜ」


目の前に不思議な雰囲気の少女のような羽衣を纏ったその「格好の餌食」が不意に現れる。

一見小柄な体躯は、時に女だと思わせてからの攻撃に向いている。こちらとしては、常套句のような甘い口説き文句を噛み砕いて何度も使われたような苛立ちに見舞われるのだが。特に彼の眼前の男たちは、この手に何度も引っかかっては仲間を仇討されてるのだ。それでも、綺麗なアクのない顔立ちを、分かってるとでも言いたげにこちらを見つめて、ただ奥の街路樹へと移動する。


「そっちは行き止まりだ!」

「…勝負あったな」


やれやれと声高に喜んで、ああこれでもう追いかけっこも終いだと街路樹を進んだ道の奥は行き止まりになって居て、どう見ても勝負は分が悪い、目に見えて分かったのか、疲れを振り切り、汗を拭く手間さえも惜しみ、そのまま街路樹へ歩を進めてしまう。彼はただ捕まりそうで捕まらない距離を縮められる度に竦むのかと思いきや、振り返って『笑った』。


ギリギリまで追い詰め、もう一度手を伸ばせば届く瞬間に、何かを引っ張っている彼の細やかな指先が動く。


誰かが「罠だ!!」叫んだ頃には、ダァンダァンと街路樹が途端に倒れて来ては彼らを上から挟み撃ちにしてしまう。


「何のこれしき」そこまで思ったところで、街路樹をなぎ倒した網をそのまま自分たちに被る様に掛けられ、「子供のお遊戯会か?ふざけるな!!」その網を退かそうと躍起になってみても、退かせない。


「これは、魔獣の狩猟用の網だ…!クッソ!!特殊な魔法陣が仇になって捕獲系の魔法と同様に作用してるのか…」

「な、何か砂が降ってき…」

「ダメだ、息を止めろ!!」


「警告、ご苦労」


意地悪気に口が歪む彼を目で捉えた事を皮切りに男達は意識を失う。殆どの男たちがその砂を吸い、目を傷め、何が起こったのか理解していないままに、夢の世界へと誘われる。


「クッソぉ…ぅ」


夢の中では、どんな夢を見てるんだろうな、と他意なく思えば、ご自慢の種ばらしでも親切にしてやろう、そう思えば口が勝手に動いた。


「ふぅ、睡眠の魔石を粉々にして砂に混ぜて、混乱の毒薬を頑張って混ぜた甲斐があったものだ。さて」


一人仕留め損ねた男がこちらに向かい、駆けてくるのを走りながら彼は見やれば、何かを叫びながら短剣を投げ打ち、それが行き止まりのレンガの壁に突き刺さる。「投げてくるがいい、そんな下手なナイフじゃ当たらんがな」馬鹿にするように笑えば、「馬鹿にしやがってぇえええ!!!」意味も分からず、次々と男は手に持つ短剣を打ち付けた。飛ぶように避けては打ち、嘲りに耐えきれなくなって来ては顔を真っ赤にしながら、何度も何度もなくなるまで短剣は壁に釘差しのようになって行った。


「逃亡ルート確保…ありがとう、恩には着ないが、感謝はしている」


その短剣を足場にしながら、上へ上へと跳躍で軽々しく飛ぶさまを見て、男は唖然とした表情で開いた口が閉まらない。


「なっ…それでも、羽根を使わずとも、何メートルあると…!!」


それが男の最後に見た羽衣を手に持ち、街路樹の何倍も高いレンガの塀を跳躍力だけで飛び越えてしまう彼の姿だった。見えない塀の先からは「ぐぇ」と声が聞こえ、飛び降りた引力で、退路を塞いでいた仲間達が怯んだ隙に唱える詠唱は巻物のそれだった。きっと、時間短縮の為に、塀を飛び越えたところで、落ちながらも巻物を読んだに違いない。


元来魔法が使えない者の為に作られた巻物、だけれども詠唱時間が圧倒的に不利なモノが多く、それ以外にも効力の強い巻物は、古い歴史故に旧文字や独特な訛りなどを理解しなくては詠唱時間云々の問題は何とか巻物を選ぶことで回避出来るのだが、こればかりは、乗り越えられない。ありとあらゆる様々な書を手にしては読み漁り、努々勉学に励んで居たのだと男たちが理解する頃には、彼はもうこの街におらず、取り残された残骸達をどうしようかと頭をひねる。


「一体…どんな書庫に…いや、あの方の言う通り、『幸運』に恵まれた方だな」


あの方とは誰なのか、それは残された男たちも、彼も周知の事実。

それでも、一般では知られていない、きな臭さをかぎ取る者はまだ魔界には少ない。

夕闇から深夜、未明へと変わる、朝方の少し前。森の中にたどり着いた。結界を張り、持っていた炭に火を熾す、軽く寝所を手慣れた様子で作れば、ようやく欠伸が出て来て眠いのだと体と心がいびきをかきそうだ。


