必勝の体制へ
シカ村を発ってから約半月、リュウエンさんが言ったように、掃討戦は加速していた。4月22日昼前にシカ村に着いて状況を確認すると、真西の湾に基地を作る為の追加1つを含め、3つの繁殖地が潰されていた。
しかし、残念ながら、また1人尊い犠牲が出てしまったそうだ。
「やあ、タツヤ。また、来てくれて嬉しいよ。言霊で提案してくれた設備を作る為に、盛り土もして、穴も掘っておいた。
どう考えても、必勝、必殺の設備が出来そうだよw」
「安心するのは早い。敵に十分な飛道具があったり、橋を渡す用意があれば、突破される可能性がある」
「確かに、先ずは完成させてからだね」
シカ村の出入り口は、敢えて修復しなかった幅2mの開口部だ。防壁が腰の高さまではあり、通常は踏台を準備する必要があり凄く不便だ。
そこに、遠くからは見えないように内側に掘りを作ってもらう。幅が確保出来ず飛び越えられる可能性が高いので柵も併設する。
更には、左右にこれも外からは見えないように、防壁を作っておく。
狭い門を突破した敵は、矢の十字攻撃を受けながら、掘りを飛び越えようとして、柵にぶつかる。そこで槍に突かれて掘りの底に叩き落とされる。
掘りは、容易に登れないよう3m程度の深さを確保する。なお、登り難くする為、掘りの側面は、オーバーハング且つツルツルに仕上げるつもりだ。
次から次と飛び付かれて、柵を壊される可能性は高い。その場合でも、槍衾を作ることで一定の優位は稼げるだろう。
10倍の人間に襲撃される想定だと、甘い策だ。木工の技術が低すぎる。前世に比べると、門自体はかなり脆弱にみえる。
だが、若干は数的な優位を確保できるはず。また、妖魔が攻城兵器をー例え単純なハシゴですらー用意出来るとは考え辛い。
「そもそも、門を突破させる気ないでしょw 外側の堀の門は防壁の門の反対側w 防壁の門の前は、1番深く鋭い掘りにする。更に、弓を多く配置出来るように防壁の幅を広げる。タツヤの考えは、徹底的だなぁ。準備するのに皆ヘトヘトになったよ」
そうだよなぁ。リュウセツさんの土操作が無ければ、準備が間に合う訳もないよなぁ。
土を一気に高く積み上げるのは大変だ、また土壁の性質から、途中で土の積み直しも必要になる。作業の効率を考えて、2日か3日あけた、3段階の作業とするつもりだ。
二回の空きの間に、真西の湾の基地建設と胸壁用の小物の作成を行う予定だ。
胸壁に必要な高さ、地面から7mの位置まで更に土を積み上げるのはシンドイ。下で部品を作るのは、一つ一つの重量が大きくて、これもシンドイ。
そこで、防壁の通路上で5cm程度の薄さで水平に作って、その場で立ち上げて組み込む事にした。実は、土を接着剤にして、土壁同士を接着する事が出来る。
土壁の性質は石に近く、曲げ強度は心配だ。薄くした影響で胸壁ごと落下するような事故が起きないか……検討と対策はシカ村に任せよう。
内側にも落下防止柵が必要で既存部分は、木材を差し込む為の穴が用意されている。新設部分は中身が土なので、普通に突き刺せば良いだろう。此方もシカ村に任せよう。
「兎に角、先ずは休んでくれ給え。村の女達が心を込めて、暖かいご馳走を用意している。タツヤの嗜好について、真剣に相談していたから、期待して貰って良いよ。実は、飯の準備係について、激しい争奪戦があったんだw」
飯を作ってくれた可愛い娘さんに給仕されながら昼飯を食べ、早速作業に入った。勿論、優しく礼を言うのは忘れない。女性の恨みは怖い。
自重崩壊だけを想定して、薄く作っているから、作業は捗る。第1段階分はあっさり終わったな。魔力が増えたのも大きいか。明日は、早めに小物作りを進めよう。明後日は、基地作りだ。
実は、基地作りには、大イカ村も積極的だ。大戦後の活用も視野にシカ村と色々話合っているようだ。屋根用の木材の準備に結構労を割いて貰っている。今日も、20人もの男手を派遣してくれた。
「位置は、ここで良いね。20人用を一気に3つ作るけど、材木の準備は大丈夫?
ああ、あそこか。長さと本数は十分そうだね。では、今日1日重労働だけど、宜しくお願いします」
高さ2m、幅2.5m、長さ10mの寝床を3つ作る予定だ。ハッキリ言って狭苦しい。前世の経験だが、山小屋で一畳当たり2名の密度で泊まった事はあるが……気分的にはそれより更にキツイと思う。ここで暮らす事はおすすめしない。
ただまあ、この世界で遠征中の戦士の扱いとしては普通だ。他人の家に家人を押し退けて泊まる場合もある。雨風が凌げるだけ感謝せねばならぬ。ワシもそんな生活を繰り返している。
手順としては、
・土操作で全体的に1m盛り上げる。
・壁位置に土を寄せて必要な高さにする。
・この時、寝床部分は50cmほど低くなる。
・土壁で厚さ10cm程の壁にする。
・その時、排水溝を作る事に注意する。
・左右で高さに差をつける事にも注意
・その後、壁の外側に屋根造り用の足場を造る。
・30cm間隔程度で屋根を渡す木を乗せる。
・50cm四方サイズで作った屋根を乗せる。
・これは土壁で極薄く造ったものだ
・端には接着用の粘土が貼り付けてある。
・次々接着していき屋根にする。
・その際、下に引いた木をコロとしても使う。
屋根を極薄く作るのは、運ぶ時の重量と魔物が住み着いた場合を考慮してのものだ。住み着かれた場合は、屋根を破壊して倒す事を考えている。
しかし、相当魔力を使うな〜。2時間程の魔力回復の為の眠りを繰り返して、魔力を確保している。また、屋根を乗せる作業もかなり大変そうだ。
1日目は、一つ目の完成と、二つ目三つ目用の盛り土で終わった。見張りを立てて、完成した基地の寝心地の確認だ。
そしてなんとか、三日目の朝まで掛かって完成に漕ぎ付けた。
うーむ、欲張り過ぎたんかも知れないな。
チョット書いていて、作者自身が正気を疑いましたw 門の内側に掘りがあったら不便で仕方ないw ただ、数ヶ月後に必ず、大群に攻められる前提なので、狂気の沙汰レベルの対応もする事にします。
また、石斧だけで、城門に使える大きく分厚い一枚板は、作るのが難しいという前提で書いています。径2m以上の大木を根気に焼いたり削ったり……鬱になりそうw ただ、作者が知らないだけで、簡単な方法があるかも知れません。その場合は、シカ村の人は気づかなかった事にします。




