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熊村への旅立ち

 新年から5日、熊村への旅立ちの日が来た。


 朝一、ワシとクサハミ婆さん、護衛として同行する男3人が集まった。ワシの滞在費や謝礼代わりになる米が相当あり、荷物は結構重かった。

 道中は、深い森を飯も取らずかなりの強行軍で、午後まだかなり明るいうちに熊村に着いた。なんでも、休息を取るより駆け抜けた方が安全なんじゃそうじゃ。


 熊村の門の前に、結構な歳の女性が待っていた。引き締まった口元と強い意志を宿した目が特徴的な女性だ。きっとこの人がイモハミ婆さんなのだろう。

 クサハミ婆さんと一言二言言葉を交わした後、その女性に連れられて、皆で一軒の家に入っていった。


「母さん、この子が話していたマル、命名の儀を終えて今はタツヤです」


 案内してくれた女性が、予想通りイモハミ婆さんだった。


「確かに、命名の儀を終えたばかりとは思えないね。呼吸も整っているし、このままでも今年中には開眼まで行くかもしれない。育てるのが楽しみだよ。

 物覚えと忍耐力の方はどうだい?」


 イモハミ婆さんとクサハミ婆さんの間でワシに付いて情報交換が行われた。


「男の子だし、此れから覚える時間は幾らでもある。呪術士としての知識よりも、私の助手として魔力に触れる機会を増やした方が良さそうだね。

 タツヤ、此れからは、朝夕の武器の練習以外は、私の側にいるようにしなさい」


 相談は、まとまったようで、イモハミ婆さんから日課に付いて説明があった。相変わらずハードスケジュールだ。


 それから、イモハミ婆さんに連れられて、関係者への挨拶廻りでその日は過ぎていった。現在、熊村には呪術士が4人おり、全員女性だ。また、ワシと同じ立場の他村からの修行者も3人いて、此方も皆女性だ。

 その夜は、旅人用の家で護衛の3人と泊まった。翌日、クサハミ婆さんを見送った後、早速イモハミ婆さんに付いて歩く事にした。


 実は、熊村には温泉がある。というより、温泉が出る沢を中心に村が出来ているようだ。その温泉の側に竪穴式住居を二つ連ねた小屋がある。イモハミ婆さんの最初の目的地は、その治療小屋だった。


 中に入ると昨日紹介された呪術士見習いの少女が3人居た。


「昨晩は何か変わった事は無かったかね」


「鷹村のトウヤさんが、少しだけ腕を動かせるようになりました」


 イモハミ婆さんは、彼女らに患者一人一人の様子を聞き取っていった。どうやら見習いの少女達が此処に泊まって重傷者の世話を見ているようだ。

 カーテン状の目隠し布を潜って移動すると、壮年の男が6人居た。皆、酷い傷跡があり、4人は横になったままだった。

 イモハミ婆さんは、皆を引き連れながら一人一人の所で何やら呪文を唱えて回った。そして、ワシに向かって語り始めた。


「まだ、見えてはいないだろうが、精神を集中して魔力の流れを感じるようにしなさい。呪文も気持ちを込めて覚えるようにしなさい。それら一つ一つが奥義に辿り着く為の修行なんだよ」


 魔術を使える者の側で、感じる事が修行らしい。


「昨日紹介したトンビ村のタツヤも今日から修行者として寝ずの番に参加する。決まり事や仕事の分担について説明してやってくれ。一応、男なので薪割りや水汲みといった力仕事は優先して割り振ってやってくれ。あと、こんな歳じゃが細々とした事もかなり仕込まれているようじゃ。全て、修行なのじゃから、甘えさせる必要はないからな。

 それと、寝泊まりは戦士小屋じゃが、夜中ここに出入りするのは変わりない。不快かも知れんが全ては修行の為、堪えてくれ」


 少女3人の小屋に出入りするじゃと‼︎ いや、ワシは幼稚園児か小学校低学年相当か……それ程変な話しでもないのか?


「イモハミ婆さんの所で住むものと思っていた。だけど、確かに小さ過ぎて不埒なことをする訳もないか。

 戦士小屋に荷物置いたら、此処においで、細々とした事を説明するから」


 最も年上の狐村のアカハナに指示されるまま、午前中は細々とした作業をして過ごした。更に、料理の腕を確認するためか、昼飯まで作らされた。


 昼飯後、アカハナに連れられて、武器を持ってイモハミ婆さんの家に向かった。家の前には、イモハミ婆さんに加えもう一人若い呪術士と武装した男が2人待ち構えていた。今から、村の廻りの見回りをするそうだ。


 少し歩いて目立つ大きな木の側に来た。イモハミ婆さんは、おもむろに何やら呪文を唱え始めた。


「祖霊の御霊(みたま)に願い奉る。我等、子らの幾ばくかの安息の為に地に満ちて見回らん事を、賤しき魔の物らを見破る光を村に持たらさん事を」


 暫くしてイモハミ婆さんが説明してくれた。


「これは、警報という魔術で、他所者が村の結界内に入った事を知らせてくれるんじゃよ。定期的に魔力を注ぐ必要はあるが、これがあるお陰で随分助かっておる。習得者を増やしたいから、交代で同行して貰っているんじゃよ。

 同行者数に応じて護衛も増やす必要が出るが、タツヤは、脚も速いし、弓も使える。基本的に同行するようにしなさい」


 あれ?ワシいつの間にか戦闘要員にカウントされているのか?

 その後、速足で見回りをしながらここらで採れる薬草や山菜の説明をしてくれた。季節が冬で無ければ、見回りついでに採取もするそうだ。


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