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シカ村の防壁

 さて、盛り土を固めて防壁が修復出来るか試してみよう。


 結構圧縮されるんだな。土が三分の一か四分の一にまで減容される。縦方向に圧縮するか、横方向に圧縮するか、事前に考えた方が良さそうじゃ。


 うーむ。一回に圧縮出来る範囲にも限界があるようじゃ。


 ワシにしか見えていないが、開口部の防壁の高さを70cmばかり回復出来たようじゃ。


「盛り土が陥没したようじゃが、土壁の効果なのかい?」


「そうだ。土に埋もれて見えんが、防壁を少しだけ修復出来た。もう少しやってみたいが、一度陥没した場所に土を詰めてもらえると助かる」


「解った。わたしが土操作で対応しよう」


 こうやって、リュウセツさんと調整しながら、魔力切れまで作業を進めた。防壁の高さは2m強まで回復している。


 うーむ。いきなり厚みを持たせようとするより、高さを稼いだ方が良いかも知れん。


「魔力回復の休憩後、寝る前にもう一度試してみます。その為、低くなった盛り土をまた積み上げて貰えませんか?」


「解った。対応しよう。

 おーい。人手をかき集めろ!夜までにもう一踏ん張りじゃ‼︎」


 近くにいた村長が動員をかけた。


「あのー、女性も混じっているようですが?」


「そうだが? 体力のある者だけだから、心配は要らない。体力があるなら、男女拘る必要はない。女なりに、役に立ちたいと、志願する者が結構おった」


 突っ込むのはよそう。正論と言えば正論だし……



 魔闘術も直感も切って、魔力回復に専念していたら、夕方にリュウエンさんが帰って来た。


「やあ、タツヤ。防壁の修復に来てくれたんだね。本当にありがとう。タツヤの申し出に『我らも更に頑張らねば‼︎』と戦士達も誓いを新たにしているよ。

 出来るだけ良い飯と寝床を用意したから、自分の家と思って寛いでくれ給え。舞踊の練習も、村一の名手が控えているから何時でも言って欲しい」


「気を使わせて悪いな。それより、戦況はどうだ? 戦死者も出ているそうじゃないか」


「タツヤに気に掛けて貰うと遺族も少し慰めになるかも知れない。後で、一緒に花を手向けてくれると嬉しい。

 皆が、立派に闘ってくれたお陰で、戦況は良い。すでに4つ殲滅出来た。火弾の威力も上がっているし、段々暖かくなって戦士達の動きも良くなっている。これから、ドンドン加速させる予定だよ。

 勇者を3人も喪ったのは、慙愧に堪えないけど、決して無駄にはしない。必ず、大戦に大勝利するさ」


「「「おおおおお‼︎」」」


 打ち合わせた様子も無いのに、雄叫びがおきた。

 ビックリだ! 尋常じゃない‼︎


 それから、リュウエンさんに案内されて、墓参りをした。尊い犠牲を想い、自然と決意が強くなる。『必ず、妖魔に怯えない世を作ってみせる』


 そして、寝る前に今度は薄い壁を作る方式で、開口部一ヶ所について一応の修理を終えた。


 とは言っても……表裏それぞれ20cmしか無い壁の中に土を詰め込んだだけの構造……元の構造に比べると、脆弱過ぎるか……


 時間も足りない。明日は、3月31日だ。4月6日の夕刻には山犬村に居たい。飛行でも1日では無理だろうから、作業出来るのは後5日か、全然だなぁ。


 色々、調整して落とし所を見つけねばならん。うーむ、電話が普及していた前世なら、なんとかなるんだが……欲張っても仕方が無いw


 色々悩んでいたら、村長やリュウセツさんらシカ村の幹部が揃ってやって来た。


「本当にありがとう。何と感謝して良いか判らん位だ。そして、欲張るようで本当に申し訳ないが、この要領で作業を進めて貰えないだろうか。

 最大の崩壊部分を優先して欲しい。

 やって頂けるなら、タツヤ殿が居る間は、作戦を中断して、全てを防壁の修復に投入するつもりじゃ」


 一人で悩んでいるのは馬鹿らしいな。


「了解しました。ただ、強度とか時間とか色々悩んでいます」


「今日は、遅い。タツヤ殿はお疲れだろう。一度、私等で検討してみるので、明日にでも相談させて欲しい。

 何と言ってもタツヤ殿の魔力回復が一番重要だ。私らで分担出来る事は、小さい事でも言って欲しい。何でも対応する」



    ◇ 



 朝、起きて現場に向かうと、既に3m位まで土が積みあがっている! 解体された竪穴式住居も更に増えている‼︎


 徹夜で作業をしたの⁉︎

 驚いていると、村長達が近づいて来た。


「石工や戦士、古老と色々議論したが、あの厚みで強度は十分だ。そもそも、小鬼や大鬼だと、壁を壊そうとはしないだろう。門として一ヶ所は開口部が必要だ。そこを狙って殺到するはずじゃ。

 だから、このまま作業を進めて欲しい」


 言われてみればだが……だったら何故、元々の防壁はこんなに頑丈なんだ???



「あ! ああ‼︎ 元々は、妖魔用じゃない! 対人というか、フブキ様が軍勢を率いて攻めて来る事を想定しているのか! 最盛期のフブキ様は、妖魔王の何倍も強かった。だから、此れ程の強度で作ったんだ」


「何か解ったのですか?」


 しまった(T_T)


 余計な失言のせいで、フブキ文書に記載がある、一足先にクニから離反した、ロン将軍について説明する羽目にあった。


「ロン様は、わたしらのご先祖様だ。そんな事情があったのですか……語り継ぐ為にも大戦に大勝利しましょう。

 タツヤさん、土壁の術を宜しくお願いします」



 そして、シカ村の皆の必死の努力もあり、修復は順調に進み、4月5日の夕刻には一応満足のいく状態になり、6日を移動日に充てる事にした。


 なお、事前に戦士を派遣し、途中に休息ポイントを設定する事で、山犬村には半日程度で到着した。直線なら、大体30km程で、村沿いに行くよりかなりの短縮になる。



次は、西方打通作戦の開始です。

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