「ハァ…全く…我を捕らえるより、他に戦力など…いくらでもあるだろうが」


溜息をつき、胸元をあさり茶色い小包を見れば、もう金銭もアイテムも心もとない。

逃亡者と言うのは、ただ金がかかる、アイテムもかかる、労力もかかる、よって諦めてくれ、と自分を戦争へ加担せんとするもうこの世に存命しない邪神をただ憎む。ふと、自分の洋服の下から両親がくれた最後のプレゼントがきらりと火に輝き、それを手に取る。


『青、貴方の名前はね、澄んだ目と髪色を見た時から決めていたのよ』


決して、裕福とは言えない、しがない、それでも幸せな家庭。

自分には、その頃まだ魔法が使えなくて、両親はそんな自分に魔法を一生懸命教えようと指先で俺の頭を撫でた。可愛い赤い髪をした優しい妹に、天使の母に、悪魔の父親。異分子だった自分に、精一杯の愛を惜しみなく与えてくれた。


知っていた、魔法が使えないことなどどうでもいい、と、俺が巻物を必死に覚えているのも他の奴らから見たら、憐れみと嫉妬を買い、両親が心無い謂れや吹聴に傷ついていたことも。


「それだけじゃないよな」


マントに隠している仕舞っていた漆黒の宝石のような片翼と、純白の白い片翼。

こんな羽根を持つ者は、どんなに混血が一般化してもどの世界のどんな人物にもあり得ぬ事らしい。

自分の背中に、この忌まわしき混血の証が刻まれてる事こそが、

愛する両親を苦しめ、優しい妹を周囲からの悪態に晒す、それだけならば、自分だけが去れば良かったのに。


『青…逃げ…なさ…』


自分が小さな頃、両親はその言葉を最後に亡き者になってしまった。

惑う、涙が止まらない、悲しい、寂しい、自分が居なければ良かったんだ、血濡れの両親をまだ幼い自分が仇を成すなんて、それも魔法が使えたばかりから間もないに等しい俺に何が出来たのか、今でも思い出すと、幼稚でただ他の人を守ることもままならない自分が歯がゆくて仕方ないんだ。


『お兄ちゃんなんて、居なかったら…お母さんとお父さんは亡くならなかったのよ!!』


涙で目から溢れる、そのぼんやりした視界を紅で覆う。紅が泣いていたのか、自分が泣いていたのか分からない。それほどに苦しくて、次に頬に激しい痛みが襲った。それは、紅が俺の頬を思い切り叩いたのだと理解が遅れてしまったのだれど。自分がそんな愚鈍で傷つけていた、目の前で叫ぶ紅を止める権利など俺には持ち合わせていなかったのだ、理解すればよかったんだ、自分が時に無力だと言う残酷表現、それが答えだと。

抱きしめていた両親の亡骸を、紅は突き飛ばしてその居場所を奪う。別々に引き取られ、紅にはあれ以来会って居ない。


正確には「引き取られ」には語弊があり、紅は白い両翼を携えて居た為に、天使の親族から引き取られた。

俺は、片翼ずつ見られた瞬間、引き取り手などおらず、代わりに少しばかりの同情で両親と住んでた家を売ることで、そのお金で手切れ金としてくれ、と親類縁者全員から縁を切られてしまった。


突然の事に驚きながらも、珍しい事ではない、涙で赤くなり腫れた目の下は、「生きていく」のに必死だった。


自分が女と間違えられる事も知っていたから、時にわざとそういう風に振舞う事も多々あったし、

弱かった喧嘩は知識を蓄え、強くなっていった。賭け事の類が強いのも、酒が強いのも、生きていくためにそれでもどこか、いつか妹と笑い合えるぐらいには、心が生気を保って居たくて知識に溺れる。もう来ない未来を思い描く「妄執」その類のものは、いずれ身を滅ぼす、それでも、いつか、一度でいいから妹に会いたい。自分の血族は、もう彼女しか居ないのだから。


「…む、寝ていたのか…」


微睡む眼は、何だか懐かしい夢を見ていた気がした。

長い間、こんな生活を続けて居れば、慣れるし、可哀想だとは思わなかった。

可哀想な人は沢山いるなんて、優越感だと言われればそうなのだろう。それは偽善に満ちた愛だとすれば、優しさは優しさなのだから。ただそれが色んな『事実』なだけで、真実は要らぬのだ。


マントから水筒を出して注ぐ、コップの水面に自分自身が映った。


『青、貴方の名前はね、澄んだ目と髪色を見た時から決めていたのよ』


「…どこがだよ」


苦笑して、何も考えずにコップを傾ければ、ただの水のはずなのに、両親が淹れてくれた懐かしいお茶の渋い味が舌を馴染ませた気がしたんだ。炭を消し、跡を残さないように痕跡を消せば、あの水はもう飲み切って、喉に染み、身の一部となり、我の糧となっていく。感傷を捨て、ただ尽力して、二度と失わぬように―誓いを胸に立てながら。

うん、個人的に逆ハーレム入れようか、悩みました…うん、サイトに載せてた時が…(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪そんな感じだったんですよ、後から見ると、思い切って外しました(笑)

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